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魔法印  作者: Rizanthe Dravenhart


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レモリア学院・入学試験

レモリア学院の入学試験が始まります。

広大な迷宮の中で、コルヴィアンたちはそれぞれの力と覚悟を試されることになります。

青く広がる大空。

世界を照らす太陽の光の下、鳥たちが空を舞っていた。

レモリア学院の広大な広場には、千人もの若者が集まっている。

目的はただ一つ――学院の入学試験に合格すること。

「受験者の皆さん、ご注目ください」

係員の声が、空気を震わせるように響いた。

先ほどまで談笑していた受験者たちは、その声を聞いた瞬間、一斉に前方に立つ係員たちへと視線を向けた。

「今年のレモリア学院入学試験を開始します。

そして、こちらが――レモリア学院学院長、レオン・ライトンです」

前に進み出たのは、口元と顎を覆うほどの濃い口ひげを蓄えた男だった。

足首まで届く黒いローブに身を包み、胸元には指輪を模した四角い紋章の入ったストールをかけている。

「今年は私が入学試験を監督する。

昨年のような出来事は、二度と起こさせない」

学院長の声は、広場全体に重く響き渡った。

「――以上をもって、レモリア学院入学試験を正式に開始する」

その言葉と同時に、一人の守衛が係員と学院長の前へと歩み出た。

彼は左手の甲に刻まれた魔法印を起動させる。

模様は腕へと広がり、淡く光を放った。

「――《大迷宮》」

彼は両腕を高く掲げ、勢いよく地面へと叩きつけた。

次の瞬間、大地が激しく揺れ動く。

地面がせり上がり、無数の土壁が次々と出現し、それらが組み合わさって――

巨大な迷宮が姿を現した。

「作成は完了しました、学院長。

それでは、休憩をいただきます」

「ご苦労だった。後でまた呼ぶ」

守衛は一礼し、学院の奥へと戻っていった。

「テッド、迷宮の門を開き、合格条件を説明してくれ」

学院長がそう指示する。

テッドと呼ばれた男は、迷宮の門へと駆け寄り、その横に立った。

「自己紹介をしよう。

私の名はテッド・ベイカー。

これから、君たちが合格するための条件を説明する」

そう言って、彼は一本の指を立てた。

「ここにいる受験者は千人。

だが――合格できるのは、たった百二十人だけだ」

テッドは薄く笑い.

「不公平だ、そう思った者も多いだろう?」

彼は両手を広げ、声を張り上げた。

その瞬間、彼の左目の横に魔法陣が浮かび上がり、ゆっくりと迷宮の門が開いていく。

「だが、受け入れろ。

この世界は――常に不公平だ」

テッドはそう叫び、手を下ろした。

「それでは――試験を楽しみたまえ、受験者諸君」

合図と同時に、受験者たちは一斉に巨大迷宮へと駆け出していく。

その中で、コルヴィアン、ラスク、メラティの三人だけが、まだ外に立っていた。

「早く味わいたいな。

試験の、この緊張感」

コルヴィアンが楽しげに言う。

「どうして私まで、学院の試験なんか受けなきゃいけないの……」

メラティはため息をついた。

「二人とも、無駄口を叩くな。ついて来い」

ラスクがそう言って歩き出す。

三人は迷宮の中へと足を踏み入れた。

門がゆっくりと閉じると同時に、壁に取り付けられた松明が次々と灯り、暗い通路を照らし出す。

ラスクはごくりと唾を飲み込んだ。

(思った以上に……暗い)

「おお……」

(まるで、物語の中の冒険者になったみたいだ)

「二人とも、ぼーっとするな。

このままだと、三人とも落ちるぞ」

彼らは再び歩き出し、迷宮の通路を進んでいく。

しばらくしたその時――

コルヴィアンの足元で、何かが沈み込む音がした。

次の瞬間、三人は罠にかかり、悲鳴を上げながら落下する。

だが――

メラティだけは、別の穴へと落ち、そのまま迷宮の外へと放り出された。


「おめでとうございます、お嬢さん。試験開始からしばらくして、あなたが最初の合格者です」

係員がそう告げた。

「本当ですか? 私、入学試験に合格したんですか?」

メラティは尋ねた。

「はい、その通りです。あなたは迷宮にあるすべての障害を避けてしまうほど、非常に高い幸運をお持ちのようですね」

係員は答えた。

メラティは杖を使って体勢を整え、係員から一つの巻物と制服を受け取った。

「この試験は長くなりますので、今日は先にお帰りください」

「ありがとうございます。宿に戻ります」

メラティは軽く頭を下げ、宿へと戻っていった。

[あの二人は今どうしているんだろう……魔物と戦っているのかな?]

一方その頃、二人は下へと落下していった。

ラスクは目を大きく見開き、口を動かし続けていた。

「……死ぬ……俺、死ぬ……」

コルヴィアンは、取り乱しているラスクを鋭い視線で見つめた。

[変なやつだな……リム将軍の息子が、こんな臆病者だとは]

コルヴィアンは上を見上げる。

[どうか、メラティが無事でありますように……彼女のことが心配だ]

二人は高く積もった砂の山に激しく叩きつけられた。

コルヴィアンはすぐに立ち上がり、周囲を観察する。

[ここも……この迷宮の試練の一つなのか?]

