8 護衛隊長
しかし‥ 私も悩む。
(殿方と親密ってどうやるんだ)
女子ならいくらでも仲良くなれるのに。
仲が良い同年代の異性っていたかな?
(兄上とその友人くらいかぁ)
子供の頃はお兄ちゃんっ子でよくマネをして怒られた。
私が付きまとうから、しぶしぶ剣術を教えてくれたんだよな。
剣が上達したら喜んで訓練してくれるようになったっけ。
(そうか、これだ)
きっと男の子同志は一緒に体を動かして仲を深めるのだ。
ここに来てからだってずいぶん他の隊員にやっかまれたが、多少拳を交えたら悪口を言う奴は誰もいなくなっていた。
これは公爵家の子息でも使えるはず。
私はさっそく提案してみた。
「いつも机に張り付いていてはお体にさわります。剣の稽古をご一緒しませんか?」
公爵邸の広い中庭で私はストレッチだ。
側で不安そうにしているのは護衛隊長のハロルド。
「ブライト、坊ちゃんはかなりの手練れだ。君がケガをする」
隊長は心配してくれる。
彼は私の正体を知っている数少ない一人。
女性に優しい紳士なのだ。
訓練の時間はいつも私だけ重い訓練が課されない。
だからここで打ち合い稽古をするのは初めてだった。
「危なくなったら退きますから」
私は笑う。自分にだってそれくらいの実力はあるはずだ。
身体は十分ほぐれた。私は木剣を構える。
「いくぞ」
ローアン様も準備万端。
私は相手に向かって飛びかかった。
カン!
ヒュルヒュルと回転しながら、若君の剣が飛んで行く。
「え?」「は」
たった一回打ちあっただけで?
私と隊長の目が丸くなった。
「うわ、ブライトは強いな。さすが我が家の護衛に選ばれるだけある」
いやローアン様弱すぎない?
「あーブライト、身体強化の魔法でも使ったか?」
「まさか。僕が使えるのは攻撃魔法くらいですよ」
身体強化は元々が脆弱な魔導士でないと覚えづらい。
つまり頑健な私や護衛騎士で使える人間は限られている。
あと魔法使いながら戦うのは面倒くさいから苦手だ。
転がった木剣をハロルド隊長が拾って、なぜか構えた。
「すまんブライト、俺とも手合わせしてくれないか?」
鋭い眼光が私を射抜く。
(別に構わないけど何でだろう)
私も構えを取った。
向かい合った隊長はガタイも良く苦み走った大人の男。
気も利く人で、私が他の隊員に絡まれているとすぐ助けてくれる。
(やだ、ローアン様より好みかもしれない)
恋仲になるならこっちでも‥ などと妄想していたら、
勝ってしまった。
私の剣は彼の首筋にピタリと付いている。
いや、動きがなんかゆっくりだったからさ。手加減してくれているのかもしれない。
「さすがセンタリオン家の‥兄君の強さは存じていたが君までとは‥」
隊長は呆然としている。
結局その後のローアン様は素振りをするだけにとどまった。
これでは仲が深まったとは言えない。
主の前から下がった後、隊長に謝られてしまった。
「今まで女性だと思い今まで手加減していた。すまない」
それからは訓練メニューも他の隊員と同じ分量に。
「ブライトォ! 気をぬくなぁ!」
ミスするとすぐに怒鳴るし殴られる。よけるけど。
「逃げるなぁ!」
「よけますよ隊長遅いんですから」
拳をひょいっとくぐりぬけて思った。
私を女子扱いしてくれる貴重な人が1人減ったなって。
「ブライトってすげえんだな」
護衛隊のみんなと仲は深まったけど。
ブライアなど運動神経良い人間は魔法を覚えるより鍛えた方が早い設定にしています。




