23 ここまでする計画ではなかったようで
(油断した)
固い床の上で意識は戻るが、何も見えない。
目隠しをされている。両腕も拘束されていて動かせない。
後頭部の痛みはまだ消えていないしクラクラする。
口には何かふくまされたようで、舌に苦みがあった。
靴音からすると、部屋には自分の他に何人かいるようだ。
「ご所望の女です。どういたしますか」
「ここまでしろとは言っていない! 私の命令はあいつの女を篭絡することだけだ!」
男たちはもめていた。
「そうおっしゃられましても、なかなか手ごわかったので」
「縄を切れ。これでは我が家がかどわかしたのが丸分かりだ」
グワングワンする頭だが、状況は飲みこめた。
私が簡単になびかなかったから、手下が強硬手段に出たのだろう。
「これ以外で連れてくるのは無理ですよ。とにかくそれっぽい状況にすればいいだけでしょう?」
あれ? この声だけ親近感がある。
「はあ‥分かった、好きにしろ。証拠は残すなよ。あいつも女嫌いのまま大人しく廃嫡されれば良かったのにな」
扉が開いて閉まる。1人は出て行ったようだ。
「好きにしろって言われてもなあ。どうする? 僕こんな筋肉女は嫌なんだけど」
この声はさっきの優男だろう。奴の本音にイラっとする。
「じゃあ俺が。そちらはもう仕事上がりで構いませんよ」
「お、話が分かるね。じゃあ後始末よろしく」
もう1人も退出し、残った1人が接近する。
「あなたに恨みはありませんが、仕方ありません」
(仕方あるわ! やばいやばいやばい! 女子扱いされて浮かれすぎた)
血の気がドンドン引く。
そして私の体は担ぎ上げられ多分寝台に押さえつけられた。
「離しなさい!」
結構本気でじたばたしたのに押さえつける腕と足はびくともしない。態勢が悪すぎる。
「残念。双子の姉か妹でもいるのかと期待したのですが‥」
聞き覚えのある声。
片方だけ目隠しが外れた。目の前にいたのは以前対決した男。
私の心臓がどきんとはねた。状況がマズいのは分かり切っているのに、顔に熱が集まる。
「名前を聞いてもいい?」
うっかり問いかける私に、男は苦笑いをした。
「へえ、ほれ薬って本当に効くんだ」
(飲まされたのはそれか)
熱をおびた頭だが、冷静な部分も残っている。
「なんで僕だって分かったの?」
さっきの言葉から推測するに、私が‘以前忍びこんだ男なのはバレているのだろう。
「顔はそこまで変わってないでしょう。骨格だって同じじゃないですか」
笑いながら男は手首の拘束を外す。
私は彼をふりほどこうとしたが、痛みと酔いで体のコントロールが上手くできない。
「今の姿はとても魅力的ですが、脱がせたあげく興ざめするのもお断りなので」
目の前に来る彼の顔と、おでこへのサッとした感触。
(はう!)
狼狽して硬直する私に楽しそうな声が。
「これであきらめるとしましょう」
男はやっと寝台から下りた。
「ああ、抵抗されたので逃げられてしまいました」
わざとらしい。
怪しい笑みを浮かべた奴は、扉の鍵を外し出て行く。
「もうすぐ王子様が到着しますから、ご安心を」
1人になった私は今の状況を整理する。
(キ、キスされた!)
おでこだけど。それでも心臓はバックバクする。
『今の姿はとても魅力的ですが』
言葉と映像が脳内で再生され続けた。
(ダメ、今重要なのはそれじゃない。この気持ちは‥ほれ薬のせいなんだから)
フラフラの体をなんとか立ち上がらせ、扉に向かう。
私がドアノブを引くと同時に、ローアン様が部屋に飛びこんできた。
「ブライト! やっと見つけた」
心配をかけたようで、汗まみれだ。
「油断して頭に一撃くらってしまいました」
私の体をローアン様が支える。
「それ以外は?」
「ほれ薬も飲まされました。どうやら、私を手籠めにしたところをローアン様に見せつける予定だったようですね」
私は敵の計画を報告する。
「なんてひどいことを‥ブライトが男だからあきらめたのか。いいや、それだって傷つくよな」
キラキラ令息は優しく抱きしめてくれたけど、違うんだよ。
私絶体絶命の危機だったんだから!
あいつと顔を合わせていて、男だと思われていて良かった。
力が抜ける。
コメディーなので大事にはしません。‥書けないだけかもしれませんが。




