24.大魔法使いは、恋を見逃さない!
<大魔法使い 莉央目線>
最近、陽葵の様子がおかしい。
ちょっとしたことで顔を赤くしたり、ふわっと笑ってみたり、かと思えば突然ぼーっと空を見上げたり。
「アルっち、あれ絶対“恋してる”ってやつだよね? あーしの目はごまかせないんだから!」
神殿近くのカフェの影からヒマリを観察しつつ、隣のアルっちに囁いた。
「……だったら本人に聞けばいいだろう」
返ってきたのは相変わらず真面目すぎる答え。
「いやいやいや! そこがダメなんだって! 親友だからこそ言えないことってあるじゃん? あーしだったら絶対ムリだもん」
「……逆だろ。親友だからこそ相談するんじゃないのか」
「アルっち、わかってないなぁ~! 女心はミステリーなんだよ! あーし探偵、真実を暴いちゃうんだから!」
「……何の探偵気取りだ」
「よし! “恋するヒマリ大調査隊”の結成だぁ!」
拳を握りしめて宣言すると、アルっちは呆れ顔で眉を押さえながらもしぶしぶついてきてくれる。優しいんだからもう!
◇◆◇◆◇
というわけで尾行開始。
まずは神殿帰りの陽葵を追跡することにした。
荷物を抱えて歩く背中はなんだか軽やか。仕事終わりなのに足取りが弾んでいるのは、どう見ても普通じゃない。
「ほらほら! あれ完全に“幸せオーラ”出てるって! あーしのアンテナにビビッと来てるし!」
「……疲れてふらついているようにも見えるが」
「ちがうの! あれは“恋でふわふわ”のやつ! 間違いないって!」
力説すると、アルっちは深いため息。
でも、ちゃんと一緒に物陰に隠れてるあたり、なんだかんだでノリノリじゃん!
大通りの角で、通行止めの柵にぶつかった。
石畳は半円状に新しい石がはめ込まれ、白い粉で描かれたチョークの線が路面にいくつも走っている。矢印、円弧、等間隔の印――ぱっと見、幾何学模様みたい。
「工事、多いね最近。復興ってやつ?」
「魔王との戦いで傷んだ区画の再舗装だ。排水路の付け替えも同時にやっているらしい」
「ふーん……なんかさ、模様がでっかい魔法陣に見えない?」
「見えない」
「即答ぉ!? まあいっか、陽葵見失うとこだった!」
迂回路をすり抜けると、パン屋の甘い香り。
店から出てきた陽葵の手には、小さな紙袋。書類や薬草袋の上に重ねて、胸の前でぎゅっと抱えている。
「ねぇアルっち! あれ完全に“差し入れ”だよね!? あーし知ってるもん!」
「……自分で食べる可能性もある」
「甘いな……いや甘くないけど! 恋してる女の子は“特別な人にあげる分”を買うんだってば! 雑誌に書いてあったし!」
「お前はどこで仕入れたんだその理屈」
「恋愛雑誌!」
胸を張ると、アルっちはこめかみを押さえて空を仰いだ。
夕暮れ。陽葵は噴水広場で腰を下ろした。
風に揺れる髪を耳にかける仕草が妙に女の子らしくて、見ているあーしの心臓までどきっとしてしまう。
そのとき、陽葵の指先が耳元に伸びた。
触れたのは、勇者サマから贈られた白い花の髪飾り。そっと撫でて、ほんのり微笑む。
「……出た! 決まりだわ! あれ完全に“恋する乙女スマイル”だって!」
「……あの笑みは、確かに何かを想っている顔だな」
「でしょでしょ!? もう勇者サマ一択じゃん! あーし大勝利!」
思わずアルっちとハイタッチ。彼は渋い顔をしながらも、手を合わせてくれた。
が――次の瞬間。
陽葵がくるっと振り返り、にこぉ……と笑顔。けれど、その目は全然笑ってなかった。
「……さて。これはなにしてるのかなーー?」
うわぁ、絶対怒ってるやつ!
「ひぃぃ! バレたぁ! あーし死んだ!」
「……だから言っただろう、やめておけと」
「いやいやアルっちだってノリノリだったし!」
「そんなわけないでしょ!!」
ジト目が突き刺さる。冷や汗が止まらない。
でも――頬がほんのり赤く染まっているのを、あーしは見逃さなかった。
「ふーん……やっと、そういう顔をするようになったんだ」
大好きな親友が恋をしてる。
その確信で胸がいっぱいになる。
「よーし! あとは勇者サマ、がんばれー! あーし応援してるからね!」
拳を突き上げると、アルっちはいつもの無表情のまま、小さく頷いた。
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