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ご迷惑をおかけして、申し訳……ぇぇぇぇえ!!??


 ***



「……あれ?」


 気が付くと、見知らぬ天井があった。その天井は、たくさんの木枠で四角に区切られていて、四角の中には一つ一つ花が丁寧に描かれている。


「ここは……」


 自身の失態を思い出し、無意識に頭を抱えた。 散々泣いたあとの寝落ち。幼い子でもあるまいし、何て迷惑な。会わす顔がない。

 だけど、心配してくれているだろうから、早く起きたことを知らせないと。


 出会ったばかりだけど、白樹さんたちの優しさは本物だ。打算を感じない。

 こんなに手放しで誰かを信用できたのなんて、子どもの頃以来かもしれない。なんて優しい世界だろう。



「まずは白樹さんに会って、謝らないと」


 そう呟けば、ベッドの上に、ドカンッ! とピンクのドアが出現した。金木犀(きんもくせい)の香りが漂うなか、驚きで固まっていると自動で扉が開いていく。



「え、嘘でしょ? ちょっと待って」


 ドアは私の言うことなど、ちっとも聞いてくれない。あんたが会いたがったんでしょ? とでも言ってきそうなほどに容赦なく開かれた扉。


 白樹さんの後ろ姿が見える。


 何を言うのかも決めていないのに、早すぎる。まだ、ドアのことを呼んでなかったのに……。


「あの──」

「……真理花?」


 扉を一歩(くぐ)って私が声をかけたのと、白樹さんが振り向いたのは同時だった。


 顔を見た瞬間、温かかった白樹さんの体温を思い出し、ぶわりと体が熱くなる。

 人の温もりをあんなに近くで感じたのは、思い出せないほどに久しぶりだった。それに、落ち着いた、安心感のある匂い。あれは、なんの香りなのだろう。


「ご迷惑をおかけして、申し訳……ぇぇぇえ!!??」


 頭を下げた一瞬で白樹さんは私の目の前まで移動すると、なんと私を抱き上げたのだ。


「急に動いてはいけない」

「えっ? えぇっ!?」


 白樹さんにお姫様抱っこをされたまま、私は元いた部屋へと戻るとベッドにそっと降ろされた。


「あの?」

「どこか具合が悪いところや、痛いところはあるか? そうだ、医者を呼ばなくては。それから……」


 何だか、白樹さんが慌てている。


「特に体調不良はありませんので、お医者さんを呼んでもらうほどでは……」

「何を言っている。目を覚まさなかったんだぞ」


 とは言っても、長くて半日くらいかな? ちょっと大袈裟な気はするけど、それだけ心配をかけちゃったってことだよね。


「どのくらい寝ちゃってましたか?」

二月(ふたつき)だ」


 え? 二月(ふたつき)? いくら何でもそんなことって……。


「嘘……ですよね?」

真実(まこと)だ」


 白樹さんの真剣な表情に、息をのむ。


 そ、それは慌てるわ。でも、ずっと寝てたわりに体は普通に動くし、のどがカラカラで声が出ないとかいうこともない。


「あの、ずっと寝てたのにこんなに元気なのって、こっちでは普通のことなんですか?」

「体が休息を求めていたのだから、元気になるのは普通のことだろう? だが、二月(ふたつき)も眠り続けるなんて、いくら何でも長過ぎる。いや、元々の体の作りが違う可能性も……」


 途中から独り言のように小さな声になってしまったので、全部は聞き取れなかった。だけど、この世界では長く眠っても体に支障はないらしい。

 うーん、ファンタジー。



   ***



「大丈夫よ。特に問題はないわぁ」

「ありがとうございます、ドクター」


 私は今、お医者さんの診察を受けていた。彼女はドクターと名乗っているのだそうで、私もみんなに(なら)ってドクターと呼ばせてもらうことにしたのだ。


「花ちゃんも大変ね。こんな朴念仁(ぼくねんじん)の花嫁だなんて」 「いえ、良くして頂いてます」

「そうかしら。来て早々の花嫁に力を使わせるなんて、あたしからしたらクズよ、クズ!」


 編み上げのブーツの(かかと)でドクターは白樹さんを蹴っている。

 それを見て、ブーツあるんだ……なんて関係ないことを思う。みんな着物だからさ。私が今着ているのも浴衣みたいのだし。

 ドクターは(はかま)だ。赤と白の椿柄に黒い袴、えんじ色のブーツ。派手だけど、すごく似合っている。迫力のある美女とは彼女のような人をいうのだろう。


「それと、さっさと花ちゃんのために女性の医者を見つけなさいよね」

「ドクターより信頼できる医師はいない」

「うっ……。それは嬉しいけど、だめよ。女性相手の方が花ちゃんも安心できるでしょう?」


 ん? 女性相手? ドクターも女性……だよね?


 でも、そう言われてみれば、ドクターの身長が白樹さんくらいある? 白樹さんの身長って百九十センチくらいありそうだったよね。それに、何だか肩幅も(たくま)しいし、喉仏(のどぼとけ)もある。

 声もハスキーで色っぽいな……って思ってたんだけど。ん? んんんんんー?


「あの、ドクターって女性じゃないんですか?」


 そう聞いたときのドクターの嬉しそうな顔。これが答えだった。


「そう見える? そう見えるぅ? んふふふふ、そうよね。やっぱり、あたしは美しいわよねぇ。わかるわぁ。間違えちゃうわよねぇ。この格好も言葉遣いも趣味なのよ」


 なるほど  すごく似合っていて素敵だ。


「あまりに美人さんなので、気付かなかったです」

「もう、本当にいい子ねぇ。(はく)なんかにはもったいないくらい」


 よしよしと頭を撫でられる。なんか、子ども扱いされてる? そんな年齢でもないんだけどなぁ。

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