神様の子守り
神は男女関係なく子どもを産む。
そして、成長スピードが早いらしい。
「おおっ…、本当に生まれたんですね!おめでとうございます!」
俺は上司の赤ん坊を抱かせてもらいながら、そう言った。
「まさか、君が居座っている間に子を産むことになるとはな」
「俺、輪廻転生しないでここでグダグダしててよかったです!神様の誕生を見れるとは…!」
「よくないから。早くどこの世界に行くか決めて、次の人生を送りなさいよ」
「じゃあ、この子の子守りさせてください」
「いや、そうじゃなくて」
俺は輪廻転生を面倒くさがって、天界でお世話になっている元人間だ。
勝手に留まって、勝手に神様の書類整理などを手伝い、勝手に神を上司にしている。
「あっ、でも、代わりに書類仕事をした方がいいですかね?」
「それは正直助か……、いや、ダメだって」
「あ〜、じゃあ整理してこちらに運びますね」
「………そうしてくれ」
神様ももはや俺が仕事の手伝いをした方がスムーズで、最近では前より真剣に輪廻転生しろと言ってこなくなった。
俺は席を外して、職場に戻って、いつものように書類を持って、また神様のところに戻った。
すると──。
「えっっっっ!?もう立ち上がってる…!」
さっき生まれた赤ん坊神様は、立ってよたよたと歩いていた。
「当たり前だ。人間じゃあるまいし、すぐに成長するよ」
「馬みたいにすぐ立てないとまずいんですか…?」
「そうじゃない。立ってしまうんだよ」
そうこう言っている間に、上司を指差してキャハハと笑った。
「ははうえ!」
「え、天才じゃん」
「みんなこんなもんだよ」
「…もしかして、神の子守りって難しいですか?」
「いらないね。そんなのなくとも、すぐ成人する」
上司の言葉に、慌てて幼児神様を抱っこした。
すでに、生まれたてよりずっしり重い。
「この可愛さが一瞬なのか」
「お〜ろ〜せ〜!ぼくはもうこどもじゃないもん!」
「喋るのも早え…」
子ども神様を下ろすと、もう小学生くらいの大きさになっていた。
「子守りはいらないが、せっかくなってくれるなら、追いかけっこでもしておいで」
こちらもすっかり元気になって、書類を見ている上司に言われて、俺は頷いた。
「どうかな、向こうまで競争しようよ」
「まけないからやってあげる!」
「ありがとう」
「はい、位置についてよーい、どん!」
上司の声に、俺と子ども神様は走り出した。
神様相手でも手加減はよくないよなと全力で走る。
向こうといっても、天界は広い。
どこまでも続いていて、どこまで走ろうかなと、子ども神様な様子を見るべく後ろを見て、ギョッとした。
「成長早いって!」
もう高校生ほどの身長になっていた。
下手したら背は抜かされたかもしれない。
これはますます手が抜けないと思い、走り続けたけれど、すぐに後ろから抱きつかれて止まった。
見上げると、上司そっくりの成人と言える神様がいた。
「はい、つかまえた」
そのままなぜかヒョイッと横抱きにされて、上司のところに戻っていく。
「母上、つかまえてきました」
「ああ、ご苦労様」
「……俺が子守りされたみたいになったんですが」
「神が人間の子守りをして何が悪い」
………たしかに?
「神様って、こんなに早く大人になるんですね」
「そうだよ。さあ、私の仕事を手伝ってもらおうかな」
「では、手始めにこの人間を輪廻転生に戻してきます」
「え」
「ああ、よろしく」
「えっ!嫌です!!!」
俺は神の腕の中でバタバタ暴れると、美しい顔が2つこちらを睨んだ。
「「いい加減、輪廻転生しなさい!」」
親子に揃って怒られるのは、迫力があったのだった…。
了
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