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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
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8話 クラスマッチ

7月の頭、いよいよ皆が待ちに待ったであろう行事が始まる。


その日はいつもと違う雰囲気で、いつもより、なんというか強い熱気が体育館やグラウンドを包む。


普通の生徒にとって、今日という日は思い出に残る楽しい一日になるだろう。


無論、俺も今日の出来事は思い出に残る気がする。でも、それは楽しいものなのかはわからないが。




「ああーやだなー……」


強い日差しがグラウンドに注ぐなか、俺は日陰で座ってぼやいていた。


そう、今日はクラスマッチだ。競技は午前に2つ、午後に2つ、1日競技が1つある。とはいえ、1日競技の卓球は団体戦と個人戦があるから実質2つと捉えられる。


俺はこれから午前のグラウンド競技である野球にでなければならない。日焼け止めは塗ってきたけどこの日差しはやだな。


「和人、こんなとこでぼやかないの。」


俺がため息をつきそうになっていると、葉月が話しかけてくる。


「流石に今回は時期が悪いだろ。」


「そんなこと言ったって、今年は先生たちが5、6月忙しかったからしょうがないでしょ。」


「まぁそうなんだけどね……」


俺はそういいながら体操服姿の葉月を見る。すらっとのびた健康的な脚にスリムな体つき、高身長、モデルみたいな幼なじみがそこにいた。


「確かに男子の人気はでるわな。」


「?、急にどしたの?」


改めて幼なじみの美少女さを痛感した俺を葉月は不思議そうに見る。風が吹いて、アホ毛が揺れる。


「いや、お前ってアホ毛がトレードマークなところあるのかなって思っただけだ。」


「トレードマークって………てか!話を逸らさないでよ!」


そう言って葉月がプンスカと怒る。


「別にそこはいいだろ?大したことじゃないし。それよりも葉月、お前午前中バスケだろ?とっとと行ってこい。」


「むむむっ、気になる。そうだ、あんたに一言言いにきたんだ。聞く?」


「聞いとく。」


「うちのクラスに野球部が二人いることは知ってるよね?」


「あぁ、菊池と坂田だろ?それがどうしたんだ?」


「菊池くんと坂田くんが中心となって、今日の野球優勝しようぜ的な雰囲気出してるから頑張って。」


「いや待て待て!頑張れって言ったって俺どうすんの!?」


「いやそこは……頑張って打つとかね?」


「お荷物になる気しかしない!」


「がっがんば~」


葉月は言いたいことを言い終わると、そそくさと逃げ出すように去っていった。


いや野球上手い訳じゃない俺にどうしろと?

野球が始まる直前に大きくなった不安に、俺はため息をつくしかなかった。



やがて、試合が始まる。

1試合目は他のクラスなので特に問題はないが問題はその次だ。2試合目は俺達2年A組対2年D組だ。大丈夫かな………。


お互いに整列をし、審判の掛け声で礼をする。

「おい皆、D組には俺達と同じ野球部の阿左美がいるから気を付けてな。」


えっまじ……?相手チームにもいんの?


