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No48 ポワントマン
感染症のせいでバレリーナの仕事がなくなった。私はバレエをやめた。そのうち身体の動きがぎくしゃくしてきた。あわててストレッチを再開するも身体が萎縮したらしく、関節を曲げるだけでバキと音がする。そのうちに固まってカメのようになった。私の身体を覆う硬い殻ができて、その場から動けない。
途方にくれていたら、バレエグッズから煙が出てきた。中から巨大なトウシューズが出て人語を話す。
「呼んだやろ? バレリーナ専門お助けヒーローのポワントマン参上やで」
「なんでもいいので助けてください」
「大丈夫、できる範囲で殻の中で手足を大きく伸ばしてみ」
ポワントマンの指導通りにしたら徐々に身体が柔らかくなり、殻から出てこれた。殻はニスと松脂製だった。
「…ありがとう」
「踊るのをやめたらあかんで。ほならさいならな」
「もう行くのですか」
「他のバレリーナも助けのシグナルを発しているから忙しいんや」




