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女性嫌いの令息を護衛している男装女子ですが‥なんか思ってたのと違う?  作者: ノーネアユミ


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20/27

20 懸念

 私の化粧効果はこの程度だが、公爵令息を取り巻く状況には大きな変化があった。

 

「とうとうオールデン家の若君にお相手ができたそうですね」


 王宮に出仕していると侍従に話しかけられた。 


「劇場にかわいらしいお嬢さんを連れて来たとか。悲劇を乗りこえられたようで我々もホッと致しました」


 もう噂が出回っているらしい。あと多分この人、ローアン様の女性恐怖症知ってるな。

 



「これでオールデン家も安泰ですなあ」

「立太子はやはり第二王子殿下になられるようだ」


 どうやらローアン様の女性嫌いは公然の秘密だったようで、噂がチラホラ聞こえてくる。




「おやオールデン子息」


 正面から堂々とあいさつをしてきたのは、マキシム・ホーク卿。

 私はホーク卿を遠目で見た瞬間、柱の陰に隠れていた。例の護衛に見つかったらヤバいのだよ。もう顔バレしているのだから。



「新しい恋人ができたと聞きましたよ。私にも紹介していただきたい」

「そうしたいところだが、まだ色よい返事がもらえていなくてね」


 貴公子たちがにこやかに会話する。

 笑顔の裏で空気をピリつかせながら。


「それなら大切にしないといけませんな。また恋人に裏切られないよう」


 マキシムは心配を装うが、言葉には毒がふくまれている。


「重々承知の上ですよ」

「そもそも女など信じないことですなぁ。あれはすぐに嘘をつく」


 彼が立ち去った後、ローアン様はこぶしを握りしめていた。




「どの口がそれを言う!」


 執務室に戻った令息は珍しく言葉を荒げる。

 カツカツと歩き回り髪をかき上げた。何か思い悩んでいるようだ。


「何か具体的な不安でも?」

「私のせいで彼女が危険な目に合うかもしれない」


 ああ、と私もうなずく。


 彼の懸念はもっともだ。

 マキシム・ホークは何としてもオールデン家の評判を落としたいようだし。



「デイジー嬢が標的になる危険性がある。フローレス家に警告しなくては」

「了解です」


 側仕えが1人部屋を出た。



「しばらくは婚約を先延ばしにした方がいいな。デイジー嬢とも‥会わない」


 ローアン様が心配していたのはホーク卿がデイジーに危害を加えることだ。

 それは物理的ではなく評判や心理的なことだろう。


 令息は、ハッと私を見据える。


「ブライト、デイジー嬢の護衛を頼めるか?」



「え、僕ですか?」


 私はローアン様の提案にうなずけなかった。

 デイジーの私に対する親愛は彼も知っての通りだ。誰かを派遣するとしても私が適任とは言えない。



「君ならデイジー嬢も嫌がらない。その、彼女との仲は認めないが、デイジーの身に何かあったら私は」


 ローアン様の体が震え出した。彼は両腕で震えを止めようとする。


「以前の手から考えると、デイジー嬢に他の男をあてがう可能性が高い。無理に縁談を持ちこむか、お、女たらしを送りこむか」 


 声まで震え出した。最悪の想定をしているのだろう。

 それでも公爵令息は私から目を離さなかった。



「本当に彼女を愛している男に取られるのならあきらめもつく。しかし、ただ我が家の失墜のためだけにデイジー嬢が利用されるのは耐えられないんだ。頼む、ブライト」


 愛する人のために必死になる1人の青年に向け、私は胸へ手を置いた。


「仰せのままに」





 フローレス家にはすぐ側仕えがもう1人送られる。

 帰宅後返事が届き、翌日から私は伯爵家へ向かうことになった。



「きゃあああブライトお姉様と一緒に暮らせるのね!」


 狂喜乱舞するデイジーを横目に、私は自分が男装していることをあかす。


「お嬢様の身を守るため、私が男で令嬢へ思いを寄せている風に装います」

「それはそれは‥」


 伯爵夫妻は娘の様子に汗をかいていた。



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