15 ライバル侯爵家の偵察
調査の結果、侯爵家に王家の紋章が入った馬車が訪問したことは判明する。
「第二王子からは最近訪問したことはないと確認できた。後はホーク家が誰についたかだな」
第一王子・第三王子・第一王女と候補が上がる。
「ブライト、ホーク家の女性を片っ端から口説けないか」
「会話ができれば可能ですけれど‥無理して会えば顔バレしますよ」
名家の女性に会うならサロンだ。
公爵夫人に相談すると、ホーク家のサロンに私を同行してくれることになった。
しかし単純な参加は避ける。
本来なら私は護衛の1人。貴婦人方が会話を楽しむ最中はだまって壁際にひかえているしかできない。
しかしそれでは聞きこみも探索もできないので多少の策は練った。
そしてホーク家への訪問日がやって来る。
この日の当主は王宮に出仕している。
つまり凄腕の護衛が屋敷にはいない。
私は公爵夫人が屋敷に案内されるのを御者と一緒に見送った。そう今の役割はフットマン。馬車の側に残っても目立たぬよう、他の数人とおそろいの服だ。
任務は屋敷の配置とか他の家来の把握。
「素晴らしいお屋敷だね。働いている人も美人ばっかり」
メイドにちょっかいをかけるよその家の使用人。良くあるシチュエーションだろう。
ホーク家の馬丁とお茶を御馳走になりながら無駄話に興じる。
さすがに王家から訪問者があったことは誰も話さない。口止めされているのだろう。収穫は少なかった。
あまりキョロキョロしては怪しまれるから裏口の位置だけ確かめる。
「すみません、これだけで」
戻ってからローアン様に謝った。
「しょうがない、母上の聞きこみもかんばしくなかったようだ」
茶会で提供された話題は流行の劇やスイーツと、無難な内容だけらしい。
公爵夫人としても無理に聞き出して警戒されることは避けたいだろうし。
しかしマキシム・ホークがいない屋敷をいくら見張っても、王族が来るはずないのだ。
「さすがに屋敷内までは入れないか。塀が高すぎる」
ローアン様のつぶやきに私は反論した。
「え、入るだけなら僕でもできますよ」
それくらいなら可能なのに、ローアン様は目を丸くしている。
「まさかブライト、お前この屋敷の柵も超えられたりするのか?」
「はい、ここくらいなら」
信じていないようだからやって見せた。
もちろん1人では難しい。
ハロルド隊長に協力してもらい、柵に背を向け、両手を組ませて待機させた。
私は助走で勢いをつけ隊長の手に足をかける。隊長が腕を振り上げる力を借りてジャンプ!
手が柵のてっぺんに届き、体を引き上げた。
今度は反対側に体を落としたら、腕をいっぱいのばしてから着地する。
「ね?」
ローアン様も手伝ってくれたハロルド隊長も苦い顔をしていた。
「身体強化を使わずにこれだと」
「警備を1から考え直すか」
「問題は、無事忍びこめてもあの護衛にはすぐ気づかれそうなんですよ」
重要な情報を手に入れたければマキシム本人に近づかないといけない。
しかし彼の側には常に凄腕が控えていた。
「夜中の執務室は無人でも、鍵がかかっていますよね」」
「ああ。まあ執務室に入れなくとも何かしら有益な情報が得られれば良い」
「使用人のうわさ話を盗み聞きくらいなら可能ですよ。アレがいないのであれば、ですが」
凄腕の護衛さえ避ければ潜入は可能なはず。
分かる範囲で屋敷の見取り図を作り、マキシム・ホークの予定を探る。
「気は進まぬが。ブライトにはホーク家に潜入してもらう」