「よしっ!絶対勝とうぜ!」


坂田の掛け声で皆のやる気が出ているのか、雰囲気が明るくなる。


一回表の守備、俺は一番打球が飛んでこなさそうなライトに移動する。


クラスマッチの野球はキャッチャーはおかずに、代わりにネットを置く決まりになっている。なので、ひとり余分に守備に参加できるのでわりと守備は固い印象がある。


また、三回までしかやらないしようだ。


うちのクラスでは、菊池がピッチャーに、坂田がファーストにつく。アウト1つを確実にとる布陣だ。


相手の一番打者は阿左美だった。いきなりの野球部対決に両クラスとも盛り上がる。


注目の第一球を投げる。アウトコースギリギリにいき、ボールになる。


二球目は低めにストライク、三球目はファールになり追い込んだ。


「「いいぞー菊池!」」


「「打てー阿左美!」」


内野や打席から少し離れた場所、離れた場所で見ているギャラリーからそんな声があがる。胸が沸き立つようなすごい盛り上がりだ。


そして、勝負の四球目、低めにきまるボールを阿左美が打ち返し、ヒットとなる。


「今のはしょうがない、切り替えろ菊池!」


「わかってるよ、次は抑える。」


菊池はさっきのヒットをひきづらず、後続をしっかりと抑える。これは俺の出番がなさそうで安心と思った矢先、

「柊!いったぞ!」

相手の左打者が打ったフライがこっちに飛んでくる。


ちょっと待てまじかよ!これとれるかな……


俺は少し慌てながらも落下地点へ移動し、捕球体勢をとる。


そうしたらどうにかボールをとれ、ひと安心する。


「よしチェンジだ。ナイス柊。」


今のプレーでチェンジになる。ここからは攻撃だ。


裏の攻撃では菊池と坂田がどちらも二塁打を放ち、一点を先制する。


そこからは皆の気持ちに余裕ができたのか落ち着いたプレーでアウトをとる。


二回の表、無失点。


だが、相手もなかなかやり、もう一点もやらないつもりでアウトをかせぐ。


二回の裏、無得点。


そして、三回の表がきた。ここを無失点に抑えれば俺達の勝ちだ。


「ここを抑えて勝とうぜ!」


菊池の明るく頼もしい掛け声とともに俺達は守備につく。


だが、この回の最初の打者は阿左美だった。とても嫌なバッターだ。


菊池は厳しめのコースをついていく。あるかせてもかまわないといったところだろうか?


