30 結婚式
『王都ではそろそろ第二王子の立太子が決定しそうです。そちらの様子はどうでしょうか? 私は会えなくて寂しいです』
領地にいるダッシュへ、私は手紙を書く。
返事がもらえるか不安だったけれど、ちゃんと定期便が届いた。
『今は君の兄君に鍛えられています。兄君が自分宛ての手紙も欲しいそうなので次はお願いします。来ないとまた訓練内容を増やされるので、できるだけ早くお願いします』
恋人からもらう手紙ってどうしてこんなにうれしいのだろう。
『領地ではもう雪は解けたでしょうか? 私は公爵家の護衛だけでなく侍女の役割も求められそうなので仕事が増えました』
デイジーが嫁いでくるまで色々できるようになりたいと続ける。
はあ、月に一度しかやり取りができないのは残念。
『兄君にも近況を知らせてあげて下さい。できたら俺への文より長く書いていただけますでしょうか。このままでは手紙が手元に残りません』
兄へ書く手紙は面倒くさい。
『愛するブライアへ お兄様はいつもお前を思っているのに、何でこんなどこの馬の骨か分からない奴にばかり手紙を送るんだい? お前には私の知り合いからきちんとした相手を選ぶので何も心配はいらないと言うのに』
文面がウザイ。
返信しないとダッシュが被害を受けそうだから、とりあえず最近のトレーニングの内容と王都の警備における問題点を書き綴ったけどさ。
「おめでとう」
「幸せに」
今日は結婚式だ。
主役は私じゃなくてローアン様とデイジー。
令息の婚約が発表されてすぐ、公爵家は約束を守ってくれた。我が家の借金はきれいになくなったのだ。ひゃっほう!
デイジーが学園を卒業してすぐ、2人の式は執り行われた。
準備期間はしっかりあったから公爵家にふさわしく豪華絢爛に。
花嫁衣裳のデイジーはかわいらしさがとてつもない。
伯爵家では身分的にちょっとつり合わないとか、おしゃべりスズメに文句を言わせないよう私たちは噂を振りまく。ローアン様の心の傷を癒した美談を。
まあ、花婿のデレデレ具合を見ればみんな納得するだろうけどね。
おめでたいその席に私は‥なぜか兄の礼服を着て出席していた。
「だって面白いのだもの」
公爵夫人はまだこれを楽しみたいらしい。
まあ普通の女性騎士より給金を上げてくれたからうなずいちゃった。
我が家の借金が消えたとしても、お金はあった方がいいからね。
髪は以前よりのびているけれど、まだ令嬢として相応しいほどでもない。
どう見ても貴族の令息だろう。
「ああ、ブライト様、今日も素敵ですわ」
「ブライトは来なくても良かったんじゃないのか」
花嫁にうっとりされて花婿ににらまれるのはちょっとつらいんですけど。
未婚の令嬢からの視線も熱すぎて痛いよ。
相手が決まっていなかったら男装の継続は断っていたかも。
まあ私とダッシュの仲はまだ手紙のやりとりだけだが。結婚なんてまだまだ先の話である。
「それでは新婦によるブーケトスです」
司会にうながされてデイジーは花束を投げる。
着飾ったご令嬢方が落ちるのを待ち構えているが、私は身体能力をフルに生かして空中でブーケをキャッチした。
キャァって黄色い悲鳴が上がったのはなぜだ。
式の後、ローアン様にぼやかれてしまった。
「ブライト、妻を誘惑しないで欲しい。母上もなんでお前をデイジーの護衛なんかにするんだ」
同性だからだよ。
花嫁の出身校が女子校なの、知らされていないのか?
公子様にあまり嫉妬されたくない。
「僕、好きな人別にいますから」
「そうなのか、じゃあ紹介しろよ。どんな人なんだ? 私が知っている女性か?」
ああ‥時々この設定が馬鹿らしくなる。
もういいや。契約破っちゃえ。
「ダッシュです。助命を願ったのは惚れてしまったので」
ローアン様は目を丸くした。
「え、まさか‥お前、心は女だったのか!」
そっちじゃないわー!
隣のオスカーが、なぐさめるように肩をポンとしてくれた。
これにてお終いです。お付き合いいただきありがとうございました(❁´◡`❁)
おまけは投稿する予定です。
2章も書いてはいるのですが、とっちらかりすぎて出せるかどうかは未定です。
興味を持っていただけたら、4月くらいにまたチェックしてくださいませ♪




