90話 街へ
「で、悪魔の痕跡とかは見つかったの? 」
「うん、ほんのちょっとだけどね。今回の悪魔は隠蔽技術が凄まじいよ」
彼の言うとおりだ。この感じだとかなり力も強そうね。
「ここに転送用の魔法陣の残りがあったんだ。ほんのちょっとだけどね」
「じゃあここからどこかに飛んでったってことね。行き先はわかる? 」
「さすがにそこまではわからなかったよ。これは一旦大きな街に行くしかないね」
彼はそんなことを言う。この場合だったら、上の人の力を借りた方が探しやすいからってことだろう。
私はここら辺のことは詳しくないから賛成した。
「じゃあここから10キロぐらい先にある、『ラントル』って街に行こうか。一番近いし」
「なかなか遠いのね。でも飛んだら早いか」
「飛ぶのはいいけど、それは街の近くまでにした方がいいよ。天使なんて滅多に見ないし、騒ぎになっちゃうからね」
「……それもそうね」
「あとは……街に入る時は羽を隠して、それと僕のフード貸すよ。フォルメルさんは人目を惹き過ぎるから」
彼は空間魔術を使ってフードのついた大きなローブを取り出す。羽を隠せるようにとの配慮だろうか。
「入る時、羽の大きさは最小限にしておくわ。あと、ありがとう」
「うん、どういたしまして」
彼はニッコリと笑うと、外に出るために歩き出す。私も後を追う。
外に出ると、私は空を飛ぶ。彼はというと……空中で立っていた。
「それどうやってるの? 」
「空中に地面を作るイメージで空気の壁を作ってるだけだよ。少し上昇気流も起こすと安定するかな。まぁ、慣れれば簡単だよ」
「なんだかすごいのね」
「それじゃあ行こうか。先導するね」
そう言い終わるや否や、彼は凄まじい速度で滑りだす。
「速っ」
私は置いてかれないようにスピードを出す。風を切る音が耳に響く。
彼は滑っていると思ったら、空気を蹴って、蹴って、蹴って……また滑る、冗談のような3次元移動をする。
私の直線移動と同じくらいの速さを、それ以上の移動距離で出していた。
練度がすごい……それに魔力関係も。あれだけのスピードを出すのは魔力量もそうだが、魔力操作のセンスも必要だろう。
「さて、そろそろ着地するよ。ここらから歩いた方がいい」
「えぇ、わかったわ」
私と彼は人目につかないところに着地した。私は羽を小さくして、ローブで隠す。フードも被っておこう。
「ここにはあんまり魔物がいないから安心して歩けるよ」
私たちは並んで歩く。周りに魔物の気配はなしか。
「もし出たとしてもあなたなら簡単に倒せるでしょ? さっきの動きからしてかなりの実力者に思えたもの」
「旅をしてれば自然に力はつくよ。フォルメルさんには勝てないけどさ」
彼は穏やかに笑って話す。
「実際どうかはわからないわ。お互いに手の内知らないし」
「まぁ、そうだね」
まだまだ相手の実力が鮮明にわからない状態で、どっちが強いなんて言うだけ無駄だ。一般的に見たら天使の方が強いんだろうけど。
「あっ、見えてきたよ。あれが『ラントル』だよ」
彼が指さす先には確かに街があった。城の外壁に、多くの家屋が見える。
そして、街に着くと、情報収集のために街の人に村のことを尋ねながら、城を目指す。
「あそこの村について? いや、最近悪魔が出るってこと以外聞かないな。詳細は知らないけどな」
「なんだかあそこの村は祟りが起こるって言われてるな。人が定期的に消えてるんだよ。あんたらその異変を調べに来たのかい? まぁなにはともあれ、ゆっくりしていきなよ」
「詳細な情報は得られないわね」
「そこはしょうがないかな。さぁ、大本命にやってきたよ。なにかわかるといいんだけど……」
目の前にたたずむ大きな城。外壁に使われている石には魔力が通っている。普通より頑丈な造りになってるのね。
「止まれ! お前たちは何者だ! 」
城の中に入ろうとすると衛兵に止められる。
「私たちは旅の途中、ある目的でここに寄らせていただきました。とある村で村人全員が行方不明になってしまった件はご存知ですか? 」
「それは知っている。巷では悪魔のせいだとか言われているがそれがどうかしたのか? 」