実際、阿左美以外に注意する選手はいないので歩かせるぶんには問題ないと思う。


結局阿左美にはフォアボールをとらせた。さて、あとは後続をうちとるだけだ。


だが、相手の必死の思いが天に届いたのか、菊池の甘くはいったボールがセンターに飛ばされ二塁打をあびる。

かなりピンチだ。最悪逆転される恐れがある。


「次のバッターに集中するぞ!」


「あぁ!もちろんだ!」


菊池は一旦深呼吸をすると、落ち着いたのか丁寧なピッチングをする。

が、相手は高いフライを上げた。しかも俺の方に。


クラスマッチの野球では盗塁は禁止だが、タッチアップはありなのでここで俺がフライをとっても一点をとられて同点にされてしまう。


うちにはまだ裏の攻撃があるが、また点をとれるのかが分からないので勝てる保証はない。


ここで確実に勝つためには……

俺は落下地点から一歩程度離れ、ボールから目を離さないようにしながら少し腰をおとす。

そして、ボールがちょうどいい高さにきたらステップで前にとび、それと同時に捕球をする。

そのあと、阿左美は走り出したのでもう一つステップをいれ、前の勢いをそのままボールにのせ、ホームベースに移動した菊池めがけておもいっきり投げる。


ボールはかなりの勢いで菊池へと飛んでいき、阿左美がホームに着く前に彼のミットに到着する。

そして___





「よっしゃー!一回戦突破!」


試合に勝つことができた2-Aはお祭りムードだった。


「それにしても柊、最後の凄かったな!お前ほんとに初心者か?」


「あぁ初心者だよ。最後のはたまたま上手くいったようなもんだし。」


「そっか。でもとにかく凄かったぞ。お前野球部に入らないか?」


「あー……俺部活に入ってるし遠慮しとく。」


なんていうかおもいっきりやってみるものいいのかもな。こうやってクラスの皆と話せるし。それに、なんか清々しい気分になれるし。


「よーし次も勝とうぜ!」


俺は盛り上がっている皆を見て次も勝ちたいと思った。


その後は二回戦の3年B組に二点差で勝利し、準決勝に駒を進めた。


だが、次の相手である3年C組との試合では、

「……よろしく頼む、柊。」

久木野瀬先輩がいた。


「よろしくお願いします。ていうか久木野瀬先輩ってC組だったんですね。」


「…そういえば言ってなかったな。この試合は勝たせてもらうぞ。」


そう言う久木野瀬先輩は、いつもより闘志があふれていた。この人すごそうだな……。


試合が始まると俺の予想は的中した。

久木野瀬先輩は野球経験があるらしく、投手をしては三振の山を築き、打っては菊池の球を外野まで飛ばして三塁打にしたりとめざましい活躍だった。


終わってみれば久木野瀬先輩が強すぎてボロ負けだった。こっちでヒットを打ったの菊池と坂田しかいないし。


「すごいですね、野球どれくらいやってたんですか?」


「……ほんの5年程度だ。柊こそ初心者とは思えない動きをしていたと思うが?特に一回戦の最後なんかは。」


「あはは……あれはやってみたらたまたま出来ただけですよ。自分でもびっくりしてるぐらいですし。」


俺は久木野瀬先輩と握手をした後、試合を見ていた人の中にとある人物を発見したので話しかけに行く。


「見に来てくれてたんだな冬、あと千華。」


俺は、銀髪が目を惹く美少女の冬と、長めの茶髪を後ろで一つ結びにしている美少女の千華に話しかけた。


「和人くんお疲れ様。」


千華はいつものように人当たりのいい柔らかな笑みを浮かべている。


「それにしても惜しかったね。もうちょっとだったのに。(あんたの無様な三振姿、傑作だったわw)」


「そうなんだよな、もうちょっとで決勝にいけたのに……惜しかった。(急に煽ってきやがったこいつ)」


(えっなに煽っちゃ悪い?あんた特に活躍してなくない?私たちは二回戦からしか見てないけど。)


(いや一応一回戦で活躍したんだけどな…。)


(いやー私たち見てないから知らないなーw)


なんかすっごい千華に馬鹿にされてる。

対する冬は、いつもの無表情はつらぬきながらも俺にタオルを差し出してきた。お疲れ様ってことかな?


「嬉しいよ冬。ありがたく使わせてもらうよ。」


俺はお礼を言って受けとる。冬はとても嬉しそうだった。


「よかったね冬。(ああぁぁぁぁぁ!!!なんで和人なんかに渡しちゃうのー!!冬が用意したふかふかタオルをクソ和人が使うなんてあり得ない!私も卓球頑張ったのに……(泣))」


「そういえば千華たちは何の競技に出たんだ?(へぇー千華は卓球やったんだな)」


「私たちは卓球だよ。一回戦で負けちゃったけど。(冬と私でペア組んで団体戦にでたの。私は可愛い冬を見ながら頑張ったのに……頑張ったのに!!)」


「あぁ、そうなんだな。お疲れ様。(まぁ……なんというか……お疲れ様。千華はかなり頑張ったんじゃないか?)」


「ふふ、ありがと♪(うっさい死ね!)」


表面上では普通の会話だが、テレパシーを通しての会話は俺が煽られて千華が不満をぶつけてくるというものだった。結構これ疲れるな。


「とりあえず日陰に移動しない?あんまり日向にいるのも暑いし。」


「あぁ、そうだな。そこで残りの野球の試合も見ればいいしな。」


とりあえず俺達は日陰に移動し、座る。直射日光が当たらないぶん、涼しさがある。


俺はふと冬の方に視線をおくる。冬は頬から首にかけて汗をかいていた。


「冬、ちょっとじっとしてて…」


「んっ……」


俺はタオルで冬の汗を拭く。

その際、冬は鈴の音のような声を少しだけ出していた。冬の声はぼんやりだけど初めて聞くな。なんていうか綺麗な声だな。


冬の汗を拭き終わると、冬は俺のことをじっと見てくる。


「えっと……どうしたんだ?」


「多分冬は和人くんが自分の汗を拭いていないことが気になっているんじゃないかな?(まさか冬の汗を拭いたタオルで自分の汗を拭くなんて愚行しないわよね?もしそんなことしたら………ねっ?)」


千華の言葉に冬が強く頷く。そういうことだったのか。どうしよう……拭きたくても拭けない。

拭いたら千華に殺されそうなんだけど。


俺が汗を拭こうか迷っていると、冬がタオルをもって俺の汗を拭き始めた。


「えっと、冬!?」


「あー、お返しってことかな?(あんた後で殺すわ……)」


「そうなのか、ありがとな。(いやこれはしょうがないんじゃ!?)」


千華と冬と一緒だとこうなることが多い。

基本冬は善意で行動してるし、千華が自分を好きなことも知らないからな。

対する千華は冬が俺のことを好きなことを知ってるみたいだし、自分は冬のこと好きだしな。


まぁこれはほんとにしょうがないことだとしても、俺はどう対処すればいいんだろう?これはかなり難しい問題なんだよな……。


俺は満足そうな冬と、脳内に直接罵倒をかましてくる千華を交互に見比べる。


この問題をいつか解決できればいいなぁ………


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