測れないもの
チーン……
レモリア学園の休み時間を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
生徒たちは教室を出て、食堂や図書館へ向かったり、それぞれ思い思いの行動を始める。
前菜からケーキなどのデザートまで、さまざまな料理が並び、生徒たちが自分の食べたいものを取るために列を作っていた。
ラスクは料理用のトングとトレイ、そして皿を手に取った。
「何を選ぼうかな、野菜付きの焼き肉か、それともソーセージ入りのポテトスープか……」
ラスクは二つの料理を鋭く見つめ、手を行ったり来たりさせていた。
「ねえ、早くしてよ!私も選びたいんだから!」
女子生徒が叫んだ。
ラスクは振り返ったが、そこには誰もいなかった。すると、視界の端に一つの手が映る。
「どこを見ているの?」
高い声がした。
ラスクは少し視線を下げると、胸の高さほどの背丈の、不機嫌そうな少女が立っていた。
「なんでこんなところに小さい子がいるんだ?」
「なにっ!?」
少女は叫び、思い切りラスクの足を踏みつけた。ラスクは痛みに顔をしかめる。
「小さいなんて呼ぶな、人間!」
そう言いながらラスクを指差す。
彼女は尖った耳を見せた。
「見なさい、この尖った耳を。私はエルフよ」
「ごめん、もう小さい子って言っちゃった」
ラスクが言うと、
二度目に彼女は再びラスクの足を踏んだ。
「だから小さいって呼ぶなって言ったでしょ、このロリコン!」
少女は叫んだ。
ラスクはただうなずき、ポテトスープとソーセージ、そしていくつかのケーキを取り、昼食を食べているコルヴィアンとメラティのもとへ向かった。
到着すると、コルヴィアンは笑っており、メラティは必死に笑いをこらえていた。
「何をしたら、あの小さい子に踏まれるんだ?」
コルヴィアンは笑いながら言った。
「小さい子って呼んだだけだ。そしたら踏まれた」
苛立った様子でラスクは答える。
「ラスク、一つ聞いていい?あの子が言ってたけど、あなたってロリコンなの?」
メラティが尋ねた。
ラスクは立ち上がり、机を強く叩いた。
「俺はロリコンじゃない!」
その声に周囲の全員がラスクを見るが、彼はすぐに座り直した。
「入学式の日に、ああいう子を見た覚えはあるか?」
コルヴィアンが尋ねる。
ラスクは黙って食事をしながら首を横に振った。
「たしか、エアリス先生が遅れて来る生徒が一人いるって言ってなかった?」
メラティが言う。
「確か、常に霧に包まれた王国の出身だったはずだ」
ラスクは食べ物を噛みながら答えた。
「えっ!?あそこって不気味な場所じゃないか」
コルヴィアンは目を見開き、体を震わせた。
ラスクはにやりと笑いながら、強く背中を叩いた。まるで「幽霊が怖いんだろ」と言うかのように。
「何するんだよ!」
コルヴィアンは叫ぶ。
「あの王国はとても高くて、雲の上を歩いているみたいなんだ」
ラスクは続けた。
「そんな不思議な王国があるなんて初めて聞いたわ」
メラティが言う。
その時、コルヴィアンの後ろに一人の男が立ち、彼の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「おい、坊主。今すぐ手伝ってほしい」
ガロンさんは笑った。
「はい!ベルが鳴る前に終わらせましょう!」
コルヴィアンは元気よく答える。
「二人とも、友達を少し借りるぞ」
二人はただ微笑み、ガロンさんとコルヴィアンは厨房へ向かった。
「メラティ、実は聞きたいことがあるんだ」
ラスクが言う。
「……何?」
彼女は小さく答えた。
「どうして左目を覆っているんだ?」
ラスクは尋ねた。
それを聞いたメラティは、顔を伏せた。
「ごめんなさい……でも、話したくないの」
その声は小さく、次第に消えていった。
「分かった。無理に聞かないよ」
ラスクは言った。
【聞くべきじゃなかったな、あんなに繊細なことを】
ラスクは心の中で思った。
ラスクは三人分の食べ終わったトレイを持ち、厨房へ向かった。
メラティは深く息を吐いたが、嫌な記憶が一瞬よみがえり、目に少し涙が浮かんだ。
【どうして、一番思い出したくないことばかり浮かんでくるの……】
彼女の手がうっかり持っていた本に触れ、ある男子生徒がその本を拾って彼女に差し出した。
「ありがとう」
メラティは小さく言った。
