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No6 生首バレエ
僕は超絶貧乏バレエ団の振付師だ。とある格安ホールで初演をすることになった。舞台の端から端まで躍動感を持たせたい。それなのに三人しかいない貴重なバレリーナたちが動かない。怖いというのだ。踊ると緞帳の裾から数多い生首が睨むという。その数、約三十ほど。確かに、こりゃ怖いワ。確かここは戦場跡だから本物だワ。本番直前になんてこっただワ。でもこれもチャンスだワ。
僕は生首たちに話しかける。
「優しい振り付けを教えてやるからさ、一緒にバレエを踊ろう。睨むのはやめてまず笑顔っ」
生首はびっくりしたようにふらふらと出てきた。見れば全員元武士で若いし、イケメンばかり。こりゃ、いいぞ。俺は世界で初めて生首にバレエを教えた。手足がないので目線だけだが、空間を自在に動けるのは何にも代えがたい。バレエメイクをした美男子生首のラインダンス。無害と理解したバレリーナも上機嫌で一緒に踊る。もちろん舞台は大成功だった。