行動に価値はあるのか
足音が反響し、はっきりと聞こえる。
その青年は、終わりのない回廊を歩き続けていた。
眩しい光が視界を覆い、目を開けた瞬間、彼はすでに男子寮の前の広場に立っていた。
青年は学院の廊下を歩き、やがて学園の劇場へと入る。
扉が開くと、舞台の上には一つの影が立ち、鋭い視線と大きな笑みで青年を見つめていた。
彼は反射的に扉を叩きつけるように閉めた。
呼吸は乱れ、冷たい汗が全身を濡らす。
「なぜだ……あの影は、いつも現れる……」
ゆっくりと扉を少しだけ開け、隙間から中を覗く。
「あの影……どうやら、もういないみたいだ」
青年は扉を大きく開け、少し中へ入ったあと、再び劇場の外へと出た。
彼は学院の廊下を通り、1-Aの教室へ向かう。
しかし、暗い隅々から「主よ」と呼ぶ囁きが聞こえる気がしてならなかった。
ギィィ……。 教室の扉が大きく開く。中には誰もいない。
「これは……夢なのか、それとも……?」
二、三歩進んだその時、
扉が激しく閉まり、教室の奥から一つの影が現れた。
「ご卒業おめでとうございます、主よ」 影は高らかに告げた。
青年はすぐさま振り返り、扉を破ろうとする。
【ここから出たい!】
ゆっくりと振り向くと、影はすでに目の前に立ち、広い笑みを浮かべていた。
「主……」
低く囁く声。
「あなたはすでに魔法を使える。だが、選ばねばならない――
支配されるか、支配するかを」
影はゆっくりと青年に近づく。
彼は体を動かせず、左手だけがかろうじて動いた。
空間魔法で影を攻撃するが、それでも止まらない。
冷たい氷のような感触の手が胸に触れ、
影はゆっくりと青年と一体化していく。
「主よ……私を制御できなければ、私があなたを制御する」
影は微笑み、やがて青年の顔を覆った。
青年は叫びながら必死に抵抗するが、体の一部がすでに痺れ、感覚を失っていく。
その瞬間、青年はベッドから転げ落ち、大きな音を立てた。
彼は天井を見つめ、しばらく動けずにいた。
深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
「まるで……さっきの出来事が夢じゃなかったみたいだ」
チーン……チーン……。
大きな鐘の音が鳴り響く。
「おはようございます。私は錬金術担当の教師、キートン・モンタギューです」
「錬金術とは、薬を作るための素材を見極める学問です」
「回復薬、毒、あるいは中和剤などを作ります」
コルヴィアンが手を挙げた。 「先生、薬の材料は植物だけですか?」
「いいえ。植物だけでなく、時にはモンスターの体の一部――
毒、毛、涙なども使います」
教師は右目の下にある魔法陣を起動した。
「インク」
巨大な魔法陣が教室の床に広がる。
「今日は、ノクティラ山で光草、風花、跳躍茸を探してもらいます」
床の魔法陣から光が溢れ、髪がふわりと浮き上がった瞬間、
彼らはノクティラ山に立っていた。
巨大な木々の隙間からわずかに差し込む太陽光。
湿った空気、無数の昆虫と両生類。
教師は光る草、風をまとった花、根が黒い普通のキノコを取り出す。
「一時間以内に、それぞれ一つずつ見つけなさい」
メラティとコルヴィアンはすでに三つすべてを集めていたが、
ルスクは新鮮な跳躍茸を捕まえられずにいた。
摘もうとするたび、キノコは跳ねて逃げてしまうのだ。
何度も失敗した末――
「なんでこのキノコ、跳ね続けるんだよ!」
ルスクが叫ぶ。
気づかぬうちに、小さな蛇が彼の体を這い上がっていた。
「ルスク、体に――」
メラティが言いかける。
コルヴィアンは彼女を制止した。
「いいよ。今は跳躍茸に夢中だから」
メラティは黙って頷いた。
「やった!」
