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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
おとぎ話
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93話 自問自答

無事に村を襲う悪魔を討伐した私は、天界に戻り業務に励んでいた……はずなのだが。


(おかしい、おかしいおかしい! )


なんというか、戻ってきてから仕事に集中できていなかった。ふと頭に浮かんでくるのは一面の星の海、嬉しそうな彼の顔……


(私の体になにが起こったの!? なんだか全然集中できない……)


今日の模擬戦でもそうだ、勝ちはしたが、普段はしないようなミスがいくつかあった。


このままでは実戦で支障をきたしてしまう。


なので、上司兼医療部隊長であるカマエルさんのもとに来た。言動はともかく、実力は本物だから。


「いらっしゃい! 今日はどしたの? 」


「あのっ、少し相談があって……」


私の様子が少し違うのを感じとったのか、「とりあえず入りなよ」と受け入れてくれる。


「はいお茶、ハーブティーだよ」


「お気遣いすみません」


「で、相談って? 」


「はい、実は……」


私は自分の状態を話す。スカルと出会って、彼のことばかり考えてしまうことを。カマエルさんは静かに、頷いて聞いてくれた。


「なるほど……原因わかっちゃったよ」


「本当ですか!? それは一体なんなんですか!? 」


「ちょっ、落ち着いてフォルメルちゃん! ちゃんと話すから」


私はかなり食い気味になってしまった。焦りすぎよ、少し落ち着かないと。


「とりあえず、フォルメルちゃんのその症状は……ずばり恋、だね」


カマエルさんは目を輝かせて言い放つ。私は言葉の意味を理解するのに時間を要してしまった。


「はぁ……?」


「そんな顔しないでよ! ほんとなんだよ!? フォルメルちゃんが彼のことばっかり考えるのも、彼のことでドキドキするのも、そんなの恋以外にないじゃん!! 」


カマエルさんはぱっちりとした瞳をめいいっぱい開いて話す。そういうもの……なのだろうか?


「いや〜それにしてもフォルメルちゃんが恋か〜、しかもお相手が噂の『反逆鬼』さんとは……むはーこれはガブちゃんとシェアしないといけない案件だよ! 」


「お二人って仲良いですよね……」


だからといってこの話題をあまり広めないでほしい。私自身恋なのかわかっていないのに。


ちなみにこれは余談なのだが、カマエルさんのいうガブちゃんとはガブリエルさんのことであり、彼女もまた、カマエルさんと似たような性格をしている。


「あっ、あとラファエルさんにも報告しにいこ〜、流石に指揮官様には伝えなきゃだしね」


「それは……そう……なんですか? 」


「そうだよ! もしかしたら寿退社するかもじゃん! 」


私のことで妄想を膨らませすぎでは? 本人は楽しそうなんだけど。


「そうだ、今から行こ! 」


「今からですか!? 」


「うん、だってこういうのは早い方がいいし! 」


私はカマエルさんに振り回される形で、ラファエル様の所へ行く。


今の時間、ラファエル様は指揮官室で仕事をしている。なので、指揮官室に向かうとちゃんと居た。


「あら、今日は任務はないのですがどうしたのですか、フォルメル? 」


「ラファエルさんに重大発表があって来たんです! ねっ、フォルメルちゃん♪」


「そこまで重大ではないですカマエルさん」


ラファエル様は首を傾げる。カマエルさんのことちゃんと止めればよかったかな。


「なんと、フォルメルちゃんが恋をしちゃったんです! しかもお相手は有名な『反逆鬼』! すごくないですか!? 」


「フォルメルっ、あなた……」


カマエルさんからの報告を聞いたラファエル様はひどく動揺していた。手で口元を押さえ、信じられないといった様子で。


「あなた、なにを言っているのかわかっているのですか? 」


「カマエルさんが勝手に言ってるだけなので気にしないでください。私にもそれが恋かはわからなくて」


「そういうことではありません! 我々の禁止事項をお忘れですか? 」


その言葉であることに気づく。


天使にはいくつかの禁止事項が存在する。その中のひとつに、人間および魔の者との恋愛の禁止というものがある。


「わかっていますよね? それは完全な禁止事項です。『反逆鬼』は人間であり、吸血鬼です。それに、よくない噂も聞きます」


「それは……」


「関係ないですか? では逆に聞きます、フォルメル、あなたは『反逆鬼』のなにを知っていますか? あなたが『反逆鬼』と過ごした時間はほんの一瞬で、それで深くをしれたわけではないと思います」


「それ……は……」


「自分のかわいい部下にこんなことを言いたくはないですが、あなたの恋心は禁止事項を破ってまで通せるものではないと思います」


ラファエル様から厳しい言葉をもらう。確かにそうだ、仮に私がスカルを好きになったとして、禁忌の道を歩けるか? 私は彼をどのぐらい知っている? ……少ししか知らないじゃない。


「ラファエルさん厳しすぎ。他人のことなんて最初から全部知ってるわけないじゃん。知らないからこそ好きになるんじゃん」


「カマエル、あなたは緩すぎます。好きになるのならやはり相手のことをしっかりと知ってからではないと危険です」


「むぅー慎重派ですね。フォルメルちゃんにきつく言い過ぎでは? 」


「多少きつくなっても、フォルメルのことを思ってのことなのです。あなたは私にとって子どものようなものですから」


ラファエル様の言葉は私の心に染みた。ちゃんと考えてみないと、このままじゃ駄目だ。


「お時間とらせてすみませんでした。私はこれで失礼します」


「フォルメル、あなたなりの結論を出しなさい。あなたが真剣に考えた答えを、私は尊重します」


「ありがとうございます」


私は指揮官室を出て、訓練場へ向かう。少し剣が振りたい。



「やぁっ!! 」


訓練場で早速剣を振るう。訓練用のダミー人形相手に、横一閃の斬撃を繰り出す。轟音とともにダミー人形はあっさりと二つに割れる。


訓練場に貼ってあった結界にひびが入り、危うく壊れそうになる。なかなかの衝撃波で周りは結構大惨事になっていた。


「やりすぎた……直さなきゃ」


凹んだ床を、ひび割れ結界を直す。その他にも、バラバラになったなにかを片付ける。


考え事をしてたからだろうか……いつもより変に力が入ってしまった。


「私はスカルとどうなりたいんだろ……」


自分の手に持っている魔力剣をじっと見つめて考える。


スカルはとってもいい人だ。少ししか触れ合えなかったが、それだけは本当だと思う。


だって別れる前、もっと一緒にいたいって思ったもの……


でも、自分は天使をやめてまでスカルと一緒になりたいのか?その問いにはノーと身体が答える。


私は悪魔を、我々の敵をひとつでも多く討つために能天使になったのだ。私は殺さなくてはいけない……一体でも多くの敵を。


「だったら、答えなんてもう出てるじゃない」


そうだ、迷う必要なんてない。私は戦う、これまでも、これからも。


スカルを慕う気持ちは本当だが、全てを投げ打ってまで彼と一緒にいたいわけじゃない。



それよりも、私には果たすべき使命があるのだから……

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