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No22 階段プリエ



 幼児の周囲は時間の流れがゆっくりだ。私が見た話を聞いてください。

 小さなリュックをしょったかわいい男の子で一才半から二才ぐらい。彼は、公園の階段を一段降りては、足二番のプリエを小さくする。片手はアラセゴンド、もう片手はアンオーで軽くこぶしを握っている。

 慎重に足を下ろしては、また一段。小さくプリエ、時にグランプリエ。彼のすぐ後ろで、若い父親が見守っている。二段分先に降りて同じく見守るこれまた若いお母さん。それをもっと下の広場のベンチから見上げる初老の私。まるで入れ子構造の舞台だ。

 彼らはどこへ行くのかまで知らぬ。でも今はこの幼児の階段下りを時間をかけて見守っている。とうとう下り終えると幼児は誇らしそうな顔をして両親をみあげてさらにアンオーをした。右手に父親の大きな左手、左手は母親の優し気な右手、それぞれの手を委ねて彼はさらに笑みを広げる。それを見下ろす両親の笑顔。私は至福を感じる。





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