ルスクが跳躍茸を掲げる。
「ついに最後の材料だ!」
その時、体に違和感を覚え、掴んで見てみると――小さな蛇だった。
悲鳴を上げ、彼は蛇を遠くへ投げ捨てた。
「なんで蛇がいるって教えてくれなかったんだ!」
ルスクは声を荒げる。
「言おうとしたけど、彼に止められたの」
メラティはコルヴィアンを指差した。
「まだ蛇が怖いのか見たかったんだ」
コルヴィアンは薄く笑った。
突然、遠くから熱波が押し寄せ、三人は驚いて振り向く。
「なんで急に暑くなったんだ?」
ルスクが言う。
「近くにモンスターが……?」
メラティが小さく呟き、胸の鼓動が早まる。
コルヴィアンが遠くを見ると、
サイドポニーテールの少女が巨大な熊と戦っていた。
「あれは……シールドベア?」
ルスクは唾を飲み込む。
「本来は防御型のモンスターのはずだ……なぜ攻撃を?」
コルヴィアンが答える。
「シールドベアは防御力が非常に高い魔獣で――」
メラティは拳を強く握りしめ、動けずに見つめていた。
「メラティ……」
「先生のところへ戻って助けを呼んで!」
コルヴィアンが言う。
メラティは頷き、杖を握って走り出した。
「ルスク、彼女を助けよう」
コルヴィアンが言う。
「なに!? あんなモンスターと戦うのか!」
ルスクは声を荒げた。
シールドベアは地面を砕き、少女を吹き飛ばす。
彼女は気を失った。
コルヴィアンは即座に空間魔法で彼女を守った。
「頼む、彼女を連れて逃げてくれ。俺が注意を引く」
コルヴィアンが言う。
「正気か!? 魔法が効かない相手だぞ!」
ルスクが叫ぶ。
コルヴィアンは俯いた。
「……選ばなきゃいけないんだ」
静かに言った。
ルスクは一瞬黙り込み、
コルヴィアンが熊の注意を引くのを見て、少女を抱えて走り出した。
シールドベアは次々と物を投げつけるが、
コルヴィアンは空間魔法で必死に防ぐ。
【どうやって倒す……?】
彼は後ろを振り返りながら考える。
目の前には深い崖。
汗が滲み、心臓が激しく鳴る。
「……倒すしかない」
空間魔法で攻撃するが、熊は止まらない。
その瞬間、
無数の黒い矢が熊の背に突き刺さり、巨体が倒れ伏した。
「間に合ってよかった」
教師が呟く。
コルヴィアンはその場に崩れ落ちた。
「ありがとうございます、キートン先生」
「まだ入学して一週間だ。無茶な判断はするな」
「……すみません」
「罰として、学食の料理長を一ヶ月手伝え」
「インク」
足元に魔法陣が現れ、光に包まれ、二人は学院へ戻った。
教室ではルスク、メラティ、そしてあの少女が待っていた。
キートン教師は職員室へ戻っていく。
「無事でよかった……怪我がなくて」
メラティが言う。
「熊の餌になったかと思ったぞ」
ルスクが大声で言う。
「なに!?」
「俺は勇敢なんだ! お前みたいな臆病者じゃない!」
コルヴィアンが言い返す。
二人は睨み合った。
「助けてくれて……ありがとう」
少女は顔を赤らめて言った。
「困っている人がいたからだ」
コルヴィアンは答える。
「あなたたちが邪魔しなければ、私一人で倒せたのに」
少女はそう言い残し、教室を出て行った。
【あの子……プライドが高い】
メラティは心の中で思った。
「変な奴だな」
ルスクが言う。
「何が言いたかったんだ……?」
コルヴィアンが首を傾げる。
「二人とも、食堂に行こう。ケーキがなくなる前に」
メラティが言った。
「今日はチョコレートケーキの日でしょ?」
「そうだ!」
「急がないと!」
コルヴィアンが声を上げる。
三人は、緊張の一日を終え、学院の食堂へ向かった。
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