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夢で殺されて

作者: 月村幸世
掲載日:2022/05/19

物質も空気も何もない真っ黒な世界の中にぽつんと真っ白ななにかが立っている。シルエットだけで言えば五歳児くらいの子供だが、私にはソレを人だと断言することはできない。

「いい加減にしろ‼︎」

どこから出したのかわからない声がその子から私のもとへ届く。「なにが」と私が問おうとしても、その子と同じく私にも口がない。

「お前らはあと何回私を殺せば気が済むんだ!

 何度も何度も何度も…

 次はなんだ?

 病殺か?自殺か?他殺か?

 私はお前らのために死んで、お前の娯楽のためにまた殺される

 もうやめてくれ‼︎」


目を覚ますと背中が濡れていることに気づいた。上体を起こし、シーツに手をやると湿っていて気持ちがわるい。周囲を見渡すと窓から陽光が指していたので今が朝だと分かった。

机の上には閉じた状態のパソコンが置いてある。ベットから椅子に移り、パソコンを起動させる。パスワードは設定していないので、エンターキーを2度叩いてホーム画面にする。

ホーム画面に複数並んでいるアプリの1つをクリックし、そこから『雨少女』というデータをクリックする。画面が開くとなんとも鬱々とした文字列が現れた。これを私は小説として築こうとしている。


「あと何回私を殺せば気が済むんだ!」


夢の中で言われた声が頭の中に響く。あと何回…あの子はいったい誰だったのだろう。殺された?誰に、いつ、なんでニュースになってないの、というかなんで私の夢に出てきたの。

疑問が次々と出てくる。これではこの文字列を小説にすることに集中できない。

私は一度パソコンを閉じ、天井を見上げた。そうして10分ほどたった時、天井の木目の龍が何やら私に話しかけているような気がした。声がしなかったので口の動きだけで察すると「あと何回私を殺せば気が済むんだ!」と言っているように感じた。

そんなの私に聞かれてもわからない。あなたがあと何回殺されようと知ったことじゃない。

頭の中を切り替えて小説を組み立てていく。様々な言葉の部品を使っていく。気づけば物語は終盤の少女が病によって死ぬところに来ていた。


「あと何回私を殺せば気が済むんだ!」


そういうことか、と私は少女を殺しながら理解した。あの子は今まで私たちが殺してきた人たちの結晶体のようなものだったのだ。身体が死の恐怖や絶望、悲しみで満たされているのだ。そこから出たのがあの言葉だったのだ。


「あと何回私を殺せば気が済むんだ!」


その言葉を口ずさみながら私は少女を殺した。

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