レモリア学院の初日
「初日はいつも多くのものを運んでくる。希望、ぎこちなさ、そして予期せぬ出会い。
この章では、レモリア学院に入学した新入生たちの最初の一歩に焦点を当てる――静かに始まりながらも、やがて彼らそれぞれの関係や価値観、そして歩む道を形作っていく始まりだ。
大きな衝突はない。ただ、これから続く長い物語の土台となる“最初の日”が描かれる。」
黒い雲が空を覆い、小雨が街全体を濡らし、にぎやかだったエルメリストの街路は静まり返っていった。
学校の劇場ホールでは、合格した受験者たちが整然と並び、レモリア学院の新入生入学式を迎えていた。
「全員、注目しなさい!」
舞台の上から誰かが叫んだ。
全員がその場の動きを止め、舞台上に立つきちんとした服装の二人に視線を向けた。
「私の名前はキートン・モンタギュー――」
「やあ、みんな。私の名前を覚えているかどうかはどうでもいい。重要じゃないからね。二度目だからもう一度言うよ」
満面の笑みを浮かべながら。
「僕の名前はテッド・ベイカー。この学院の教師の一人で、彼も同じだ」
キートンはため息をついた。
「……もう終わったか?」
テッドはただ頷いた。
「君たちがレモリア学院の正式な生徒となったことを、ここに祝福する」
全員が拍手を始めたが、テッドだけは人差し指だけで拍手をしながら微笑んでいた。
[どうしてこんな人物が、いつも校長から仕事を任されるんだ]
キートンの心の中で。
「合格証の巻物を掲げてください」
キートンが言った。
全生徒が合格証の巻物を掲げると、キートンは右目の下に浮かぶ魔法陣を起動させた。
「インク」
「合格証の巻物を開いてください。そこにクラスと、あなた方が使用する寮の部屋が記されています」
キートンの声が会場に響き渡る。
全生徒が巻物を開くと、最初はレモリア学院の紋章しかなかった紙面に、クラスと部屋番号の文字が浮かび上がった。
「男子寮は北北東、そして女子寮は南南西だ。授業開始まで一時間与える」
テッド・ベイカーが言った。
「個人の荷物を部屋に置きたい者は、自由にどうぞ」
キートンが続けた。
二人は舞台を降り、教師室へ戻っていった。
「君たちはどのクラス? 僕はAクラスだよ」
コーヴィアンが元気よく言った。
「同じだよ、コーヴィアン。僕たち同じクラスだ」
ラスクが答える。
「私もAクラス。これは運命なのか、それとも計画なのかしら」
メラティは気だるそうに言った。
だがメラティは、三人に向けられる多くの敵意ある視線を感じ取っていた。
「私は先に失礼するわ。寮の部屋に行きたいから」
メラティが言った。
「気をつけて、メラティ」
コーヴィアンが言う。
「どうぞ、メラティ」
ラスクが答えた。
メラティは頷き、杖をつきながら、少し距離のある女子寮へと歩き出した。
「メラティ、送ろうか?」
コーヴィアンが声をかけた。
メラティは立ち止まり、振り返ってため息をついた。
「大丈夫だよ。ひとりで平気だから。」
彼女は再び歩き出し、倉庫、研究室、花園を通り過ぎて女子寮へ向かった。
花に水をやっていた一人の女子生徒がメラティを見て、薄く微笑み、手を振った。
[どうやら、この後輩は気に入りそうね]
女子生徒の心の中で。
メラティも微笑み返し、女子寮へと向かった。
三棟の多層建築の建物が並び、それぞれの入口の上には、月、針、タンポポの鉄製の紋章が取り付けられていた。
目隠しをした少女は合格証を開いた。
「タンポポ棟、四号室」
彼女は杖をつきながら、針棟の隣にあるタンポポ棟へと進んだ。
建物の扉を開けると、八つの扉が並ぶ廊下が広がっていた。
彼女が四号室へ向かおうとしたとき、三号室の扉が開き、横結びのポニーテールの少女がメラティを睨みつけた。
「どうして学院は、あなたみたいな生徒を受け入れたの?」
彼女はそう言い放ち、建物の外へ出て行った。
[私みたいな人間が合格できた時点で、もう驚かない]
