69話 クリスマス~後編~
それから、私たちは遊園地を満喫した。ジェットコースターなどの絶叫系からゆるく楽しめる乗り物まで幅広く。
私たちは時間を忘れるようにして楽しんだ。そ
れこそ閉園時間ギリギリまで。
そして現在、最後に観覧車に乗っている最中だ。
ここから見える景色はとても綺麗だ。空は暗くなり、月がのぞく先にはネオン灯によりライトアップされた眩しいぐらいの光景があった。
「すごいわね。私、夜の観覧車って乗ったことないから新鮮だわ。」
「綺麗だね。ちょうどクリスマスでそれ用になってるから見てるだけで楽しいな。」
彼は外の光景にくぎ付けになっていた。私の隣で無防備な横顔を見せて。
「この後どこかでご飯食べてから泊まる感じで大丈夫?」
「うん、全然大丈夫だよ。どこで食べよっか?」
「ファミレスにしましょ。近くにあるし。」
「わかった。あっ、そうだちょっといいか?」
「なに?」
彼の言葉に反応して彼の方に顔を向ける。
その瞬間、私は抱きしめられてキスされた。彼の顔が近く、今の状況を認識すると顔が熱くなってくる。なんとか力が抜けるのは頑張って阻止したが、それでも思考はふわふわしていた。
「ちょっ、なっなんでいきなりキスするのよ!?」
「こういう場所だったからしたくなった。嫌だった?」
「嫌じゃないけど……いきなりはびっくりするし、心の準備が出来てないから力抜けるし……とにかく反則なの!」
「そっか、ならこれからはワンクッションおいた方がいいか。」
「そうしなさいよ。……私が慣れるまでは。」
彼にキスされた時から、未だに心臓のバクバクが止まらない。この後のことを考えているからだろうか……?
まぁとにかく、頑張らないとね。
観覧車に乗ったあとは近くのファミレスで食事をとる。一日中遊び歩いたのでかなりお腹が空いていた。なのでたくさん食べて置いた。
ご飯が終わるとホテルに行く前にコンビニによる。飲み物や明日の朝食を買っておきたかったからだ。
買い物の途中で精力剤を見つけたが、どうやって飲まれせばいいのかわからないし、これ買ったらヤルことを目的に思われそうなのでやめた。
ホテルのせいで無駄になりそうだが。
「えっと……ここなの?」
目的地に着くと彼は目を丸くする。信じられないといった様子だった。
「えぇ、そうよ。千歳さんが予約してくれたの。」
「……なんとなくわかった気がする。」
「さっ入るわよ。」
「えっ!?本気で言ってるの?」
「もう予約入れてあるんだからここで休まないと店側に迷惑でしょ。いいから入るわよ!」
私は強引に彼をホテルへ連れ込み、指定された部屋に入る。
そこは、淡い桃色の光が照らすいかにもな部屋だった。ベッドは大きく、浴室にはシャワーとおしゃれなお風呂があり、そしてベッド近くのテーブルには使ってくださいと言わんばかりに避妊具が置いてあった。
「……」
「……」
私たちの間に気まずい雰囲気が漂う。まずなにから始めれば……?そうだ、シャワー浴びなきゃ……
「えっと……シャワー浴びてくるわね。」
「えっ、あっうん。……いってらっしゃい。」
私は気恥しさを隠すようにして、足早に浴室へ逃げた。
服を脱ぎ、浴室へ入ると、シャワーヘッドから出てくるお湯を頭からかぶる。
全身で温かさを感じながら、今の状況を落ち着いて認識する。
これから私は和人と……
「緊張……してきた……」
こういう経験がないためか、さっきから心臓は荒ぶりっぱなしだ。不安と期待が7:3の割合で襲ってくる。
とにかく今はしっかり準備しないといけないので、髪と体を入念に洗い、お湯でしっかりと温まる。
それが終わると体を拭いて今日のために千歳さんと選んできた下着を身につける。バスタオルは巻いておいた方がいいわよね。
「出たから、入ってきたら……?」
「うん……そうさせてもらうね。」
彼は私の姿を極力見ないようにして浴室へ逃げていった。大事にされてる感はあるけど、ちゃんと見てほしかった。
「……」
私は彼がシャワーを終えて出てくるまでの間、そわそわして落ち着かなかった。部屋の隅々まで目を配ったり、ベッドに寝ころんでみたり、意味もなくスマホをチェックしてみたり……時間が早く経ってほしいと思ってしまう。
数分後、シャワーから彼が出てくる。もちろん腰にタオルを巻いた状態で。
彼は私の座るベッドに腰掛けると口を開く。
「ほんとにやるんだよね……?」
「うん……」
「そのっ、こんな早くにやって大丈夫なのか?まだ付き合って4ヶ月だし……」
どうやら彼もその事について考えていたようだ。早いって思ってたのね。
「私もそれは最初に思ったけど、これぐらいが普通らしいわ。」
「そうなの?」
「友達が言ってたから間違いないはず。」
「そっか。……それにしても、千華ってその下裸なの……?」
「つけてるわよ……男が喜びそうなやつ。」
「そう……なんだ……」
彼は気を紛らわすように私から目をそらす。
私は彼のそんな態度になぜかムカッときてしまい、身にまとっていたタオルを脱ぐ。
「どう……似合ってる?」
少し強めな口調になってしまったかもだが、彼に今日のために用意したものを見せられた。
黒を基調とした所々透けている部分のある下着。
彼はそんな私の姿を一瞥するとすぐさま手で顔を覆い、
「すごい似合ってる。……可愛い。」
と言ってくれた。これは純粋に嬉しく、胸がときめいてしまう。
私は、トクントクンと嬉しそうな心臓と共に喜びながら彼の姿を見る。
筋肉が主張を強めない程度に、なおかつ無駄なくついており、大理石でつくる彫刻のようだった。
私は少しの間その光景に見とれていたが、不意に目に付いたものによってその興味が完全に移った。
「あんたのお腹の辺りにある傷ってもしかして、」
「あぁ、昔ついたやつだよ。跡になっちゃって消えないんだよな。」
その傷はとても痛々しく、見ていて胸が締め付けられるように痛くなる。
「これの事は気にしなくていいよ。それよりも、するんだろ?」
彼は私に近づくと、優しくそう言い放つ。
「えぇ、もちろんよ。」
「最後に確認だけど、俺なんかでいいのか?確かに俺は彼氏だけど、まだ焦らなくてもいいと思っちゃう。」
「私はあんたがいいの。いえ、和人、あなたじゃなきゃ駄目なの。」
私は彼の目を見て真摯にそう返す。
「お願い、私をあなたの物にして……下品な言い方すれば、私にたくさんマーキングして、私はあなたのものだって証明してほしいの。」
彼に抱きついて体を密着させる。さらに体を少し動かして、胸を押し当てている部分の主張を強めたり、腰を動かして彼を興奮させようと頑張る。
「千華……わかった、ちゃんと証明するね。」
彼の優しい声が響いた次の瞬間、私はいつの間にか押し倒されていた。逃げようにもがっちりホールドされていて逃げられない。
彼のギラついた目と下部に当たっている熱い感触を認識した時、私の頭は真っ白になった。
「えっと……優しくして……ください……」
最後の方は消え入りそうな声だったが、彼に届いたらしい。彼は穏やかな表情で言った。
「大丈夫、優しくするから。」
彼は私の頭を撫でると、唇を重ねて濃厚なキスを要求してくる。私はただ、されるがままのマグロになっていた。
そして、一生忘れられないであろう熱い夜が始まった……




