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聖女ヒマリは告白の意味がわからない -鈍感聖女とツンデレ勇者の恋愛事情-  作者: 柚子猫


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7.ツンデレ勇者は、恋の誤解に埋もれる

<勇者ノイシュ目線>


 一週間。

 ヒマリと俺の“仮結婚生活”が始まってから、もう一週間が経った。

 いや、普通なら甘酸っぱい新婚イベントの一つや二つあってもいいだろう?

 なのに俺の場合――ただただ、拷問の日々だった。


 理由は単純。

 彼女が、俺がエリシアを好きだと本気で勘違いしているからだ。

 ……マジで、笑えない状況だ。


「なぁ、リオ。ちょっと相談がある」

「え、勇者サマがあーしに? めずらし~じゃん」


 俺は珍しく頭をかきながら、隣に座るリオに向き合った。

 軽口叩く余裕なんてない。真剣だ。


「……ヒマリがな。俺がエリシア姫のこと好きだって、本気で信じてやがるんだ。毎日笑顔で『エリシア様って素敵ですよね!』って力説してくるんだぞ? 地獄かよ」

「まぁね~。陽葵ひまりってさ、人の恋応援するの大好きっしょ。自分じゃ気づいてないけど」

「……毎日ニコニコしながら“応援係”される俺の身にもなれよ」

「で?」


 リオの冷静すぎる一言。

 くそ、聞いてくれるだけで救われると思ったのに。


「で、ってお前な……好きな人と同じ部屋で寝泊まりして、なのに“お前が好きなのは別の女”って決めつけられてるんだぞ。なにもしない新婚生活とか、もはや拷問以外の何物でもない!」

「ふぅん……陽葵から聞いてたけどさ。でも、勘違いされんのって、勇者サマの行動のせいもあるんじゃね?」


 リオの目がジトッと光った。嫌な予感しかしねぇ。


「……たとえば“お姫様抱っこ事件”。」

「ぐっ……!」


 彼女が指を折りながら淡々と数える。


「魔物に襲われて転んだエリシア助けて――仕方なく抱っこしたんでしょ? でもそれ、どう見てもラブイベじゃん」

「ち、違ぇんだ! 他に方法なかったんだよ!」


 俺は机をドンと叩き、必死で否定する。だがリオの冷たい視線が突き刺さった。


「はい、言い訳きた~。じゃ、“涙を拭った事件”は?」

「っ……!」

「エリシア泣いてたからって、ハンカチで涙ふいてやったんでしょ? 女子から見たら完全に“特別扱い”。勘違い度MAXだし」

「や、やましい意味はねぇ! 放っとけなかっただけだ!」


 俺は頭を抱える。クソッ、全部誤解される行動にしか見えねぇ……!


「“ダンス練習事件”は?」

「そ、それは……! 王様に頼まれて舞踏会の前に、ちょっとだけ手を……っ!」

「手つないで、腰に手まわして“ちょっと”ねぇ。はい、アウト~」

「ぐぅぅ……!」


 たまらず椅子から立ち上がり、部屋をウロウロ歩き回る。リオは焼き菓子でもかじってるみたいな余裕の顔で俺を見ていた。


「まだあるよ。“夜の庭園で二人きり事件”」

「いや、それは本当に魔物の気配がして――!」

「でもさ、月夜の庭園で二人きりでおしゃべり。そりゃヒマリの少女漫画脳なら“恋確定”って思うわけよ」

「~~~~っ!」


 俺はその場にガクリと崩れ落ちた。精神が削られていく……。


「最後。“手を取って誓った事件”」

「……ッ!」

「『必ず守る』って言ったんでしょ? しかも手まで取って。それもう告白かプロポーズじゃん」

「そ、それは国と王族を守る誓いで……!」

「はいはい。むしろ勘違いされない方が奇跡ね」


 リオが肩をすくめる。

 ぐぅぅぅ……反論できねぇ!


 しかもだ。俺にはさらに屈辱的な“直接伝えたのに伝わってない事件”がある。


「夜さ、ランプ消す前に“俺は、お前のことが……”って言いかけたんだよ」

「おお、勇者サマにしては攻めたじゃん」

「そしたらニコッとして“わかってますよ、勇者様!”って。……わかってねぇ!」

「ぷっ……アハハ、マジ草」リオが吹き出した。


「あと庭で花を見つけて“お前に似合いそうだ”って渡したんだ。そしたら――」

「どうせ」

「“わぁ、これエリシア様も好きそう!”だと! いや、お前に渡してんだよ!」

「ぷっ、出た出た! 陽葵の“他人推し体質”! 人の恋応援してる方が楽しいんだよ、あの子は」


 本気で泣きたい。俺の気持ち、どこに行ったんだ。


「で、結局さ――あんたは陽葵にどうしたいわけ?」


 リオの問いに、俺は唇を噛んだ。

 ここで誤魔化してちゃ、もうダメだ。

 胸の奥にしまっていた言葉が、勝手に飛び出した。


「……好きだし。仮や白い結婚なんてごまかしじゃなく、本気で触れ合いたい。だきしめたい」

「……ッ!? ちょ、勇者サマ急に直球すぎ! エグいんだけど!」


 顔を真っ赤にしたリオがドン引きする。

 でも俺は引かない。むしろ前に出る。


「好きな人とそういう関係になりたいのは、当たり前だろ!」


 声が、少し震えていた。

 でもそれが本音だった。


「……」


 その時だった。

 ふと横から視線を感じて振り返ると、アルバートが立っていた。


「……そうか。勇者殿は……」


 一瞬だけ、彼の表情が曇った。

 けれどすぐに笑みに変わる。

 寡黙な彼が静かに言葉を落とした。


「……リオが幸せなら、それでいい」


 そう言って、背を向け歩き去っていった。


「え……? アルバート、どうしたんだろ?」


 リオがきょとんと首を傾げる。

 気づいてねぇ……やっぱり。


「ちょっ、まさか……誤解されたんじゃ……!?」


 俺は慌てて立ち上がった。

 くそ、よりによってあのタイミングで!


 俺の誤解人生、まだまだ続きそうだ――。

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。

明日も2~3話更新予定です。


「面白い」とか

「続きが読みたい」とか、もし思っていただけたなら。

ブックマークや画面下の「☆☆☆☆☆」から評価を頂けるとすごく嬉しいです。


お手数だと思うのですが。

すごく、すごく励みになるので、よろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコ


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