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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
おとぎ話
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91話 スカル

「まずは状況の整理をしようか。事件のあった村がここ、そして今僕たちのいる『ラントル』がここ。で、転送用の魔法陣は調べてみたけど、短距離移動しかできないやつだったよ」


「ということは村の近くの隠れやすい場所にいる可能性が高いってこと? 」


私の言葉にスカルが頷く。


「それで、拠点にしやすそうな場所を教えてもらってもいいですか? 」


スカルは大臣さんに尋ねる。大臣さんは少し戸惑った様子で、口を開く。


「そっ、それならここの洞窟が一番怪しいと思います。構造としてもなかなかの規模ですし、闇に紛れられますから」


「なるほど……じゃあちょっと確認してみますね」


「えっ?」


スカルは地図上の洞窟付近に焦点を合わせて、少しの間じっとしていた。


「うん、当たりだ。どうやら攫われた人たちは無事みたい。すぐに兵士の準備を」


スカルは大臣さんにそう指示をし、兵士を集めるために動かす。


「今のって千里眼……でいいの? 」


千里眼の作用を引き起こす魔術は存在する。だが、9キロあまり先を見るなんてできないと記憶していたのだけど。


「うん、魔術が使えれば誰でも使えるものだから、そんなに驚くこともないと思うんだけど」


「でも9キロあまり先は見えないでしょ。それこそ、そういう魔眼を持ってないとできない。あなた魔眼持ち? 」


「……僕はこういう系統の魔術と相性がいいんだよ。ただそれだけ」


返答までの変な間が、なにかあるといっている。


確認したいが、今は他にやることがある。これが終わったら確認してみよう。


「兵の準備が整いました。いつでも動けます」


「ありがとうございます。直接的な戦闘は僕と彼女で行います。皆さんは外で待機をお願いします。」


「わかりました」


「それじゃあ行きましょう」


こうして、悪魔の拠点に向かって進行を開始した。





「うぅ……かえりたいよ……」


わたしはくらくてこわいばしょにいた。となりにはお母さんがいるけど、すごくこわい。


わたしはたのしくくらしてただけなのに……急にこわい人がきて、ここにつれてこられた。


ほかのみんなもおなじ。あのこわい人にたべられちゃうのかな……


「さて、そろそろ儀式を始めようか。人間に暴れられても面倒だし」


「はい、アンドロマリウス様。すぐにでも」


「さて、これで人間の魂を取り込めば、私ももっと強くなれる」


こわい人がおおきなこえでわらう。わたしはこわくてお母さんにだきつく。




「……ここにいるみたいだね」


パチンという音が洞窟内に反響する。その瞬間、いくつもの魔法陣が出現して、そこにいた人たちをどこかへ転送させる。


「なっ……これはまさか……」


首謀者と思われる悪魔が、驚愕によって顔を歪める。


私と彼は、相手にゆっくりと近づく。


「なぜだ……なぜ貴様がここにいる……」


その声色から、信じられないといった様子が伝わってくる。


対する彼は無言、かけられた言葉に対してなにも答えない。ただ、ゆっくりと近づくだけ。


「答えろ……スカル=シースター!!! 」


悪魔の絶叫が響く。彼、スカルは足を止めて、

「理由を話す必要はないだろう。ただ、僕が君のもとへ来た理由は簡単だ、人間に危害を加えたから倒しにきた」

そう話す。スカルの雰囲気がさっきまでと全く違う。なんというか、今の彼は冷たく、非情だ。


「っ! それにそっちは天使か!? その容姿、まさか『紫電』……」


「私のことはどうでもいいでしょ? なんか彼、すごく怒ってるみたいだけど? 」


「くっ……」


悪魔は苦虫を噛み潰したような顔になる。


こっちの方が有利な感じだけど、相手の実力は未知数、なにがあるかわからない。


「だがそれがどうした! 地の利はこちらにあるし、なにより、こっちには数がある! でてこいお前ら!! 」


