24 噂
ブライアが飲まされたほれ薬は、以前氷の騎士の作品で出した物の使いまわしです。効果は気休め程度ですね。良ければそちらも読んで下され♪
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オールデン家に戻る途中で私が薬を盛られた話をすると、すぐ公子は医者を呼んでくれた。
「そこまでの効果はないようですけど」
「念のためだ。後遺症がないかどうかも確認したい」
夜なのに医者はすぐ来てくれた。公爵家の権力すごい。
人の好さそうなおじいちゃんは薬を飲んでからどれくらい経過したか、異性と目を合わせたかを聞いてくる。
「えっと目が合った時はドキドキしましたけれど、今は何ともないです」
異性が男性であることは濁して伝えた。まあ医者ならもう分かっているだろうけれど。
酔っぱらったような感覚はもう消えたことも説明する。
「ほほう、それなら合法薬かそれに近い物でしょうな。具合が悪くなければ結構。念のため今日明日は大事を取りなされ」
(そっかほれ薬なんて怪しい薬、違法の危険性が高い場合もあるのか)
質の悪い麻薬を使われなくて良かったー
私がデイジーの護衛に戻った後、ローアン様はホーク家へ正式に抗議をした。
「私の連れがそちらの屋敷で襲撃を受けた。警備体制はどうなっている!」
ただ訴えるのは頭を強打されたことのみ。
令息のパートナーがかどわかされたなんて噂が立ったら、私にも傷がつく。
「ふざけて男を連れて行ったとでも言えばいいのだろうが‥それで君に女装癖でもあると誤解されたくないしな」
私としても都合がよい。うん、情に熱い上司で良かったと思おう。
しかしホーク家からの返答は、招待客以外をまぎれこませてしまったことのわびのみ。
見舞金以上の責任は取らなかった。
「くそ、こっちが強く出ないことを逆手に取りやがって」
見舞金がそっくりもらえたけれど、私の胸は晴れない。
ま、第二王子にも報告をしていたから、もう表立って手は出せないだろう。
夜会からしばらくは平穏だった。私はデイジーの護衛を続けている。
「オールデン家の令息は噂の的ですわね」
デイジーの母君が教えてくれる。
「謎の恋人現る、ですって」
別に名前は隠していないのだけど‥そっか、私自身が社交界をサボっているからか。
貧乏子爵家は参加するだけで懐が痛むのだよ。
「しばらくは誤解させておくよう、ローアン様からの命令です」
好奇の噂だけなら良い。しかし悪意ある視線や笑い声もまだ多いと手紙で知らされていた。
悪意の正体はすぐ判明する。他人に聞こえるように悪口を言う愚か者はどこにもいるから。
「心無い噂を聞いたのだが」
晩餐時、フローレス伯爵から相談を受けた。私は護衛なので本来は同席しないのだが、デイジーに頼みこまれて夕食は一緒に食べている。
「ローアン殿は男に女装させ恋人にしているとか。いや、私たちは信じていないよ。彼の娘に対する気づかいは本物だ」
(なるほど)
私は納得した。
あの時、後から思えばちょっとだけ腑に落ちなかった。
あの男が私をすぐ解放したことを。
何もしなくても、ローアン様に見せつけたり誰かを証人に仕立てたりするはずではないか?
そうしなかったのはこの噂さえあれば簡単にオールデン家へ傷をつけられるからだろう。
この国で同性愛が禁止されているわけではないが、認められてもいない。
宰相の権威を失墜させるには十分な理由だ。
私はすぐオールデン家に連絡を取る。
公爵家からは帰還命令が出た。
「私の女性嫌いが利用されてしまい、父上には顔向けできない‥」
公爵邸で沈みこむローアン様にかける言葉もない。
マキシム・ホークはもう第一王子派への旗幟を鮮明にしている。
「まだあきらめる必要はありません。ホーク卿がローアン様の恋人を狙っていたため、替え玉を用意していたと公表しましょう。ホーク家の護衛が私に暴力をふるったことも」
どう考えても、あれは向こうの瑕疵だ。
「それでも君が襲われた話を広めれば、傷つくのは君だ。性別関係なしにね。友人を犠牲にしたくない」
そこまでの犠牲じゃ‥いや貴族令嬢としてはアウトだ。
周りのみんなにも暴露しているから、目を泳がせているわ。
オスカーは私をなだめた。
「まあまあ、こちらも敵の弱みを握りましょうよ」
「そうだな、あのヤバい護衛が側から外されている内に」
「うん‥」
男は私への襲撃の後、姿を隠していた。
最近ずっとマキシム・ホークの側にいない。
(暴行罪で捕えられないようにだろう)
オールデン家が訴えても、そんな護衛など初めからいないと白を切られればそれまでだ。
(これからどうすればいい?)




