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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
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73話 猫の名前

新しい家族を迎え、家に帰ると葉月とティタニアがちょうど帰ってきていた。


2人はいつものように「おかえり〜」と近づいてきたが、猫を連れているとわかった途端豹変した。


「猫ちゃ〜ん!可愛いです!この子どうしたんですか?」


「あっティタニアずるい、私にも触らせてよ!」


2人は目をキラキラ輝かせて猫を愛でる。多少強引にそれを行ったせいか猫は助けてほしいといった表情をしている。


「お前ら、この子びっくりしてるから離してあげな。」


「あれ、そうなんですか?ごめんね猫ちゃん。」


ティタニアは猫を離す。解放された猫は俺の足元まで来ると体を擦り寄せてくる。感謝の印かな……?


「それにしてもその猫どうしたの?」


「千華が拾ってきた。」


「へぇー、千華ちゃんありがとうございます。私ペット飼ってみたいと思ってたんですよ。」


「そうだったのね。」


「あはは……姉さんったら孤児院の時猫とか犬とか拾ってきては飼いたいっていってましたから。あの時は孤児院ではペット禁止でしたから飼えませんでしたけど、今は夢がかなってるのでかなり嬉しいんだと思います。」


「えへへ〜アンヘルもあとで猫ちゃんと遊ぼうね。」


アンヘルの言う通りティタニアはとても嬉しそうで浮かれていた。ティタニアにまた抱かれた猫は困惑の表情で、下ろしてくれと顔で訴えていた。


「……猫と遊ぶのも程々にな。さっ、夕食の準備しよ。千華、アンヘル、手伝ってくれるか?」


「もちろんいいわよ。今日なにつくるの?」


「はい、お任せ下さい。」


「ありがとう。今日は寄せ鍋をつくるんだ。だから3人で準備すればすぐ終わるよ。」


俺は2人と一緒に鍋の準備を進める。


「俺はつみれをつくるから2人は他の食材の下処理頼んだ。」


「わかったわ。それじゃアンヘル、やりましょうか。」


「はい!」


2人が下処理をしている中、俺はつみれづくりを黙々と進める。


ティタニアがいるのもそうだけど、年末だし、具沢山の鍋を用意してあげたい。家族も増えたしな。


「あんた早いわね。もうそんなにつくったの?」


「まぁつみれつくるのは慣れてるから。汁物に入れられるし、なにより母さんと昔よくつくったからな。」


「そう……なんだ。思い出の料理なのね。」


「それが今日の鍋に入るのはなんというか嬉しいですね。ふふっ、ますます楽しみになってきてしまいました。」


俺は熟れた手つきでどんどんつみれをつくっていく。


やがて準備をひと通り終えると、下処理済みの具材を鍋に入れて煮込んでいく。グツグツと音を立てて煮込まれる具材たちはみるみるうちに美味しそうになっていく。


そして美味しそうな匂いに釣られて犬が1匹こちらに寄ってきた。


「美味しそうです……」


ティタニアだ。 尻尾があったらブンブン振っていると思えるほどにうずうずしており、目を輝かせていた。


「あっ鍋できたの?美味しそう〜」


「葉月、猫にご飯あげといて。あいつもお腹空かしてるだろうし。」


「はいよー、ご飯食べ終わったら名前付けてあげないとね。なにがいいだろ……」


葉月は猫の名前を考えながら餌を取りに行った。


みんなのご飯の準備が終わると、俺たちは手を合わせてから食べ始める。猫はしばらくの間餌の匂いを嗅いでいたが、食べられるものと判断すると少しずつ食べ始めた。


「まぁまぁいけるって言ってるわ。」


「そっか、口にあったようでなによりだよ。さて、こっちも早めに食べないと……」


「はぐはぐ、美味しいです和人くん!おかわり下さい。」


「ティタニアに食べ尽くされる。」


「確かに……」


「ほえ?」


不思議そうな顔をし、首を傾げるティタニア。俺たちは思わず苦笑いをしてしまう。


