【おもてなし】の前にある言葉は――
独断と偏見ゆえ、強い口調が散りばめてしまいました。
日本が誇る文化、心。それが【おもてなし】です。
――は?
乱用される【おもてなし】の言葉。
【おもてなし】の言葉を吐き出す口に、へどがでる。
今世間に謳われる【おもてなし】は、張りぼて感満載だ。
【おもてなし】は、無償の行為。
それに、同意する。
見返りを求める【おもてなし】は、単に下心――交渉術の一環。接待。つまるところ、営業戦術だ。
これは、商売だけに聞こえるが、家庭でも、学校でも、会社でも、知人でも、親兄弟でも、そこに代価を求めるならば、変わらない。
【おもてなし】は、無償の行為。
其れを期待して臨む者。其れを当然として過大請求してくる者――クレクレ君は、【おもてなし】を交渉の一環として利用するべきと、強要してくる。
強要された【おもてなし】は【おもてなし】だろうか?
自分が学んだ【おもてなし】は、行為の二手。
なら、初手は?
【お互い様】だ。
【お互い様】を土台として、【おもてなし】がある。または、出来る。
「お客様は、神様です」
偉大な歌手の言葉だ。
だが、偉大すぎる言葉は、真に伝わらない事が儘に多い。
その歌手のステージに、お金を払い楽しむ自分。
「お客様。ステージの最中の移動は、ご遠慮下さい」
「俺は客だぞ。金を払ってんだ。好きにして何が悪い」
日が変わり、あるレストラン。
「お客様。お子様が走り回りますと、周りの皆様に迷惑が掛かります」
「は? 私は客だぞ。そもそも、この前私に『金を払えば』的な事を言ったのは、あんただろ」
これは極端な話。
湯治にきた魚売りが、「おせわになります」と挨拶すれば、
旅館の女将が、「御くつろぎいただけますよう。努めさせていただきます」と答える。
湯治を終えた魚売りが、「これは新鮮でおすすめですよ」と魚を売り込めば、
旅館の女将が、「なら、それにこれを付けて、まけて頂戴」と攻める。
今日の買い手は、明日の売り手。
自分の中で【おもてなし】は、【いき】であり、【いなせ】であり、【すい】である。
形式美を楽しむ【通】の振る舞い―― 一種のごっこ遊び。飛躍だが、芸者遊びと変わらない。と、理解している。
「今日は、客として持て成してもらういますよ。明日は、たっぷり俺のもてなしを堪能してくだせい」
【持ちつ持たれつ】。つまりは、【お互い様】。
話しは変わるが、串揚げやでの【タレの二度浸け禁止】は、今では多くの人が知る処ではないだろうか。
単純に味が足りないと、食べかけのソレを共有で使うタレに沈めれば、家族の鍋でもなければ周りの客は――特にそこを使う後の客は、いい顔をしないだろう。
で、それが東京者なら、「これだから東京モンは」となる。
人それぞれ。個性・人格はそれぞれ。【十把一絡げ】はいかがなものか。との指摘は当然だろう。
とは言え、見ただけでその人柄が分かるだろうか?
入店するなり店主に「私は、試着した服は必ず畳む。もし傷をつけてしまったなら、必ず買い取る。私を信じて欲しい」、なんて言ってくるお客様が来店したら、自分なら携帯電話片手に【1】【1】【0】を押しておき、後は通話タッチするだけにして、そっと後ろ手に構える。
だって、怖いもの。
個々人の把握が難しければ、カテゴライズしてリスクマネージメントをするのは、必然ではないだろうか。
それは、他県だろうと、他国だろう。その行為を否定しても、そう行われるのは必然だろう。
個人の人格形成に、その風土の影響はある。いわゆる文化の違い。
先の例にならえば、「私の所では、このような習わしが~」なんて、入店そうそう説明する旅行者は居ないだろう。もしいれば、その方は、前もってそこの文化を勉強するような勤勉な人。そんな人なら、問題はないだろう。
皆がそうだったらいいね。
だったら【十把一絡げ】の乱暴な先入観も、否定しきれるどころか、有効な手段ではないだろうか?
日本は島国。世間は狭い。因果応報。昨日の事が、今日の自分に。
「おいおい。島国ったって、孤島ではないぜ」
その通り。
しかし、むか~し、むかしは、村単位での生活で、その村と村とも距離があった。ある意味、孤島の集合体のような環境。
どこかの家にどろぼうが入る。よそ者でも来ていなければ、直ぐに誰がやった事か分かってしまう。
そんな輪の中で、慣れから垂へ。遠慮ない関係も、ずうずうしいと感じ始めれば、揉めもする。
その環境が【親しき仲にも礼儀あり】を生み出したのではないだろうか。
だからこその【旅の恥はかき捨て】の台頭。
つまり、【おもてなし】は、【情けは他人の為ならず】の円環にあるからこそ楽しめる。
自分と他人の縁を隔てて、他人の円環から搾取する行為は……はっ!
個人として、【おもてなし】を発言するメディアには、是非とも【お互い様】をセットにてし報道して欲しいものです。
いや、決して自分がサービス業とか、「接客、ウゼー」とかないですよ。
本当ですよ。ええ、本当ですとも。本当。本当にね……。