永遠の別れと真実
一息つく暇もなく、師匠にイレーネが捕まる。
確かに魔法を施したはずだが、師匠は魔法消去の魔法を使っており、無効化にされていた。師匠は、イレーネが着替えた姿を観ると発狂し始める。師匠を首を掴み、廊下へ投げ捨てる。
師匠の着せ替え人形にされていたのだと察する。
「さすがにあれは俺でも引くわ」
イレーネは、ずっと俺の左手を握っていた。
その手は、手汗が逢えないほど出ており、震えていた。
相当怖かったのだろう。
「後できつく言っておくから」
と言うとイレーネが、左手から手を退けその場でしゃがんだ。
ちょうど腰あたりにあった頭を撫で回そうとすると、イレーネがずっとこっちをみたいたのにきずき、寄り添っていた手をどける。
イレーネが、退けた手を自分の頭にのせる。俺はその撫で回した。
2日後
何故か師匠のイレーネのメイド服作戦のせいで、イレーネが俺のメイドとして雇うことになった。何も言葉を発せないためそれが理解出来る俺が適任だと言うのだ。納得だが、イレーネが部屋にいる度ずっと彼女の方を見てしまう。視線を感じたのか俺に近づき、じっと見つめる。
「すまん。な、なんでもない」
と言うとイレーネは、仕事を終え部屋を出て行った。
完全に師匠の策略にハマった事を気づくのに2日掛かってしまった。
なんでも師匠を問いつめた所、早くくっ付けのとこだ。
それが出来ないのだと言い張るが、そんなのどうにかしろと言われ泣く泣く受け入れる。
大きなため息を1回吹くと、イレーネが部屋の扉からこっちを覗いていた。かなり動揺していたのか言葉が出てこない。
「私を殺してください」
イレーネが部屋に入ってきて一言目がこれだった。
突然の事で頭が回らなくなる。記憶が戻ったのだろうと理解しようとする。しかし、イレーネが自分の右胸に俺の手を運ぶ。
俺の手で殺せということらしい。
「すまんが、それは出来ない」
「そうですか…」
するとイレーネが俺を1度抱きしめるとどこかへ走っていくのだった。
その後イレーネが起こした行為が魔界全体に広がるとは誰も知らない。
城内がまた騒がしくなる。
メイド言わくなんでも部下達が乗り込んできたらしい。
王の間で部下たちを待つが全く来ない。
「お待たせしました」
1人のメイドが入ってくる。その後ろから師匠と共にイレーネが入ってきた。何してんだあいつらと思いながら王座でふんぞり返る。
王とはめんどくさいものだ。そういう言えば、部下たちにイレーネが声を取り戻した事を伝えていた事を思い出す。
ぞろぞろ列をなし部下達が入り込んでいく中、その中には元婚約者の姫がいた。2度見して疑いの目で見つめるが目が合った時こっちに笑顔を振る。
「準備が完了しました。魔王様」
「と言われても、なんの会議だよこれ」
疑問に感じると、メイド達が笑い出す。イレーネもその中にはいた。
師匠が王座の間の扉から巨大ケーキを空中にうかべて運んでくる
本当に秘密りに企てられていた俺の誕生日会だということがわかった。
サプライズがかなり上手い部下たちは毎年のように言わう。
それが15世代交代しながらも、師匠だけはケーキを運ぶ役は誰にも譲らなかった。
「誕生日おめでとう。バカ弟子」
「ありがとうございます。師匠」
この会話と共に皆一斉に拍手をしだし、師匠は巨大な皿に宙に浮いたケーキをおく。それぞれ部下やメイド達がプレゼントを渡しながらおめでとうと言う。そしてイレーネが最後に回ってくる。師匠がにやけていた。
「セイル。ありがとね」
イレーネはその一言を言うと、その場から消えた。
これも何かのサプライズだと思い、何も感じずにいたが、皆が黙り込む。
皆が一斉に暴れ出す。イレーネが消えたことが異常事態だとわかると俺はあちこちを魔法で探し出すが反応がない。イレーネに与えた部屋へと向かう。そこには、壁の隅から隅間で呪文のようなものが描かれていた。
「どういう魔法だこれ」
解析にあたると、この魔法がイレーネが消えた原因だということがわかる。イレーネの部屋を漁る。机のタンスの中に俺宛の手紙が入っていた。
引っ張るが開かず、魔力を込めると破け、イレーネの声が聞こえてくる。
『これは魔王セイルへのメッセージです。ごめんなさい。皆私が消えて焦っているでしょう。なぜ消えたのかをここに記します。禁忌の魔法にはデメリットとしての効果が3つあります。それは記憶喪失、発声が出来なくなる。1週間後この世から消えるというものでした。セイル様には真実を言います。私はあの村で虐待にあっていました。両親は私がこの姿になった日、姉と共に私のものを離れました。私は寂しかった。村の人に構ってもらおうとしたのですが、皆私を恐れ追い出されて、虐待にあいました。私は、彼らを恨みました。毎日恨み「いつか皆が死にますように」と神に願った日。あなたが現れたのです。私はあなたの姿を見た時驚きを隠せませんでした。村の皆が死んだ時私は笑っていたのです。あなたをじっと見つめ立ち去ったあと、私はあなたを追いかけました。私をその手で殺して欲しいと思うようになっていました。本当は死にたくないはずなのに何故でしょうね。私はこのことを呪いだと分かり、自殺を測ったのです。ごめんなさい。そしてありがとう、こんな私のために泣いてくれて……じゃあまたいつか by 貴方のイレーネより。』
読んでる中、涙が止まらなくなり胸が苦しくなる。
どういう感情なのか分からない。たが、イレーネがいないのは嫌だと確信に至る。
手紙の欠片をポケットに入れ、セイルはその場から消えるのだった。