君の言い訳
春の日差しに照らた何本もの満開の桜が咲く川沿いに、雅は優馬と花見にやって来た。日陰のある桜の下にゴザを引いて、2人並んで座った。
「いい天気だね」
優馬は笑顔で雅を見た。「うん」と頷いた。優馬と目が合っていることが恥ずかしいのと寂しさが混ざってしまう。今日は優馬と最後のデートだ。高校2年に進級する タイミングで優馬が転校することになった。明日、優馬は引っ越してしまう。雅の前からいなくなってしまう。雅は優馬と別れるつもりはなかったけど、3週間前のデートで優馬から”別れたい”と言われてしまった。
「弁当、食べる?」
優馬が紙袋から2段の重箱を出してきた。
「本当に作ってきてくれたんだ。ありがとう。」
なのに今もデートをしている。何も変わらない日常が過ぎていく。違和感もあるし、本当に私たちは別れてしまうのかと思ってしまうほど、実感がない。こんなに好きなのに、どうして別れるんだろう。
「唐揚げ、美味しい」
「雅は唐揚げ過ぎだよね」
「えっ、そうかな...」
「そうだよ」
優馬は笑顔だ。重箱には、雅の好きなものばかり詰め込まれていた。優馬が握ったカリカリ梅を混ざったおにぎりが一番好きだ。優馬が握ったおにぎりが食べれなくなると思ったら、寂しくなっていく。
「ねえ、どこに引っ越すの?」
「秘密」
「何で答えてくれないの?」
優馬が何かを隠していることは分かっていた。優馬の言葉を聞きたかった。でも、たぶん誤魔化される気がする。
優馬と仲が良い碧人から、視力が低下する病気になったと聞かされた。失明するかは分からないが、転校先は盲学校らしい。何でそんな嘘とついてまで、隠すのだろう。優馬なりのプライドだろうと碧人は言っていた。でも、優馬の言葉が言い訳にしか聞こえたこない。
桜を見上げて、雅は桜を見る。けど、優馬は見上げることはなった。日差しが目に映るのが辛いのだろう。
「もう帰ろうか」
「うん」
最後のデート。もう、優馬の言い訳は、甘くて冷たい。




