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No42 なにがあたるかわからぬバレエ
我がバレエ団員の男性ソリストAは言葉遣いが荒い。女性のシニヨンを自動車のウィンカーのように乱暴に操作し泣かせる。本番では仕事をきちんとするので扱いに悩むところだ。逆に男性たちから鬼婆と恐れられるバレリーナBもいる。Bの技術も文句ないが言葉が汚いのでAと良い勝負だ。少しでも間違えると「ふぁっくぅ」などという。繰り返すが技術には問題はない。私は迷った末にAとBを組ませてみた。するとレッスン場で常に怒鳴り声が発生する。Aがいびりの一環でシニヨンをわしづかみにして自在に動かそうとすると、察知したBは回転しながらAを蹴り倒す。
「このクソ地獄に落ちやがれ」
気品あるクラシックバレエに罵声は似合わぬ。仕方なくクビにした。
その後なんとAとBは結婚した。芸能界に入り夫婦喧嘩漫才パドドゥをした。罵りあいの末に息の合ったリフトをして仲直りというのが当たった。私にはまったくもって世間の評価が理解できぬ。




