28 全力で口説かせていただきます
尋問はとどこおりなく終わった。
マキシム・ホークの愛人の家までペラペラ話すから、裏取りに時間がかかったくらいだ。
「ねえ、この後はどうしたいの?」
普通なら殺人犯として警察に突き出すだけだ。ここまで情報をもらせば元の主も助けないだろう。
「別に。捕まるのは運の尽きですから。大人しく刑に服しますよ」
「それだと10年くらい服役しちゃうじゃん。軍なら家を通して口利きできるけど。国に貢献するとかで助命できるよ? 」
私が助命する気マンマンで真剣に向かい合っているのに、ダッシュは気だるげだ。
「そこまでの世話は頼んでいません。君にだって理由もない」
理由はあるのだが。
「え、真っ当な職業についてくれたらプロポーズできるじゃん」
「は?」
私は物分かりの悪い男に1つ1つ説明する。
「あのね私子爵家の令嬢なのよ、これでも。親は私の選んだ人なら認めてくれるだろうけど、さすがに正業についてくれていないとね」
貴族籍を外れて庶民になるのは想定していても、暗殺者の妻はさすがに反対されるはず。
「できれば騎士爵取ってくれたら助かる。あ、直接我が家に来てくれても大丈夫だよ。うち国境警備の任を受け持っているから」
ダッシュはあきれた眼差しを向けてきた。
「まさかですが、君は俺に気があるのですか?」
「うん! 貴方から見て私はかわいいんでしょう? 前から言ってるじゃん、つき合ってって!」
うきゃー改めて言葉にするのは恥ずかしいわ。
顔が熱い。
「たったそれだけで? 君なら引く手あまたでしょうに‥」
いえ、いないんですよ誰も。
「そうねー、他は魔法使っている時に目が光るのもカッコいいし、体も好みです」
「体?」
「うん、筋肉の鍛え方に無駄がなくて骨格もすばらしい。骨格って成長後は鍛えようがないから成長期のケアが必須なんだよね~理にかなった体格は見ていて飽きないわ」
ダッシュは私の求愛行動がイマイチ理解できないようだ。
「それにそこまで良い体しているのに、身体強化の魔法まで使える。うちの家族はみんな細かい魔法制御苦手でさ、私もできないし」
「昔、魔法使いに育てられました」
「なーるほど」
魅力的な部分を語っても、本気と受け取ってくれない。
自分に自信がないのだろうか?
「それでも俺は君の仲間を殺した。君にひどいことをしようとした」
「仕事だったら私だって殺す」
ダッシュは目をふせたままだ。
この顔は切り付けたことじゃないな?
「夜会では君を傷つけた」
あれか、気を失わせて手ごめにしようとしたことか。
「あの時は‥まあ頭は痛かったけど、薬も安全なのを使ってくれたし、他の男は追いやってくれたし。大体未遂にしてくれたじゃん」
「それは男だと思っていたからです」
「女だったらことにおよんだ?」
ダッシュの性格はそれなりにつかんだつもりだ。こいつは無駄に人を傷つけたりしない。
必要ならばいくらでも殺すだろうが。
彼はしばらく黙っていた。
「同じようにした、かもしれませんね。君に‥嫌われたくない」
「つまり私のことが好きってことでしょ」
もーいいじゃんそれで。いいかげん落ちろよ。
「名前はブライアでしたか」
ダッシュがこちらを見据えた。
「ブライア、君の家は俺を雇えますか?」
交渉成立。
私はにんまりしてこれからの手はずを考えた。
ブライアもダッシュも異性の好みが多少特殊ですが本人たちは普通だと思っています。