「どういたしまして」
彼は微笑む。
「同じクラスだよね?」
「ええ、同じクラスだけど、1-Aの全員の名前は覚えきれていないの」
低い声でメラティは答えた。
「自己紹介しよう。僕はユリアン・フォン・ブラットハイムだ」
【ベルタ先輩の弟……やっぱり格好いい】
メラティは心の中で思った。
「こちらこそ、メラティよ」
挨拶を終えると、ユリアンは料理を取りに向かった。そこへラスクとコルヴィアンが厨房から戻ってきた。
「メラティ、誰と話してたんだ?」
コルヴィアンが聞く。
「知らないの?彼はユリアン・フォン・ブラットハイム。クラスで一番の美男子だぞ」
ラスクが言う。
「本を拾ってくれて、少し話しただけよ」
メラティは答えた。
「いいなぁ……あんなに格好良かったら有名になれるのに」
ラスクは少し大きな声で言った。
「お前はもうロリコンとして有名だろ」
コルヴィアンが言う。
「なに!?」
ラスクは叫んだ。
二人は言い合いを続けていたが、メラティはただ微笑みながら二人を見ていた。
休み時間はあっという間に終わり、再び鐘が鳴り、授業の開始を告げた。
「今日は、ケイトン先生とテッド先生が作った装置で、皆さんのマナ量を測定します」
エアリス先生が言った。
しばらく待った後、
「すみません、二人はまだ――」
その時、教室の扉が開き、木彫りの箱に収められた水晶を持つテッドと、本を抱えたケイトンが入ってきた。
「遅れてすみません」
ケイトンが言う。
「大丈夫です。無事に進めばそれで」
エアリスが答えた。
テッドは装置を黒板前の机に置いた。
「このマナ測定装置は、校長先生の承認を得ています」
テッドが言う。
「一人ずつ呼ばれますので、マナ量を測定してください」
エアリスが続ける。
「自分のマナ量を知ることで、杖か、マナ消費を抑える魔道具を選べます」
ケイトンが説明した。
生徒たちは次々に測定され、ほとんどが大きなマナと個性を持っていた。
メラティは杖を使いながら机へ向かった。
「手を水晶の上に置いてください」
テッドが言う。
メラティが手を置くと、相反する二種類のマナが互いに反発し合うのが見えた。
「これはおかしい……相反する二つのマナが同時に存在するはずがない」
ケイトンは記録しながら言った。
「また装置が壊れたのか?」
テッドが言う。
「メラティ、席に戻ってください」
エアリスが言った。
メラティが席に戻ると、周囲の生徒たちはなぜ彼女がここにいるのかと囁き合った。
最後に測定されたのはコルヴィアンだった。
「先生、本当にこの装置で分かるんですか?」
コルヴィアンが尋ねる。
「心配するな。校長先生にも使った」
テッドは親指を立てた。
「早くしてくれ、次のクラスがある」
ケイトンが言う。
コルヴィアンが手を水晶に置くと、非常に大きなマナが現れ、次の瞬間、ひび割れの音とともに水晶が爆発した。
破片が机の上に散らばる。
「テッド、サイズ計算を間違えたんじゃないか?箱型にする必要はなかっただろ」
ケイトンが言う。
「おかしい……今朝、最も大きなマナを持つ校長でも問題なかったのに」
テッドは割れた水晶を睨んだ。
「まあいい。1-Aと他のクラスは終わった」
ケイトンが言った。
コルヴィアンは席に戻り、左手の魔法陣を見つめた。
【どうして水晶が壊れたんだ……】
彼は窓の方を見ると、黒い影が大きく笑っていた。
「小さな玩具では、我が何千年も吸い続けてきたものには及ばぬ」
囁き声がした。
「おい、コルヴィアン。さっきから窓ばかり見てるぞ」
ラスクが言う。
「いや、装置が壊れた理由を考えていただけだ」
コルヴィアンは答えた。
「まあ、初めて作った装置だし欠陥もあるだろ」
ラスクが言う。
「……そうかもしれない」
コルヴィアンは呟いた。
【俺が聞いている声……夢に現れる影なのか?】
彼が再び窓を見ると、黒い影は不気味な笑みを浮かべながら、ゆっくりと消えていった。
「……しゅ、主……」
影は小さく呟いた。
読んでいただき、本当にありがとうございます。
少しずつ物語が動き出し、キャラクターたちの秘密も見え始めてきました。
まだ未熟な点も多い作品ですが、感想やご意見をいただけると、とても励みになります。
次の話も、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。




