12 もしかして失恋?
「ふう、どうにか無事にパーティーが終わったわ」
「息子が夜会でやっていけるまで回復するとは」
「どっちも大げさなんだよ」
公爵夫妻は喜んでいる。
あの夜会の後、ローアン様は変わった。
「メイドくらいは部屋に入って良い」
自分から女性に近づこうと努力している。
まだ至近距離は無理のようだが、同室にいるくらいは許容できるようだ。
「もうお茶係は卒業かな」
オスカーの女装も2日に一度と減った。
ローアン様は震えながらメイドが煎れたお茶を受け取る。
「あまり無茶はしない方がよいかと思いますよ」
私たちが心配するレベルだ。
しばらくして理由が分かった。
「ブライト、茶会にフローレス嬢を誘うのは変だろうか?」
頑張っていたのはデイジーが目的だった。
「フローレス家は派閥が違うのだが、お前が同席すれば友達枠で呼べるんじゃないかと‥」
恋する男は必死だね。私の気持ちが投げやりになる。
(うん、別にもういいや。心を病んだ令息が無事に復活しようとしている。私のほのかな思いなんて‥捨ててしまえばいいんだ)
大体、この気持ちが恋だったかはあやしい。美形に憧れていただけかもしれないのだ。
ちょっとだけ胸が痛むのは気のせいだろう。
私はローアン様の計画を公爵夫人に伝えた。
「まあああ‥そんなことがあったのね、分かりました。茶会ではあなたとローアンを同席させます。フローレス家にも連絡を取ってみるわ」
そしてお茶会当日。
デイジーは緊張でコチコチになりながらやって来た。
「お招きありがとうございます」
「ごめんね、僕が軽い気持ちで会いたいって言ったから」
参加メンバーはデイジーとローアン様、私と公爵夫人の4人だ。
名目上は私が無理に誘ったとことになっている。
デイジーの家は、元々は友好関係にある派閥だった。しかし今は交流が絶えている。
なぜならローアン様の元婚約者の派閥だったから。
そりゃ緊張もするだろう。
「シルバー公爵家とも色々ありましたが、今日くらいはいざこざを忘れて、楽しくおしゃべりしましょうね」
公爵夫人が場をまとめてくれて、お茶会は和やかに始まったと思う。
「おいしいお菓子ですね」
「デイジーはこれが好きなんだ。ローアン様もこれ気に入っていましたよね」
「あ、ああ」
しかし長い間女性との関りを断って来たローアン様だ。会話が全く続けられない。
私だって何とか2人の会話を成立させようと努力をしたけれど。
「デイジー嬢のプローチかわいいですよ、ねぇ」
「あ、ああ」
「うふふ、お気に入りですの」
身に着けている物から会話を広げようとする。
どんなお店のかな? とか、僕たちも行ってみますか? とか。学校の話題は避けたけれど、うまくできたと思う。
それでも公子様からは相づち以外返ってこない。
「ダメだ、もう私はダメな人間なんだ‥」
デイジー嬢が帰った後、ローアン様はうなだれた。
せっかくの顔合わせなのにまともな会話ができなかったことをいつまでも後悔している。
「次の機会がありますよ」
「そうよ、ご令嬢とお茶を飲めただけで大きな進歩なのですから」
私とお母上で必死になだめた。
背中をヨシヨシしてあげると機嫌も落ち着く。
「デイジー嬢に手紙で聞いておきますよ。あなたの印象とか好みの男性像とか」
「頼む‥ブライトだけが頼りだ‥」
私はデイジーと時々手紙をやり取りすることになる。
その影響は思わぬところからやって来た。
あんまり失恋エピソードを長々書く人少ないんでやってみました。
ちゃんとヒーローは出しますよ、もうちょっとお待ち下さい!




