17 あなたから目が離せない!
戦闘中ですので目を離してはいけません。
「嫌でしたか? よく言われていたり?」
目を見開く私に奴は笑って続ける。
口用からしたらおそらく挑発されているのだろうが、今の私にはただのほめ言葉なのだよ。
ゆらめく灰褐色の髪。まんべんなく鍛えられた細マッチョな体からくり出される無駄のない動き。それなりに整っている顔。
細められた瞳に宿るペリドットの輝きは‥あー意識して見たらかっこいいじゃんかぁ!
(だからと言って敵にときめいちゃダメでしょ)
妄想を全力でふり払い後ろに飛びのく。早く逃げないと他の護衛にも見つかり囲まれてしまう。
「逃がさないと言ったでしょう」
「見逃してくれない?」
「無理ですね。無駄死にはお勧めしません」
逃げようとあがいたら殺すと、言葉の裏にひそませてくる。力量差は多分その通りなのが悔しくて顔をゆがめた。
「大人しく捕まることですよ、かわいらしいお嬢ちゃん」
トゥンク‼
心臓がはねた。一気に接近される。
くっそ近くで見るとやっぱりかっこいい。
斬撃がくり出される。私はいなすだけで精いっぱいだ。
一瞬でいい、スキが作れたら。何かないのか? 何か‥
「じゃあつき合って下さい!」
とっさに自分の口から本音が飛び出した。
相手の目が見開かれる。
あ、これ行けるかもしれない。
「かわいいって言っただろ。ドキドキしちゃうじゃないか、責任取れよな!」
「そう言われましても」
相手が一瞬ひるむ。
私は飛びのいて屋根から木へ飛び移った。
そのまま勢いを殺さず壁にジャンプ。
何も考えず裏通りに飛び下りた。
衝撃が来るかと思いや、私の体は無事の様だ。
「退くぞ」
ハロルド隊長が受け止めてくれていた。無意識に受け身は取れたらしい。
数メートル先につないである馬まで走る。
「乗れ」
私は体を引き上げられ隊長の後ろにまたがる。
隊長にしがみつきながらふり返ると、壁の上で殺気を放つ男と目が合った。
私たちはそのまま町はずれまで駆ける。
誰もついては来なかった。敵は撒けたようだ。
「はああ、肝が冷えたぞ」
屋敷を見張っていた隊長は私が屋根の上で戦っていることに気がついたとか。
私の動きに合わせて移動してくれたらしい。
「ありがとうございました」
「首尾は」
「第一王子です」
ふうっと息をはいて隊長は馬の向きを変え公爵邸に帰る。
「やはり第一か。マキシムが本気になったら側近はすぐだろう。父上を宰相から蹴落としてすぐ取って代わることは難しそうだが‥次の次くらいを狙っているとしたら」
現宰相の公爵様はまだ50手前。次を狙っても10年以上かかる。
対して第一王子を後見している公爵は70ほど。本人は高齢な割に跡継ぎが20と若すぎる。
密約が交わされているのだろう。第一王子が立太子し、オールデン公爵が引きずり降ろされれば、マキシム・ホークに宰相の座が渡されるように。
「決まりだな。第二王子に報告する」
決定的な証拠はないが、ここまで調べたら報告しなくては。
まあ第二王子だって危機感は十分抱くだろう。
「王家にはそれでいいとしてさ」
オスカーが頬をふくらませた。
「ローアン様にされたことの復讐もしたいよね」
「わかる。けど第二王子が王位を継げば、結果的にそうなるんじゃないかな」
第一王子は側妃の子である。気は強いが能力は平凡で、このまま行けば正妃の息子である第二王子が立太子される可能性は高い。
「まあこのままうまく行くわけないから、引き続きホーク家の動向は注視する」
ローアン様だって油断する気はないのだ。
ヒーローはヴィラン寄り。




