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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

隠し神ちゃんは少女と仲良くなりたい。

ホラーなのか、ホラーじゃないのか悩みます。


どちらなのかキミの目で確認してね!

挿絵(By みてみん)


「ひっく……ひっく……あぁぁぁんっ」


 暗い洞窟の中であの子が泣いている。

 夜に井戸の側で隠れていたから連れて来た。


「あの……もう泣かないで。

 また遊ぼうよ、お話ししようよ」


「どうしてこんな所に連れて来たのよ!

 お願い……元の所へ帰して……ふぇぇぇん」


 優しく話しかけても、木の実や野いちごをあげても効果が無い。

 さて、どうしたら泣き止んでくれるだろうか。


 ―――――



 私は隠し神。

 「神」とは名ばかりで、本当は鬼の子。


 とおの歳まで普通の女の子だったのに。

 急に角が生えて「忌みいみご」として山奥に連れられ殺されたのが何百年も前。


 成仏もできずに幽霊にもならずに。

 灰となって撒かれた土から元の身体に生き返り、十の歳の姿で成長しないまま生き永らえてきた。

 そりゃあ普通の人じゃないよね、怖いよね、殺されるよね。


 どうして鬼になったのかは分からない。

 山の神様に聞いても、


「うーん、神様の気まぐれかのぅ」


 と、適当な答えしか返ってこない。

 貴方も神様でしょうが。


 本当の神様は良く言えば大らかで。

 大らかすぎて話がのらりくらりとして会話にならない。



 鬼として生まれ変わったからにはね。

 私を殺した村の大人達の子孫に仕返しをしてやる。


 夜遅くまで遊んでいる子やかくれんぼしている子をさらう。

 慌てる大人達を見て楽しんだ次の日の朝には子供を返す。


 多少の悪戯なら山の神様は怒らない。


 男の子は嫌いだ。

 乱暴でうるさくて手に余る。

 だから狙うのはいつも女の子。

 泣いて泣いて泣き疲れて眠る子もいる。

 優しく撫でてあげたら大人しく眠る子もいる。

 寝ているうちに家へ帰す。


 そんな事を繰り返す内にいつのまにか山の神社で、神様と一緒に奉られるようになった。

 神様とは逆に「忌むモノ」として。



 でも今夜さらってきた子、ふみちゃんはちょっと事情が違う。

 遠い町から来た子でいつも神社の境内で一人で遊んでいた。


 くりっとした目のお人形さんみたいに可愛い女の子で、背丈は私と同じくらい。

 年齢は殺された時の私と同じくらいかな。

 だからかもしれない。

 気になっていつも木の上から見ていた。


 そのうちに見ているだけでは飽き足らず、狐のお面を付けて境内に降りた。

 角は髪を結って隠す。


 だって時々寂しそうにじっと座ってる時があるんだもの。

 放っておけなくなる!


「あーそーぼー。

 わたし、つね。

 なまえはなに?」


 元の名前なんかとうの昔に忘れてしまった。

 だから狐の面から拝借して「つね」。


「……ふみこ」


 最初は警戒していたふみちゃんだったけど、何度か会いに行くうちに仲良しになる。


 ふみちゃんには色んな事を教えてもらった。

 今の言葉遣いを教えてくれたのもふみちゃんだ。


「あれはなーに?」


「あれは『こうじょう』。

 『ひこうき』の『ぶひん』を作ってるんだって。

 お父さんもあそこで働いてるんだよ」


 神社の石段に座って二人で村を見下ろす。


 村も長い年月の間に随分大きくなった。

 畑だった場所には大きな建物がいくつも並ぶ。


「ふーん?

 あ、あれなに? 走る鉄!」


「あれは『くるま』だよ。

 つねちゃんはなーんにも知らないんだねぇ」


 こういう時のふみちゃんはすごく得意気。

 すぐ「お姉ちゃん」を気取りたがる。

 生きた年齢は絶対私の方が上なんだけど。


 でもそういう時のふみちゃんは無邪気で面白いので、「お姉ちゃん」は譲ってあげる。


 何とかって言う甘いお菓子ももらった事もある。

 海の向こうの言葉なので名前は忘れた。


「甘いお菓子持ってるなんて、ふみちゃんはお姫様なの?」


 驚いて聞くと笑われた。

 ふみちゃんの笑顔は野菊の花のように鮮やかで、私まで楽しくなる。


 ―――――



 ふみちゃんはまだ泣き止まない。

 あ、そうか。

 自分の住み家だから真っ暗でも問題ないけど、この洞窟は人間には暗いんだっけ。


 ろうそくを灯してあげる。


「どう、これで怖くないでしょう?」


「ひぃぃぃっ、黒い目!

 お、おばけだぁっ!!」


 しまった。

 生き返った時に目の白い部分が黒に染まったんだ。

 これを見られたくないからお面を付けていたのに。

 今日は付け忘れていた、失敗失敗。


 ふみちゃんは洞窟の端まで這って逃げると震えてうずくまった。


 せっかく仲良くなれたのに。

 もう今までみたいに遊んでくれないのかな。


 鬼になって初めて悲しくなった。

 親に見捨てられた時より胸が苦しい。


「お願い、食べないで……。

 何でも言う事聞くから帰してください!」


「でもお外は危ないよ。

 ここで一緒に遊んでようよ」


「グスッ、お願い……帰して……お願い……、ふえぇぇぇっ」


 ……ふみちゃんにすごく嫌われたのはわかった。

 寂しいけどしかたがない。


 やっぱり鬼と人は仲良くなれないのかな。


 帰してあげたいけど……どうしよう?


 お外は大きな鉄の羽根を広げた怪物みたいなのがいっぱい飛んで来ていて。

 小さな爆発する筒をいっぱいいっぱい落として、「こうじょう」も村も燃えて本当に危ないんだけど。


 私はモンペ姿のふみちゃんにそっと近づいて、防空頭巾を外してあげると優しく優しく頭を撫でてあげた。


<終わり>

「面白かった!」

「つまらない」


など思ったら下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援や不満をぶつけてください。


どんなご意見でも励みになります!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。



※興味を待たれたら 他作品も見ていってくださると嬉しいです。


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「マッチゆりの少女」

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