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聖女ヒマリは告白の意味がわからない -鈍感聖女とツンデレ勇者の恋愛事情-  作者: 柚子猫


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20/51

20.鈍感聖女は、デートを討伐だと信じている

「ヒマリ、遠くに出かけるぞ」


 唐突にそんなことを言い出す勇者様。声がいつもより硬い。

 私は書きかけの治療記録から顔を上げ、ぱちぱちと瞬きをした。


「えっ? 魔物討伐ですか?」

「し、新婚旅――いや、なんでもない!」


「………………え?」


 勇者様の口から飛び出した単語に、私は思わず固まった。

 し、しんこん……? 今、“新婚”って言いかけたよね!?

 ――いやいや、そんなはずない! きっと聞き間違いだ。

 うん、絶対そう。勇者様が言いたかったのは“討伐”!


「三日後。おまえ、時間あるだろう」

「は、はい。神殿のお手伝いもその日は入ってませんけど……」

「そ、そうか。じゃあ決まりだ。目的地までは馬車で三日。準備しておけ」


 ぷいっと顔をそむけ、聖剣をやたら強く握りしめる勇者様。

 ……うん、この雰囲気。どう考えても大きな討伐に備えて気合を入れてるんだ。


◇◆◇◆◇


 三日後、王都の門前。

 勇者様が馬車の前で絶叫した。


「なんでおまえらがいるんだ……!」


 こめかみがぴくぴくしてる。

 そこには当然の顔で並ぶ、莉央りお、アルバートさん、セリーナ。


 私はにっこり笑顔で手を挙げた。


「討伐の旅なんですよね? だからみんなにも声をかけておきました!」

「……ヒマリに討伐と聞いたからな」


 アルバートさんが短く補足。


「みずくさ~! あーしたちも当然でしょ!」


 莉央はにやにや。杖をぶんぶん振っている。


「そ、それとも? 勇者ってばヒマリと二人っきりで旅行したかったとかぁ?」

「ばっ、ばか! ちがう!!」


 勇者様、必死の否定。顔が真っ赤。

 ……いやいや、莉央はまた冗談言ってるんだ。勇者様がそんなこと考えるわけない。


「勇者様がそんなことするわけないですよ!」


 すぐさま勇者様をかばった。だって勇者様はエリシア様一筋。

 私はその応援役でしかないんだから!


「それにしても勇者の恰好なに? 鎧は?」


 莉央が首をかしげる。

 勇者様は鎧を外し、黒の軽装に聖剣一本。どう見ても“討伐装備”というより“街歩きのデート服”。


 対して私たちは完全に冒険仕様。

 アルバートさんは分厚い鎧に大盾を背負い、どっしりとした存在感。

 莉央はギャル風の魔導ローブに短めスカート、ピンク髪を高いポニテにまとめ、じゃらじゃらとした装飾をゆらゆらさせている。

 セリーナは可愛い冒険者風のチュニック姿で、腰には短剣と魔法剣を下げて元気いっぱい。

 そして私は、久しぶりに袖口や裾に白いフリルがあしらわれた聖女ローブ。


「こ、これは鍛錬だ! 聖剣一本で十分だからな!」

「へぇ~? そっかぁ~?」


 莉央の声が明らかに疑ってる。

 勇者様は一瞬だけ落ち込んだ顔をしてから、すぐにツン顔に戻った。

 ……うん、きっと討伐の責任を思って気負ってるんだ。勇者様、やっぱり立派!


◇◆◇◆◇


 夜。森の中での野営。

 焚き火を囲んでの夕食がひと段落すると、ぱちぱちと薪のはぜる音だけが響く。

 その静けさを破るように、勇者様が立ち上がった。


「今日の見張りは俺がやる」

「二人一組じゃないと危ないですよ!」


 私は慌てて声を上げる。


「だ、大丈夫だ。俺は強いからな」


 強がる勇者様に、すかさず莉央がニヤニヤ顔で突っ込む。


「なにそれ~。“陽葵ひまりに心配してほしいアピール”じゃん?」

「ばっ、ばか! ちがう!!」


 勇者様、耳まで真っ赤。


「ほらやっぱり! ラブラブなんですー!」


 セリーナは瞳をきらきらさせながら、ノートに“観察日記”のようなものを書き込んでいる。

 ……え、なにそれ? 討伐の記録……にしては、やたら嬉しそうなんだけど!?


「セリーナ、なに書いてるの?」

「ヒマリ様と勇者様の日常観察ですっ!」

「観察!?」

「はい! お二人の尊い瞬間を記録に残さなきゃって!」


 えぇぇ!? それって私と勇者様がまるで本物の夫婦みたいじゃん!

 私は慌てて否定しようとしたけれど、横から莉央が口を挟む。


「わかるわかる~。ツンデレ旦那と鈍感奥さんってやつでしょ?」

「だ、旦那!?」

「お、俺はそんなつもりじゃ……!」


 勇者様まで慌てて否定してるけど、顔が真っ赤すぎて説得力ゼロ。

 もうやめて! 私の心臓までつられてばくばく言ってるんだから!


「……勇者の気持ちは見えてる」


 焚き火の炎越しに、アルバートさんがぼそっとつぶやいた。

 その目は妙に優しくて、なんだか全部わかっているみたい。


 私はそっと勇者様の横顔を盗み見た。

 焚き火に照らされたその表情は、強がりに隠れているけれど、どこか不器用で……胸の奥がじんわり温かくなる。


 魔王を倒しても、魔物が世界から消えたわけじゃない。

 ただ、もうあの頃みたいに組織的な脅威ではなく、野生の熊みたいにときどき人を脅かす存在になっただけ。

 それでも勇者様は、危険がある限り剣を握り続けている。


 ――うん。久しぶりに“勇者パーティー”のみんなで出かける討伐なんだ。

 そう考えただけで、なんだか楽しくて、心が少し弾んだ。

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。

明日も更新予定です。


「面白い」とか

「続きが読みたい」とか、もし思っていただけたなら。

ブックマークや画面下の「☆☆☆☆☆」から評価を頂けるとすごく嬉しいです。


お手数だと思うのですが。

すごく、すごく励みになるので、よろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコ


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