消えた記憶
気がつくと自分の部屋だった。
辺りを見渡し、ベッドから起き上がる。
何も無かったようにいつものルーティン。
「ねむ……」
あくびをしながら着替える。
自分の部屋を後にし、図書室へと向かう。
司書にお辞儀されながら、本を探す。
見つけたと思ったが全然違った…。
ため息が出る。
廊下で物音がなる。
覗き込むと、メイド姿のイレーネが転んでいた。
「イレーネ、お前なぁ…。」
頷くと、そのまま一礼してその場から霧となって消えた。やはり、イレーネも吸血鬼になっていることがわかった。
「お主、ここでイレーネ見なかったかの?」
師匠が空中に浮きながら聞いてきた。
「相変わらず変なことしてますね」
「うるさいわい! それでイレーネは…」
「向こうへ行きました」
「うむ。助かる」
俺が答えると猛スピードでどこかへと消えてしまった。俺の背中で張り付いているイレーネを見て意味深だった。
「なにかされたのか?」
イレーネが首を横に振る。
何も無かったらしい。
ならなんで師匠が追いかけ回してるのか……。
「俺の事覚えてるか?」
再度首を横に振る。
蘇生時に何らかの影響で声と記憶を失ったようだ。
禁忌はそれほど代償が大きい。
「まぁいい。こっち来い」
イレーネの左手を引っ張り、自分の部屋に連れ込む
ちょこんと部屋の隅で座っているイレーネ。
タンスから女物の着替えを取りだしイレーネに渡す
1度首を傾げるが理解したのか着替える。
その頃俺は着替えを見ないように後ろを向いていた
「そういえばなんでメイドやってたんだ?」
まだ着替え途中なのか反応がない。
背中に服が当たる感触がある。
振り向きたい願望を我慢する
10分ぐらいが経つ。
背中にイレーネが抱きつく。
「何してんだ……」
嬉しそうにスリスリしてくる。
大丈夫なのかこれと不安になってきた矢先、師匠が部屋の窓を割って入ってきた。
「確保ぉぉぉぉ!」
大声を出していたため驚いているイレーネ
すぐさま師匠の動きを封じる。