「とっても美味しいです先輩。これならどんどん食べられそう。」


「そう言ってもらえて嬉しいよ。」


「ティタニアには負けないぞー、和人おかわり。」


「うん……なんで張り合ってんのお前?」


この時間をゆっくりと堪能する。優しくて楽しい今を。



そして、夕食を食べ終わるとササッと後片付けをして居間にあるこたつに足を入れる。


こたつは温かく、自然と力が抜けていく感覚に襲われる。


「さて、ごはんも食べたし猫の名前を決めようか。じゃあ意見ある人!」


葉月がしきり、話が始まる。彼女の呼びかけに真っ先に手を挙げたのはティタニアだった。


「灰色なのでごまプリンなんてどうでしょう!」


「「予想通りすぎる!!」」


ティタニアのことだから食べ物関係の名前でくるのかなとか思ってたらほんとにそうだった。それは千華や葉月も思ったらしく、全員でハモった。


「可愛いと思うんですけど駄目……ですか?」


「まぁ一旦保留にしとくか。まだ1個目だし。」


「そうね。じゃあ次私からでいいかしら。」


次は千華が名前の候補を発表する。


「とりあえずバカ猫でいいと__」


「ふしゃー!!」


「ちょっなにすんのよ!やめなさいバカ猫!」


バカ猫と言った瞬間猫が怒って千華に飛びかかった。そりゃ怒るよ……


「ねぇねぇ、私はメカトロニクス3世がいいと思うんだけど。」


「どっから出てきたその名前。」


「わさび、なんてどうでしょう。色は違いますけど。」


「あっそれ可愛い。じゃあさ石灰石もありじゃない?」


「うん……それはないな。」


「えーじゃあト○。」


「それは色んな方面を敵に回しそうだからやめろ!!」


千華が猫と喧嘩している間にも名前の候補は沢山出てくる。葉月から出てくる名前はどれもふざけてると思えてしまうのだが。


「和人はどんな名前がいいと思うの?」


「あっそれ私も思った。このバカ猫の飼い主はあんたになってるんだからどんな名前でも納得するんじゃない?」


千華はようやく猫を捕まえたようだ。猫はじたばたしてるが逃げられない。


「そうだな……」


俺は猫に視線を合わせながらじっくりと考える。ゆっくり時間を使って名前を決めていく。変なのだったら葉月に笑われそうだし食べ物系だったらティタニアっぽいし……あれ、難しくね?


「あんたの中でパッと出てきたやつでいいんじゃない?私はどんなのでも笑わないから。」ボソッ


考える俺に千華がそう耳打ちしてくる。彼女の言葉は優しく、安心感があった。それだけで一気に決まりやすくなった。


「この子の名前はラムレーズンにしよっか。」


「ラムレーズンですか……つまりラムちゃんってことですね!可愛いです!」


「まぁいいんじゃない?シンプルだし。」


「そうですね。姉さんが勝手に略称をつけちゃいましたけど可愛くていいと思います。」


「当の本人も気に入ってるし決まりだね。」


葉月が俺の足元に目線を動かす。俺も釣られて動かすと、猫がとてとてと来て小さくお辞儀をした。


「気に入ってくれたのなら嬉しいよ。これからよろしくな、ラムレーズン。」


「にゃおん♪」


俺の言葉に対して機嫌の良さそうに反応するラムレーズン。喜んでくれたみたいでよかった。


「それじゃあ早速遊びましょうラムちゃん!」


「にゃー!?」


ティタニアが元気よくラムレーズンに迫る。それに驚いたラムレーズンはアンヘルの方へと逃げる。のだが、


「!!?」


アンヘルを前にして急に動きを止める。蛇に睨まれた蛙の様に全く動かない。


少しして我に返ったのか、ハッとするとすぐさま方向転換して千華のところへ逃げる。


「ちょっなんで私のとこ来たのよ!?なに……お前は私の下僕だから……ふっざけんじゃないわよこのバカ猫!!」


また千華とラムレーズンの喧嘩が始まってしまった。これから少しずつ仲良くしてくれるといいんだけど。



賑やかなうちにさらに1匹元気な家族が増え、これからさらに楽しくなりそうであった。


もうすぐ今年も終わる……

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