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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
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82話 その夜

買い物から帰ってきていつも通りの時間を過ごす。


そして、落ち着いた頃、


「開封作業に入るよ〜」


葉月が俺を自室に引っ張ってきて福袋の開封を始めた。


「俺って必要なの?」


「必要だよ!中身のリアクションとか今日買ったものの共有とかしないとだし。」


買ったものといったら福袋の他に袋を提げてたな。確かあれって本屋さんの袋だっけか。


俺が考えている間にも、葉月は福袋のホチキス部分を丁寧にとって中身を1つ取り出そうとしていた。


「1個目はこれね。」


そうして取り出したのは、1年ごとに新作の出るスポーツゲームだ。葉月いわく「福袋の常連」らしい。


「やっぱこれは入るよね〜。和人あとでやろ。」


「わかった、暇な時にでもやるか。」


「次はなんだろ?」


袋をガサゴソして次のものを取り出す。出てきたのは、


「あっこれ買おうか迷ってたやつだ。」


可愛い動物のがデザインされているパッケージだ。これは個性豊かな動物を操作するすごろくゲームだったはず。葉月がこれの動画を見ながら買おうか悩んでたから覚えている。


「これみんなでやろ!」


「コントローラー2つしかなかったよな?足りなくないか?」


「そこは大丈夫、前にお姉ちゃんが来たときにコントローラーもらったから。」


「なんで……?」


「可愛い妹たちとゲームがやりたかったかららしいよ。」


動悸が不純な気がする。あの人らしいといえばらしいが。


「あとはRPGと……おっホラゲーが入ってた。なんかすごい豪華だね。」


「確かにな。こういうのもあるんだな。」


この結果に、葉月は満足している。その証拠にアホ毛はぴょこぴょこ動いている。


「そういえば、あと他になに買ったんだよ?」


「ん?あぁそれならこれだよ。」


そう言って葉月が見せてきたのはライトノベルだった。タイトルとあらすじを読んだだけだと、この作品は能力を持った人々の日常だとわかる。


「俺らと似てるな。」


「でしょ?なにか参考になるかなって思って買ったの。あと単純な興味本位。」


ひとまず軽く読んでみる。やっぱりこの作品の登場人物も人間関係や、能力故の生きづらさを持っているようだ。


「やっぱり似たようなものだね。強力な能力を持っていてもなんの役にも立たないしね。」


葉月がため息をつく。歪曲や空間支配などの強力な能力を持っていても、実生活には特にメリットはない。なぜなら戦闘になる場面がないから。


戦闘にならなければ使うことなどないので、結局宝の持ち腐れになってしまう。


「でも、この作品の世界だったらよかったのに……」


葉月のこぼした言葉に対して俺はなにも返答しない。ただ静かに聞くだけだ。


この作品との些細で、それでいて大きな違いは認知度と数だ。あっちは世間がもう認知しているのに対し、こちらは全くしていない。というかできない。


なぜかというと、数の問題があるからだ。あっちの場合は、読んだところ能力者の数は多いと感じられる。半分はいないだろうが2、3割ほどいるのだろう。


対してこちらは1割を下回る。ほんの数パーセントの世界なのだろう。


それほどの少ない能力者を大勢の一般人がすんなり受け入れるはずはない。危険な能力を使われたら太刀打ちできないから、得体が知れないから、いつの間にか恐怖が伝染して悪い方向に進む。


人間は思っているよりも非情で残酷だ。物語のように綺麗ではない。


だから俺たちは能力を隠す。絶対に言わないし見せない。人よりもずっと重いものを隠して生きている。


「こんな世界だったら、私たちもあんな苦労しなくて済んだかもしれないのにね……。……羨ましいや。」


葉月は右目に手を当てる。幼なじみのここまで沈んだ顔は久しぶりに見た。


「……かもな。」


ようやく口から出た言葉がそれだった。もう少しいい言葉を言えなかったのだろうか。いや、言えないや……


だって、俺も羨ましいって思ってしまったから。


「でもさ、この世界だったから柏崎でみんなに出会えて、色んなことして、和人や千華なんかと一緒に暮らせて、辛いことや苦しいことがあってもみんなで助け合って乗り越えられたんだよね。」


「あぁ、そうだよ。」


「……和人はさ、今の世界と羨ましいほど理想的な世界のどっちがいい?」


「……今の世界だな。」


「ふふっ……私も。」


葉月は不安を感じさせないほどの眩しい笑顔を見せる。彼女なりに切り替えたのだろう。


「まっこんだけ言ってもなにも変わらないしね。ないものねだりはよくないか。それに、」


葉月はこちらに向かって拳を突き出す。


「1人じゃないしね。信頼してる和人が、みんながいればなんとかなるか。」


「あんま信頼しすぎるなよ。俺だっていつでも助けれるわけじゃないんだから。」


俺も拳を突き出し、軽く合わせる。


「へいへいわかってるよーだ。」


葉月は満足そうに笑うといつもの顔になる。


「さって!みんなでゲームやりにいきますか!」


「さっき当てたやつやるのか。」


「もち!って言ってもすごろくは後でやるけどね。」


「なぁ……こんな時に掘り返すのもあれだけど……俺がいるからな。」


「……どういう意味?」


少しの間固まっていた葉月だったが、目を細めて挑発的な物言いをしてくる。


「わかってるくせに。さぁ行くぞー。」


俺は葉月の前を行く。幼なじみにかける言葉はこのくらいでいい。ちゃんと伝わるから。


「カッコつけんな!」


「痛った!」


油断していた俺の背中を葉月は思いっきりひっぱたく。当の本人はすごく嬉しそうだった。


「油断してる方が悪いんだよー」


「だからって叩くなよ。」


「いいじゃん別に。カッコつけた罰だと思えば軽いよ。」


「どんだけ重罪なんだよ……」


「まぁ和人だしね。」


「俺限定かよ!」


こんなやり取りができるこの世界は、不自由だけどその分楽しいこの世界は、やっぱりいいなと思ってしまう。



たとえどれだけ傷ついたとしてもきっと……

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