表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女ヒマリは告白の意味がわからない -鈍感聖女とツンデレ勇者の恋愛事情-  作者: 柚子猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/51

34.鈍感聖女は、涙のあとで真実を見つける

 翌朝。

 お城の鐘が三回鳴って、城下町がどよめいた。

 広場に置かれた魔導拡声石からは「勇者ノイシュ様と第一王女エリシア様、正式に婚約を発表されました――!」って、ずっと響いてる。

 紙吹雪が舞って、子どもたちが号外を振り回しながら走っていく。天幕には白薔薇の紋章。


 そう、願いは叶ったんだ。

 勇者様とエリシア様が並んで婚約。私がここに呼び戻された意味も、ちゃんと果たせた。


 ――はず、なのに。胸の真ん中がスカスカで、昨夜からずっと冷たい風が抜けてるみたい。

 勇者様は結局、部屋に戻らなかった。婚約の準備で忙しかったんだろう。……そう思う方が自然。そう言い聞かせてる。


「はぁ~~……」


 ベッドの上で枕を抱きしめてごろごろ。転がったって状況が変わるわけじゃないのに、体が勝手に転がっちゃう。


 とん、と小さな音。

 ドアがちょっとだけ開いて、ピンクのポニーテールがひょこっと入ってきた。


「ちょっとちょっと~! 陽葵ひまり、朝からその顔はナシでしょ? せっかくの可愛い顔が泣き腫らしとか、マジもったいなーい!」

「……可愛いは余計だから」

「余計じゃなーい。むしろ事実~。でもさ、失恋少女モード全開ってバレバレだし?」


 ずかずか入ってきた莉央に、ぐいっと腕を引っ張られる。

 洗面台で顔を洗うと、鏡の中の私の目はちょっと赤くて……思わずうつむいた。


「ね、勇者がエリシア様を選んだ――それ、陽葵も頭ではわかってるでしょ?」

「……」

「でもさ、顔が全然納得してないんだよね。図星っしょ?」

「……莉央りおって、ほんと意地悪」

「親友の特権~。それに、泣きたいときは泣けばいいんだって。昨日も言ったけど“泣いていい券”は今日も有効!」

「ふふっ……もう」


 つい笑っちゃった。笑っただけなのに、胸がちょっと軽くなる。


「ありがと。ねえ、莉央」

「ん?」

「私、この世界での役目……ちゃんとやり切れたのかな」

「やり切ったに決まってんじゃん! 陽葵が“橋”になったから、二人はこうして婚約まで来たんだよ。マジで超クリア!」


 胸がじんわりあったかくなる。

 莉央はぱん、と手を叩いてにやっと笑った。


「でさ、異世界ライフもお腹いっぱいだし~。あーしも一緒に帰っちゃおっかな!」

「えっ……! でも、アルバートさんは?」

「アルっちは仲間枠。それ以上でも以下でもナシ! で、今の最優先は陽葵だから~安心しなって」


「莉央……」

「なぁに?」

「ほんとに、ありがとう」


 胸の奥が熱くなる。

 莉央は鼻をかきながら、ちょっと照れくさそうに笑った。


「帰ったらまずカフェ巡り再開! 限定いちごパフェと、あとプリクラね! “勇者沼卒業記念”ってでっかく書いてさ」

「ちょ、やめて! それ刺さるから!」

「じゃ“また恋します宣言”で可愛く盛ろっか~」

「……それなら、少しアリかも」


 二人でふふっと笑った。笑いながら、私は心の中で決める。

 この世界での役目は終わった。だから――ちゃんと区切りをつけるんだ。


「ねえ莉央。帰る前に……最後に街を見に行かない?」

「賛成! しめは映えスポットで絶景ショットだね~」

「映えはいいから……ちゃんと、目に焼き付けたいの」


◇◆◇◆◇


 身支度を整えて廊下に出ると、待っていたセリーナが元気いっぱいの声で笑った。


「ヒマリ様、朝のお散歩ですかっ? はいっ、蜂蜜サンドと温かいお茶どうぞ!」

「ありがとう、セリーナ」

「えへへ、任せてください! ――あ、広場の号外も持ってきますね~!」


 ぱたぱた戻ってきたセリーナの手には大きな新聞。

 ――勇者と姫、正式婚約。

 何度見ても、現実なんだって胸に突き刺さる。


 螺旋階段を登り、空中庭園を抜けて、鐘楼の見晴らし台へ。

 朝の風が頬を撫で、莉央のポニーテールがきらきら揺れた。


「わぁ……きれい」


 城下の街並みが一望できた。新しく敷き直された石畳が朝日に白く光っている。

 私は思い出す。

 ――詰所の掲示板で渦に見えた見回り経路。

 ――角度を変えて据え直された道標石。

 ――路地に残った黒い線。

 ――工事区画の赤い印の弧。

 ――昨日と違った曲がり角。


 それらを街に沿って視線でなぞると、線がつながって――。


「……莉央」

「ん?」

「これ、円になってる」


 白い通りが大きな輪郭を描き、広場や橋が星みたいに配置されている。

 朝の光に浮かぶのは――街そのものが描く図形。


「……魔法陣?」

「うん。そうとしか、見えない」


 口にした瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 復興工事は街を直すためじゃなく、何かを“描く”ため……?


 莉央が私の手をぎゅっと握った。

 いつもみたいに茶化さず、まっすぐな目で。


「陽葵。帰るのは、ちょい保留だね」

「……うん。私も、今はそう思う」


 街のどこかで槌の音がカン、と響く。

 それがまるで、この巨大な図形全体に反響していくようで。


「確かめよう。これが何なのか。どうして描かれてるのか。……私たちで」


 泣いてばかりの私じゃない。

 “橋”はもう終わった。次は――“解く”側に。


 朝の風が吹き抜け、白い花飾りがかすかに揺れた。

 隣で莉央がにっと笑う。


「オッケー相棒! じゃ、今日の寄り道は街のナゾ解きツアーだねっ」

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。

明日も更新予定です。


「面白い」とか

「続きが読みたい」とか、もし思っていただけたなら。

ブックマークや画面下の「☆☆☆☆☆」から評価を頂けるとすごく嬉しいです。


お手数だと思うのですが。

すごく、すごく励みになるので、よろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