最新機器
「おい、君。頼んでおいた書類できたかね? 何? まだだと? 何でこんな簡単な書類が直ぐにできないんだ? 何? 新しい機械に慣れなくって? 何を言ってるんだ。今時これぐらいの機械を使えなくてどうする? とにかく一枚出したまえ。そうだ。できる範囲でいいから。うむ。これか、どれどれ。ここの文章を直して、ここのグラフを別のものに差し替えたまえ。それができない? やり方が分からない? まったく。せっかく最新の機器に買い替えたのに宝の持ち腐れだな。どれ、見せてみなさい。私が教えてあげよう。書類のデータを開いて、実際やってみたまえ。そこだ。そこの文章を直して欲しいんだがな。そこを選択して、そのボタンを押してみたまえ。どうだ、簡単だろう? 何? 直らない? あれ、勘違いしたかな? ああ、そうか。その左隣のボタンだったな。押したまえ。え、違った? おかしいな。もう一つ左隣のボタンだったかな? 押してみなさい。え、ダメ? じゃあ、その左隣のボタンだ。何、また違う? じゃあ、その左隣じゃないのか? えっ、違う? では、その左隣はどうだ? 違うか? よし、多分その左隣のボタンだ。これも違うのか? じゃあ、その左隣だったかな? 違う? その左隣も? その左隣はどうだ? えっ? もう左には押すボタンがないだと? ……最初のボタンの右隣を押していいかだと? ……無駄だと思うけどな。俺の記憶では、確か左の方のボタンだったような気がするんだがな。……え、上手くいった? ……あ、あそう。じゃあ、次はグラフね。それも教えてあげよう。そこのボタンを押してみたまえ。何、何で一番右端のボタンから押させるのかって? これは確実に違うんじゃないかって? いいんだよ。俺の言う通りやれば。何? グラフが直らない。よしよし。思った通りだ。さあ、その左隣のボタンを――」