隅の方から一本の松明が現れ、その場所だけを照らし、他は闇に包まれていた。

コルヴィアンは立ち上がり、数歩進みながら手がかりを探す。

砂の上に仰向けになっていたラスクは、砂の下から聞こえる「シューッ」という音に気づき、頭を上げた。

暗闇の中には、大きな赤い目と、ゆっくりと上下する砂の動きが見えた。

ラスクはゆっくり立ち上がり、コルヴィアンのもとへ歩き、肩を叩いた。

コルヴィアンが振り返ろうとすると、ラスクは人差し指を立てて黙るよう合図し、暗闇を指差した。

コルヴィアンは視線を集中させ――

大きな赤い目を見た瞬間、体が一瞬震えた。

「……ゆっくり、ここから出る道を探そう」

ラスクは小声で言った。

「もう探してる……だが、この迷宮は、まるで答えを隠しているみたいだ」

コルヴィアンは答える。

二人が話している間にも、その魔物は暗闇の中で動き、砂が揺れた。

コルヴィアンは、魔物が隅にある松明の光を避けていることに気づいた。

「ラスク、見ろ。あの魔物……松明の光を避けている」

「本当だ! 光を嫌っている!」

ラスクは勢いよく走り出し、松明を取ろうとした。

しかし次の瞬間、魔物が松明の前に姿を現す――

それは巨大な白い蛇だった。

ラスクは悲鳴を上げ、コルヴィアンに叫びかけたが、蛇はすぐに闇へと戻っていった。

[少し……分かった気がする。まず、あの魔物を倒さなければならない]

「ラスク、教えてくれ。お前の魔法印は、どんなタイプだ?」

「雷属性だ。でも……あの蛇に生きたまま飲み込まれるのが怖い」

ラスクは荒い息で答えた。

[もし……この魔法印の力を知ることができたなら]

コルヴィアンは左手のひらにある黒い円を見つめた。

「――主の力は、あらゆる物を切断できる“空間”を生み出すこと」

夢の中とまったく同じ声が囁いた。

[夢と同じ声……どこから?]

コルヴィアンは周囲を見回したが、そこにいるのはラスクと、先ほどの巨大な蛇だけだった。

だが再び手を見ると、黒い円は模様へと変わり、手のひらから腕へと広がっていた。

彼は左手を上げ、空間魔法を発動させる。

コルヴィアンは思わず大きく笑った。

[母さん、父さん、祖母が与えてくれたこの機会……無駄にはしない]

「ラスク!」

コルヴィアンは叫ぶ。

「今、俺は自分の魔法印の力を理解した!」

「力が分かったとして、どうやってあの魔物を倒すんだ!」

ラスクは声を張り上げた。

「お前の魔法で気絶させろ。

俺が空間魔法で、その体を切り裂く」

ラスクは無言でうなずき、松明へ向かって歩き出す。

コルヴィアンはその後ろをついて行った。

巨大な蛇が再び現れる。

ラスクの魔法印が発動し、雷が蛇を貫き、苦しませた。

魔物は激しく砂の中を跳ね回る。

その隙に、コルヴィアンは空間魔法を発動し、蛇の尾の先を切断した。

激しい咆哮が響く。

蛇は砂の中に潜り、渦を巻くように砂嵐を起こした。

二人は砂の渦に引きずり込まれ、砂の中に埋もれていく。

「父さん! 俺、死にたくない!」

ラスクが叫んだ。

「……主よ……」

小さな声が聞こえる。

「空間魔法は、切断だけでなく、防御にも使える」

コルヴィアンは即座に大きな空間魔法を展開し、自分とラスクをその中に入れた。

ラスクは口の中に入った砂をすべて吐き出す。

「ありがとう、コルヴィアン。

この空間がなかったら、俺たちは死んでいた」

ラスクは髪の砂を払いながら言った。

「気にするな。普通のことをしただけだ」

コルヴィアンは答える。

[あの囁き声は誰だ……しかも、なぜ俺を“主”と呼ぶ?]