そのかけ声とともに、どこからともなく大量の魔物が出現する。ゴブリンやリザードマン、人造人間(ホムンクルス)、リリムなど、種類は豊富だ。


「多いわね……どうする? 」


「フォルメルさんは取り巻きの相手をお願い。あいつは僕がやる」


「わかったわ」


私は魔力剣を錬成する。特別な力もなにもないただの魔力でできた剣。


それを横に振るうと、その場にいた魔物たちの半数が真っ二つになる。轟音とともに血しぶきが舞い上がり、魔物たちは狼狽えていた。


「どうしたの? かかって来なさいよ。これ、ただの魔力剣よ」


私は手に持っている剣をひらひらと振るう。魔物たちは実力差を感じとったのか、一歩、二歩と後ずさりをする。


「なにをしている! 個々で勝てないのなら物量の差で押し切ればよかろう!! 」


相手の親玉はそれを許さなかったみたいだけどね。


その一括で魔物たちは腹を括ったのか、一気に突撃してくる。


「さて、全員殺しましょう。愚かな魔物、悪魔には死を」


私は魔力を解放して、敵の波に突っ込む。




「さて、始めようかアンドロマリウス。僕は君を殺す」


「ぐっ……」


目の前にいる悪魔、アンドロマリウスはソロモン72柱に属する悪魔だ。主に相手の力を奪う能力を持っている。


「ガープはなにをしているんだ。こいつを取り逃がしおって……」


「なにか勘違いしてるみたいだけど、ガープは僕を取り逃したんじゃないよ。僕が殺したんだ」


「はっ……?」


アンドロマリウスは信じられないといった顔で僕を睨む。


「あいつは4体の取り巻きがいたんだぞ!? それに、人間に対して有効な能力も持っていたのになぜ……」


「そんなの、」


杖を地面にぶつける。トン……その音とともに、苦痛の声と赤い血が上がった。


「相手が僕だったってだけのことだよ。あいつより僕の方が強い」


「がぁ……影を伸ばして私を串刺しに……くそ……ふざけるな……」


アンドロマリウスの姿がふっと消える。幻か……


「フォルメルさんは……大丈夫そうだね。あいつは……逃げられたかな、気配がしないや」


「かかったな、『魂喰い(ソウルイーター)』!! 」


後ろから不意打ちを食らう。アンドロマリウスの手から放たれた魔力の獣が、僕の魂を喰い荒らす。


「フハハハ、いくらお前でもこれを食らって無事ではあるまい!お前の力は私が貰ったぞ」


「その技は知ってるよ……だから仕込ませてもらった」


僕が指を鳴らすと、アンドロマリウスは絶叫をあげた。身の毛もよだつような、魂を掻きむしるほどの絶叫。


「なにをしたスカル!!? あぁぁぁぁ、痛い、痛いぃぃ!! 」


「魂に毒を仕込んでおいたんだよ。『体喰い(ウロボロス)』、魂が入れ物の体を食べて、最終的に自分自身も食べて爆発しちゃうってやつ」


「なっ、なんだそれは……がぼぉ、そんなことをしたらお前も危ないではないか……」


「危ないわけないだろ、毒の発動条件は魂がこの体から離れた時。それに、万が一発動してもこの毒は僕には効かない。君ならわかるだろ? 」


体の崩壊で、もう立てなくなったアンドロマリウスに問いかける。彼も、他の有力悪魔もわかっているはずだ。


「お前たち、天使はいい、こいつを殺せぇ!!! 」


アンドロマリウスは苦痛に顔を歪めながら、部下である魔物たちに指示を出す。


魔物たちは目の色を変えてこちらに走ってくる。




危ない……そう思った時、ピタッと周りの魔物たちが止まった。


私含め、彼以外の全員なにが起こったのかわからない状態だ。


「空間凍結、数が多くても全部止まれば問題ないよ」


信じられない……空間凍結って燃費かなり悪いし習得するのも大変だったはず。それを完璧な精度で、消耗も特になく行使している。


「終わらせよう、『炎嵐(えんらん)』」


彼がそう唱えると、炎の嵐がいくつも巻き起こり、その場の敵全員を燃やし尽くす。


彼の後ろ姿を見ながらあることを思い出す。


『銀の魔術師』と呼ばれる男にはもう一つ通り名がある。半人半吸血鬼のその姿、吸血鬼の能力を使いこなしながら、悪魔たちに敵対することから、『反逆鬼(はんぎゃくき)』と呼ばれている。


彼は、スカルは、吸血鬼の血を持った、我々天使の、人間の味方だった。

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