10 夜会・ホーム
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夜会。上位貴族なら定期的に開くことが必須だ。
「今まではローアンの外聞が悪かったから開催を控えていたのよ。でもそろそろ構わないと夫と相談したのよね」
そして夜会にはパートナーが必要だ。
夫人経由で、部下の誰かを女装させる手はずは整っている。
「母上の命令だから仕方ないのだが、まずオスカーは決定済みだ。オスカーの素顔は厚化粧で隠し通せるしな」
私も夫人もそこは想定済み。
女装に慣れているオスカーに白羽の矢が立てられるのは避けられない。
「だがオスカーとばかり踊っていても怪しまれる。もう1人予備が必要なんだ」
そう、そこに私が入りこむ計画である。
ガチのドレス姿で私がダンスを踊れば、いくらローアン様でもドキドキするかもしれない。
恋心とまでは行かなくても、もっと女子とふれあいたい欲求が高まるかもしれないのだ。
「君が本当の女の子だったらいいのに」くらい言ってくれよー
それなのに‥
夜会当日、私はタキシードを着ていた。
ふっ。
遠くを見る。
もう1人の女装に立候補した私を、ローアン様ご自身が却下されたのじゃー
「ブライトは私に近づく女性陣を引き離す役割だろう」
そうだった。
美しいローアン様が夜会になんぞ参加したら女性に群がられてしまう。
そして群がる蝶を追いはらうのに一番適切なのは‥ 私じゃん。
今まで王宮でずっとやっていたからね。そりゃ信頼も厚いよね。
ため息をついて私は隣を見る。
ビクつきながら腕につかまっているのは側仕えの1人チャーリーだ。
オスカーが張り切ったから、もう彼の顔は原型をとどめていない。
普通にきれいだった。緊張のあまり表情はこわばっているけど。
「ブ、ブライト君、うまく行くのでしょうか」
泣きそうなパートナーを肘でこづく。
「話す時は裏声で」
早めに準備して広間に入り柱の陰へ隠れる。
誰かに話しかけられたら面倒だ。
会場にはチラホラ人が集まってきた。
身分の高い貴族ほど遅れてやって来る。
侯爵家や公爵家がそろうとパーティーが始まる。
「まだ回復前なのに他派閥まで招待する必要あるのかな」
「ローアン様の名誉を回復したいのでしょうね」
私はチャーリーと仲睦まじく見えるようにささやき合った。
ローアン様はオスカーとダンスを踊っている。
随分練習したみたいで2人の踊りは様になっていた。
「まあ次期公爵様のお連れはどなたかしら」
「やっとお相手が見つかったのね」
年配女性からの好意的な視線。
「くすん、ローアン様わたくしとは踊って下さらないのね」
悲しむ令嬢の声。
「ふん、いつまでも引きこもっていればいいのに」
おそらくライバル関係からの悪意。
それらを一身に受けて、ローアン様のファーストダンスが終わった。
「行くよ」
私はジョーンズをエスコートしながら主に歩み寄る。
「素晴らしいダンスでしたわ。次のお相手はお決まりでしょうか」
ローアン様は案の定令嬢に囲まれていた。
チャーリーの手を離して声をかける。
「おやおや、公子様はモテモテですね。うらやましい」
公子はこちらを見てあからさまにホッとしている。
「ああシャリー嬢、私とダンスを」
彼は無事にチャーリーを誘えた。
私は場所を入れ替わり、他家の令嬢を誘ってみる。
「僕ではダメでしょうか?」
彼女はポッと顔を染めた。
(力入れすぎたかな? でも今夜はしょうがないか)
若様と離れすぎないように動く。
ローアン様はうまい具合にオスカー・チャーリー・母親とダンスをローテーションしていた。
これなら問題ないだろう。ホッとしたその時だった。