コルヴィアンは一瞬、黙り込んだ。

彼は砂の中から空間魔法を持ち上げ、外を見る。

巨大な蛇は松明の近くで待ち構えていた。

「コルヴィアン、あの巨大な蛇を倒すのを手伝ってくれ!」

ラスクは震える足で叫んだ。

「ああ、倒して……合格しよう」

コルヴィアンは大きく笑ったが、心の奥には恐怖が残っていた。

二人は心臓を激しく鳴らしながら、巨大な蛇へと駆け出した。

ラスクは雷魔法を蛇の目に放ち、視界を奪う。

その瞬間、コルヴィアンは小さな空間魔法をいくつも作り、蛇へと放った。

巨大な蛇の体は空間魔法によって貫かれ、激しく地面に叩きつけられる。

小さな光の粒が体から溢れ出し――

やがて、蛇は静かに消えていった。


一つの鍵と一枚の紙切れが二人の前に現れ、ラスクがそれを拾い上げた。

「その紙には、何て書いてあるんだ? ラスク」

「どうやら……あの松明の近くに鍵穴を探せ、って書いてある」

コルヴィアンはラスクから鍵を受け取り、松明の方へ向かい、鍵穴を探した。

しばらくして、彼は松明の下に鍵穴を見つけ、鍵を差し込んだ。

壁が激しく揺れ、一つの石が持ち上がる。

二人が中へ進むと、色の異なる二体の王の像、整然と並んだ鎧、そしてスライド式の仕掛けが付いた小さな塔が見えた。

ラスクはため息をついた。

「別の門へ続く通路だと思ったのに……」

「俺も、そう思っていた」

「コルヴィアン、この仕掛けを解いてくれ。

俺は少し休む」

「大丈夫だ。必ず解いてみせる」

ラスクは壁の近くへ行き、背を預けて座り、目を閉じた。

一時間が過ぎ、ラスクが目を覚ますと、コルヴィアンはまだ仕掛けに取り組んでいた。

[え……さっきから、ずっとパネルを動かしているだけじゃないか]

ラスクは立ち上がり、コルヴィアンのもとへ行った。

「どけ!」

「この仕掛けは、俺がやる!」

ラスクがパネルを動かすと、配置は正しい位置に揃った。

「こんな簡単な仕掛けなのに、どうして解けなかったんだ!」

ラスクは声を荒げた。

「ずっと動かし続ければ……千回くらいで道が開くと思っていた」

ラスクは再びため息をつく。

[どうやら……スライドパズルで遊んだことがないらしいな]

「ラスク、最後のピースはどうする?」

「たぶん……その最後のピースを探さないといけない」

ラスクは考え込みながら、色の異なる紋章を持つ二体の王の像を見つめた。

「コルヴィアン、左の王の像の紋章を取ってくれ。

俺は右をやる」

「わかった」

二人はそれぞれ王の像から紋章を取り、位置を入れ替えて取り付けた。

すると、左側の壁が震え出した。

その壁が回転し、小さな箱が現れる。

箱の中には、仕掛けの最後のピースが入っていた。

「ラスク、これを見てくれ」

コルヴィアンは最後のピースを見せた。

「早く! 取り付けろ、コルヴィアン!」

コルヴィアンが最後のピースをはめ込むと、石が持ち上がり、一つの扉が現れた。

二人はすぐに走り出し、右側に見える光に気づく。

「見ろ! コルヴィアン、ついに合格だ!」

光を指さしながら叫んだ。

「ああ、本当だ、ラスク」

二人は全力で門へ向かって走った。

しかし、門はゆっくりと閉じ始める。

さらに速度を上げ、門が閉まりきる直前に跳び――

二人は無事に外へ出た。門は完全に閉まった。

「コルヴィアン、やったな! 俺たち、合格だ!」

「ああ、俺も早く学院で学びたい」

拍手の音が響き、一人の係員が二人に近づいてきた。

「門が閉まる直前の行動、なかなか劇的でしたよ」

係員は二つの巻物を差し出した。

「おめでとう。君たちは、最後に合格した二人だ」

二人は巻物を受け取り、安堵の表情で立っていた。

「失礼ですが……

左目を覆い、杖を使って歩いていた少女は、もうこの迷宮を出ましたか?」

コルヴィアンが尋ねた。

「ああ、最初に素早く合格したあの少女のことですね」

「えっ!?」

ラスクは声を上げた。

「良かった……彼女が合格して」

「てっきり、迷宮の中を探しに行かなければならないかと思っていました」

コルヴィアンは言った。

「待ってください。

どうして、そんなに早く合格できたんですか?」

ラスクが尋ねた。

「この迷宮は、意図的に作られた“謎”です。

奇跡が起こることも、あるのでしょう」

係員は校長のもとへ戻っていった。

「合格者の皆さん、ステージの近くに集まってください」

空に響く声が告げた。

合格者たちは、校長と係員たちが立つステージの前に集まった。

「入学試験に合格した皆さん、おめでとうございます」

校長が拍手をすると、全員がそれに続いた。

「大迷宮で体験したことは、

皆さんを偉大な存在へ導くための、大切な経験となるでしょう」

その瞬間、上空から多くの制服が現れ、ゆっくりと参加者の手元へ降りてきた。

「来週から、皆さんはレモリア学院で生活することになります。

それまでの時間を、有意義に使いなさい」

校長はステージを去り、合格者たちは帰宅を許された。

「コルヴィアン、帰ろう。

この合格通知を、父さんに見せたい」

「ああ、きっとリム将軍は、俺たち三人が合格したことを喜ぶ」

二人は笑顔でレモリア学院を後にした。

だが、コルヴィアンの胸には、

自分を“主”と呼ぶあの囁きへの疑問が、まだ残っていた。

それは――

夢の中に現れる、あの存在と関係があるのだろうか。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次回からは、レモリア学院での新しい生活が始まります。

引き続き、読んでいただけると嬉しいです

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