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2話 私を殺して

魔界に帰ると、部下達に見つからないようそっと自分の部屋に入った。

3畳ほどあるキングベットにイレーネを、ベッドに横だわせる。

布団を掛け廊下の方へ立ち去る。


「疲れた……。」


独り言がつい出てしまう。

今日のことを振り返っている最中、俺をじっと見つめている魔族が居た。


「お主から人間の匂いがする。どうしてじゃ?」


小柄ではあるが、真祖という呪いで不老不死となって約2000年の時を生きる賢者 アリス・メルクール。俺の真祖になる前の師匠であり母親だ。

なぜ、母親なのかは、元々俺は人間だった。

師匠の気に入られ、真祖の仲間入りになって約1500年の時が過ぎていた。


「腹が減って人間を襲った。悪いか?」

「悪くない。しかし、お主の部屋からも臭うぞ? しかも女じゃ」


師匠の鼻は、1週間経った匂いすら判別出来る。

なぜここまで凄いのかは、よく分かっていない。


「やっぱり、師匠は騙せませんね」

「師匠じゃない、アリス母様とお呼び!」

「嫌です」

「むー」


頬を膨らませる師匠を無視して、自分の部屋の鍵を開け師匠を招いた。

師匠は、直ぐにイレーネの元に向かった。

興味津々の顔でイレーネを見つめ、突然イレーネの服を破り出す。

さすがに見ては不味いと思い部屋を後にする。


数分後………。

師匠が部屋から出てきた。


「治療は大体終わったぞ。あとは目を覚ますのみじゃ」

「そうですか……。」

「でわな」


立ち去ろうとする師匠の左肩を掴み、歩みを止めた。


「なんじゃ? そんな悩んだ顔をして」

「いえ、実は…」


村であった出来事と、イレーネを見ておかしくなった事を話す。

師匠は突然大声で笑いだし、俺の背中を何回も叩いた。


「そうかそうか、1500年でやっと恋に落ちたか」

「恋て、あの禁忌とか書いてあったあれですか」

「そうじゃ、恋をしても我々真祖とは永遠に歩めんからの」


修行時代、師匠から借りた本に恋愛小説と言うなモノがあった。

それにどっぷりハマったが、師匠にみつかり記憶を消され禁忌とされた。

記憶を消されたのかはよく覚えてない。


「師匠は、恋をしたことが?」

「さぁ、どうかの」


師匠は、悲しそうな表情を一瞬見せ小声で誰かの名前を呼んでいた。


「サミエル……」


サミエル。

大賢者と共に世界の崩壊を救ったとされる勇者。

大賢者は、多分師匠のことだろう。

この話はもう忘れさられている。

古代ルーン文字で各地のダンジョンに描かれているが、

現代人は解読不可能と言って諦めているらしい。


この日いつの間にか眠りについていた。

誰かに起こされている。


「あと少し………」


再度体を揺らされる。

まだ寝足りないため、少し力を入れて追い払おうとする。


「早くしないと…………が……テラス………」


所々聞き取れたものの分からない。

夢と勘違いし、また眠りについてしまう。

数分後、辺から悲鳴が聴こえ、目が覚めた。

ずっと起こしてくれていたメイドのメアリーに俺の部屋に連れてかれた。

そこで目にしたのは、イレーネが兵士に床に抑えられている所だった。


「早く殺せ! 私はもう生きる資格なんてない!」


まだ死にたがっている。

兵士に抑えられているイレーネに近づき、裸だった為タンスからバスタオルを出し渡した。


「魔王様。こいつどうしますか?」


イレーネを床に抑えている片方の兵士が聞いてきた。


「とりあえずそのままで頼む」

「分かりました」


婚約破棄した人間の姫に渡そうと思ったドレスをメイドたちに頼み、

イレーネに無理やり着せる。

これで目のやり場に困らなくなった。


「なぜ殺さない! 早く殺せ!」

「めんどくさ、とりあえず眠らせとくか」


スリープの魔法でイレーネを眠らせまた、ベッドに寝かせた。

あちこちから部下達が集まり、説明を求められる。


「なぜそのような娘を拾ってきた」


ドラゴニュートのエルブランが怒鳴りつけてきた。


「仕方ないだろ。食事に行って皆殺してしまったから彼女だけ置いていくのも癪だったんだ」

「なんだその嘘は」


エンシェントエルフのビルーヌが、精霊操り俺の嘘を見抜く。


「まじかよ……。で本当の理由て何だ?」


ドワーフのリークが迫ってくる。


「そんなの決まってるじゃろ。惚れたんじゃよバカ弟子共」


師匠が割って入ってきた。

暴露やめろや、ロリババア…。


「あん? 燃やすぞ弟子」


師匠に心を読まれてしまう

怒り狂った師匠には反抗できない。

他の奴らも師匠の殺気に震え、顔を青く染めあげる。


「どう済んだ? こいつかなり死にたがってるぞ」


リークが先程のイレーネの暴れ具合を知っていた。

確かに村のときかなり死にたがってたなぁ。


「まぁなんとかするさ」

「そういえば、先程から人間の小娘の姿が見えんのだが」


馬鹿な! 魔法で眠らさせたはずなのにベッドからいなくなっていた。

中庭から悲鳴が聞こえテラスから眺めると、イレーネが自殺していた。

その変わり果てた姿を見た途端、なにかが壊れる音がした。


「まてまてまてまて! ここでそれ使うな! 我が友よおおおお」


エルブランが何か言っているのが聴こえる。

しかし、自分の意思が何かに飲み込まれてしまった。


「セイル、さっさと起きなさい!」


生き別れた母様の声が聞こえてくる。

懐かしい。5歳の時捨てられるまでは幸せだった。


「起きんか!バカ弟子!」


師匠にほっぺをビンタされ正気に戻る。

暴走した力で魔王城が半壊状態だった。


「し、師匠……。」


咄嗟に俺はイレーネに禁忌の呪文を行使する。

結果は即時現れるものでは無い。

とりあえず回復魔法で肉体を修正した。


「よくやった。さすが一番弟子じゃ」

「師匠。ありがとうございます」


イレーネの死体の隣でセイルも倒れ込む。

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