説明のつかない出来事
はじめまして、そしていつも読んでくださりありがとうございます。
先週は体調を崩してしまい、更新できず申し訳ありませんでした。
本日は第4話を投稿させていただきます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
街は朝から喧騒に包まれていた。
人々はそれぞれの目的地へと行き交い、荷物を積んだ馬車がゆっくりと街路を進んでいく。
朝日の光が静かに部屋の中へと差し込み、ひとりの青年の胸の上では、一匹の狐が頬を押すようにして彼を起こしていた。
青年はゆっくりと目を開き、自分を起こしている狐を見つめる。
「おはよう、ルーシー」
薄く微笑みながら、彼はそう呟いた。
狐を抱き上げて立ち上がり、肩の上に乗せたまま窓辺へと向かう。
「こんなに忙しい街なのに、まだ朝なのか……」
広がる街の景色に、彼は思わず目を見開いた。
狐は彼の肩から降り、扉の方へと向かう。
「お腹が空いたんだろ? ちょっと待って、着替えてくるから」
青年は鞄を開き、白い長袖のリネンシャツに茶色の長ズボンへと着替えた。
着替えを終えて扉を開くと、狐はすでに外へと走り出している。
「ルーシー、待ってくれ!」
青年は狐を追い、階下へ降りる。
そこには、左目を覆う眼帯をした少女が、テーブルに座っていた。
「おはよう、メラティ」
彼は微笑みながら声をかける。
「ごめんなさい。私は一緒に朝食を取れなかったの」
彼女の前には、空になった木製の椀と皿が置かれていた。
青年は向かいの椅子に座り、周囲を見回す。
「何を食べたんだ、メラティ?」
「スープ一杯と、野菜の炒め物、それからパンよ」
「美味しそうだな。でも、宿の主人は?」
「ヴィヴィのこと? 今は厨房にいるわ」
その時、厨房からヴィヴィが姿を現した。
「おはようございます、コルヴィアン。お食事はいかがですか?」
小さく微笑みながら、ヴィヴィが尋ねる。
「うん……食べる!」
彼は少し大きな声で答えた。
ヴィヴィはスープ一杯、野菜の炒め物、そしてパンを運んでくる。
「どうぞ、ごゆっくり。コルヴィアン」
そう言って、トレイを手にメラティの方へ戻っていった。
(ヴィヴィの料理……母さんの味に似てるな)
コルヴィアンは心の中でそう思う。
「ヴィヴィ、料理とても美味しいよ」
「ありがとうございます」
ヴィヴィは微笑んだ。
「メラティ、ルーシーをお願い。少し外に出てくる」
「任せて。ちゃんと見てるわ」
コルヴィアンは宿を出て、街を歩き始める。
建物の間を抜け、人々の流れの中へと紛れていった。
「この手紙を、必ずリム将軍に届けなきゃ」
彼は手紙を見つめながら呟く。
しばらく歩いても、目的地は見つからない。
「誰かに聞いた方がいいか……」
彼は巡回中の兵士に声をかけた。
「すみません。リム将軍はどこにいらっしゃいますか?」
「将軍なら、この路地を抜けて、王国兵舎の先にいらっしゃる」
兵士は微笑んで答えた。
「ありがとうございます」
礼を言い、コルヴィアンはその方向へ向かう。
そこは、非常に暗く狭い路地だった。
「少し怖いけど……行くしかない」
彼は慎重に足を進める。
その途中――
突然、刃が腹部に突き立てられた。
口から血を吐き、腹部から血が流れ落ちる。
手は震え、意識が徐々に遠のいていった。
――次に目を覚ました時、彼は反射的に腹を押さえた。
だが、そこに傷はない。
刺さっていたはずの刃も、血も、すべて消えていた。
「……え?」
彼は驚愕し、振り返る。
そこには、頭にナイフを突き立てられた男が倒れていた。
呼吸を整えながら、コルヴィアンは後ずさりし、全力で走り出す。
「何が起きたんだ……」
彼は兵舎の門前に辿り着き、汗と激しい鼓動に包まれる。
「考えるな……今は手紙を届けるんだ」
門を叩くと、兵士が現れた。
「ここは関係者以外立入禁止だ」
「ですが、将軍に会いたいんです!」
「規則は規則だ」
兵士はそう言って立ち去った。
「どうすれば……」
その時、低い声が響く。
「門の前で騒いでいるのは誰だ?」
兵士が敬礼する。
「この青年が、将軍に会いたいと」
将軍は青年の前に立つ。
「私を探しているのか?」
振り返った瞬間、コルヴィアンの頬を涙が伝い、無意識に笑みが浮かんだ。
「大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
リム将軍は微笑む。
(フランク……生きていたのか)
コルヴィアンは父から託された手紙を差し出した。
「父から、あなたへ」
将軍は手紙を読み、涙をこぼしながら彼を強く抱きしめた。
「ありがとう……忘れずにいてくれたんだな」
「将軍、そろそろ離してもらえますか……」
将軍は照れたように手を離す。
「コルヴィアン。私と君の父は、親友だった」
「そうだったんですか……知りませんでした」
「明日の朝、またここへ来なさい」
「なぜですか?」
「レモリア学院の入学試験を受けてもらう」
「えっ!?」
コルヴィアンは声を上げ、子供のように手を上げた。
(本当にそっくりだな……フランク)
「将軍、友人も一緒に受けさせてもいいですか?」
「誰だ?」
「メラティという少女です」
「いいだろう。明日一緒に来なさい」
コルヴィアンは敬礼し、宿〈クラウド〉へと戻っていった。
「必ず守る……君の息子を」
リム将軍は手紙を握りしめ、遠ざかる背中を見つめ続けた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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これからも物語を大切に書いていきますので、よろしくお願いします。