メラティは部屋に入った。
そこはベッド、机、木製のクローゼットが置かれた、十分に広い部屋だった。
「この学院での生活で、私は青春を感じられるかもしれないわ」
メラティは薄く微笑んだ。
彼女は服や学院の道具を片付け始めた。
一方その頃、コーヴィアンとラスクは男子寮前の広場にいた。
こちらも三棟の多層建築で、それぞれに狼、槌、木の紋章があった。
「コーヴィアン、僕は先に行くよ。木の棟だから」
ラスクが言った。
青年は狼の棟へ向かい、大きな扉を開けると、階数を確認するために紙を見た。
「三階、十七号室か」
一階につき八部屋しかないため、彼は三階へ向かった。
「毎日こんなに階段を上るのか……」
コーヴィアンは息を整えながら言った。
彼は階段近くの十七号室へ入った。
そこもまた、ベッド、机、木製のクローゼットのある広い部屋だった。
「レモリア学院での初日だな」
コーヴィアンはそう言って窓へ向かった。
そよ風が彼の髪を揺らし、ゆっくりと笑みが浮かんだ。
「ここで成し遂げることを、両親と祖母に誇りに思ってもらわなければ」
コーヴィアンは真剣な眼差しで言った。
突然、石がコーヴィアンの胸に当たった。
彼はすぐに下を見た。
「おい、ラスク! なんで石を投げたんだ!」
コーヴィアンが叫んだ。
ラスクは両手を口元に当てた。
「急げ! 授業が始まるぞ!」
ラスクが叫び返した。
コーヴィアンは急いで学院の制服に着替え、ラスクのもとへ向かった。
二人は西北西にあるAクラスの校舎へ向かい、訓練室の前を通り過ぎた。
「初日は何を学ぶんだろう?」
ラスクが尋ねた。
「たぶん、基礎魔法かな」
コーヴィアンが答えた。
二人は1-A教室に到着し、扉を開けた瞬間、教室中の視線が二人に向けられた。
「どこに座る?」
ラスクが聞いた。
「うーん……」
コーヴィアンは空いている席を見渡し、メラティの隣が空いていることに気づいた。
「メラティの隣が空いてる。そこに座ろうか」
「いいね」
二人はメラティの隣の席へ向かった。
「おはよう、メラティ」
コーヴィアンが微笑んだ。
「……おはよう」
彼女の声はとても小さかった。
一人の女性教師が教室に入り、黒板の前に立った。
「おはようございます、皆さん」
穏やかに言った。
生徒たちは一斉に挨拶を返した。
「私の名前はエイルリス・レンです」
薄く微笑みながら黒板に名前を書く。
「そして、1-Aの担任です。これからよろしくお願いします」
「コーヴィアン……」
ラスクが小声で言った。
コーヴィアンは眉を上げるだけだった。
「担任は男だと思ってたけど、とても綺麗な女性だね」
ラスクが囁いた。
「……確かに綺麗だな」
コーヴィアンも小声で答えた。
「質問のある人はいますか?」
教師が言った。
横結びのポニーテールの少女が立ち上がり、手を挙げた。
「質問の前に、自己紹介をしてください」
教師は彼女を指さした。
「私の名前はヤラ・ラヴァンドです。魔法陣の型は何種類ありますか?」
ヤラが言った。
「とても良い質問ですね」
教師はそう言って黒板に書いた。
魔法陣の型
・自然元素
・身体変化
・武器
・操作
・固有/希少
「人類が確認している魔法陣の型は、現時点ではここまでです。固有型が存在する理由は、その魔法が本人そのものに由来するためで、子を持っても同じ魔法陣になるとは限りません」
教師は微笑みながら説明した。
[魔法陣の型って、こんなに種類があるんだな]
コーヴィアンの心の中で。
教室は次第に賑やかになり、生徒たちは一人ずつ自己紹介をしながら質問を始めた。
「第6話まで読んでいただき、ありがとうございます。
皆さんからの感想やご意見、コメント一つひとつが、執筆を続けるための励みであり、また今後この物語をより良くしていくための大切な糧となります。
それでは、次の話でお会いしましょう。」