「はい、実は私たちはその悪魔を退治しに来たのです。ですが、悪魔の行方が途中でわからなくなってしまって……この付近が詳細にわかる地図と、土地感のある人を貸してくれませんか?」
衛兵は少しの間考えたあと、
「一旦王に報告してくる。そこで待っていろ」
と言って城の中に入っていってしまった。
「上手くいくといいんだけど」
「きっと大丈夫だよ。ちゃんと話せばわかってくれるから」
彼の根拠のない自信はなんなのだろう。楽天家なのだろうか。
「待たせたな。王の許可が出たぞ、中へ入れ」
「ありがとうございます」
「勘違いするな、協力するかどうかは話を聞いてからだ」
そうくるか……ただ地図見せてくれれば問題ないんだけどな。人を連れていくにしても私が守るし。
衛兵の後に続いて城内を歩く。時折、側近らしき人と、すれ違う。慌ただしく様子なので何事かと思ってしまう。
少しすると、豪華な扉の前に衛兵と一緒に止まる。
「いいか、この部屋に王がいるが、くれぐれも失礼のないようにな! 即うち首もありえる」
「わかっています。ここまでの案内ありがとうございました」
彼は礼儀正しく頭を下げる。
そうしてから、扉を開け、中に入っていく。
中は煌びやかな空間だった。豪華なシャンデリアにたくさんの絵画、床に敷かれたレッドカーペットの先には、子供が憧れるような玉座がある。
そして、その玉座にはがっしりとした体型で、歳は初老ほどの男性が座っていた。おそらくあれが王様だろう。
「よく来た旅のものよ。私がこの街を統治するもの、エドワード=ロレンティウスだ。」
王様は威厳たっぷりといわんばかりに話す。
「あなた様とお会いできて光栄です、エドワード王。私はスカル、魔術師をしております。こちらはメル、彼女の素性についての明言はご勘弁願います。なにしろ魅力的な女性なので、話すとかなり長くなります」
ちょっと……私が抗議しようとすると、彼が私の唇に人差し指をあてて静止してくる。
「黙ってた方がいいよ、身バレしないためにもね」
「いや、でも……って思ったけどそうね、ここはそういうことにしましょう」
私は彼と小さな声でやり取りをする。
「ふむ……スカル……スカル!? その銀髪に赤い瞳、まさかそなた、あの『銀の魔術師』なのか!? 」
「はい、そうですよ。私に二つ名なんて似合わないかもしれませんが、冒険者ギルド所属、白金級、『銀の魔術師』ここに推参致しました。それで、協力してもらってもいいですか? 」
「もっもも、もちろんだ! すぐに地図と大臣を呼んでこよう。おい、早くしろ!! 」
さっきまで威厳のあった王がすっごい慌てている。彼はそこまで有名な人なの? 『銀の魔術師』って? ……疑問が増えてしまった。
「ねぇスカル、あなたってそんなに有名なの? 王様の慌てようがすごかったんだけど。それと、二つ名もあるの? 」
「冒険者ギルドには8つの階級があって、僕のは上から3番目なんだけど……そこまでいくとある程度は有名になるらしいよ。二つ名についてはまぁ……いつの間にかついてたんだよね」
彼は照れくさそうに笑う。結構有名なのね。
「よしっ、準備ができたぞ! では私は用事があるので失礼する!! 」
そう言って王様は出ていった。えっ、逃げた?
「ありがとうございますエドワード王。それじゃあ、悪魔の行方を探そうか」
私は頭を切り替え、悪魔討伐のために、地図とにらめっこをした。
補足情報
スカル(男)
銀髪赤眼、褐色肌だよやったー
服装·····ゆったりとしたフード付きローブ。下には動きやすい民族衣装のようなものを着ている。
備考:魔術師だからちゃんと杖もってる
フォルメル・エーリスト(女)
長くのばした紫髪にオレンジの瞳
服装·····天界の戦闘服(グレーや白を基調としたシンプルで動きやすい服装)。ネットでよく見るワンピース1枚とかではない。
備考:羽の関係上、服の背中はあいてる(ここ重要)
なんか、キャラの情報が少ないのでここで補足をば(こういうの書くの初めてだから変かもですが、そこはご了承を)




