① 出会いと始まり
禍々しい空に、禍々しい空気に囲まれた魔界
ある日魔王城にて動きがあった。
「腹が減った」
王座に座りながら、セイルは腹を空かせていた。
全身を覆う黒いマント、がっちりとした体。
肌には何十万ものルーン文字が描かている。
口には、牙が生えている。
セイルは、吸血鬼の真祖であり、魔王でもあった。
禍々しいその姿にあらゆる魔界の元たちはひれ伏す。
人々は、魔王セイルの恐怖の中で日々の生活を送っていた。
あの日までは………。
ある晩、人間の姫という娘が城に訪問した。
娘は、国王からもらった書状にはこうか書かれていた。
『我が娘との婚約をもって平和条約を結ぶ』
ものだった。
娘は、かなりの悪女であり宝物庫に入り金品を盗み、
人間界に攻め入るというデマまで流した。
管理袋の紐が切れたセイルは、娘を人間界へ送り返し、婚約破棄した。
それから3週間が経っていた。
「どうかなさいましたか、魔王様」
執事のマギウスが、独り言を聴いたのかこっちに来た。
腹が減って仕方ない。
「すまない。一時期この場を預ける」
「分かりました。行ってらっしゃいませ」
「うむ」
会話を最後に玉座からセイルは、霧となって姿を消した。
―――人間界―――《アガキの村》――――――
「なんだあれ」
空中で、佇むセイルを観た途端、血相変えてみな逃げ出す。
その背中に捕まり、首元から血を吸う。
その光景は、まさに吸血鬼。
真祖と言っても血は必要不可欠であり、週一度食さねばならない。
そのため、何十人もの人間が犠牲となる。
「き、きゃあああああ………」
逃げていた村人を襲い、血を吸ってる所を少女に見られる。
小柄で、ボロボロな服を着て、綺麗な白髪が目に映った。
腰が抜けたのか、悲鳴をあげた少女は、その場から動かなくなる。
ち、なんなんだコイツ。白髪、邪神の使いか………。
からからになった村人の死体を後ろに放り投げ少女に近寄る。
セイルは、少女の顎に手を差し伸べる。
心臓がバクバクとなり始める。
なんだこれは………。
初めての感覚に襲われ、襲う気を無くす。
少女の顔を見た途端、何故かキュンとなる。
顔が熱くなり、何も考えられなくなる。
セルスは、少女を置いてその場から逃げ出すのだった。
―――死人の森――――《アガキの村周辺》
1本の気に持たれ、落ち着きを取り戻す。
息を切らすのは、魔王と呼ばれるようになる時ぶりだった。
少女の自分を恐れた顔が頭をよぎる。
―――《アガキの村》―――同時刻
ある日、村を1人の吸血鬼が襲いました。
村の人々は、皆血を全て吸われ息を引き取りました。
しかし、なぜか私は彼に見逃されました。
みんなと一緒の場所に行きたかった……。
なぜ連れてってくれなかったの………。
「いや、いやああああああ! 私も殺してよ。吸血鬼!」
少女こと、イリーネは、皆の場所に行くために彼を追う。
そこが強力な魔物が住む森だとしても。
――死の森――
なんだったんだあれは………。
此の世が、かの少女を恐れた?
いやそんなわけない。
ならなんだ。あの気持ちは………。
あちこちから獣が出す音が聞こえる中、悲鳴が聴こえた。
悲鳴の方向にあらゆる魔物たちが一斉に向かう。
セルスは、その魔物達に命令を出す。その場に留まるようにと。
魔物に囲まれ、トレントに捕まっていたのはあの時の少女だった。
「私を殺して……。お願い……皆と同じように私も!」
少女は、俺が姿を表した時言った。
また、心臓がバクバクとなる。
必死に抑え込むも、少女の泣き顔を見た途端。
何蚊に刺されたような感触を味わう。
「悪いが、お前は食うに値しない」
素で返事を返すが、心はすごく焦っていた。
魔王というプライド、1人の男としてのプライド。
その両方が重ね合って出たのがこれだった。
「なんで………なんで! 私が邪神の使いだからですか! それとも私が醜いからですか! こんな私は、死ぬしかないじゃないですか!」
少女は、もがきながら怒る。
醜くない。こんな綺麗な雌、魔界に居ない。
邪神の使い? 邪神て、アルベールのことか?
あいつならとっくの昔に下僕だが……。
「黙れ」
気迫と共に大声を出す。
空気が震え、森の木々が寄れる。
周りの魔物達が尊敬から恐れた表情に変わっていた。
「いいか? 死ぬと絶対に言うな!。それにお前は醜くくない。そんな綺麗な髪は魔界では観れん。だから、お前を残した。俺はお前を魔界へ招待する」
その時、世界の歯車が揺らぐかのように、2人の心が揺らぎ始めた。
恐怖から、不安へ。忠誠から恋へ。
トレントからイレーネを解放すると、イレーネは気絶していた。
イレーネを担ぎ俺は転移魔法で魔界へと赴くのだった。