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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
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66話 勝負の終わり

2人の勝負はどんどんと白熱したものになっていき、かなり激しいものになった。


睦月の炎が、重力が、拳が……彼の足技が、いなしが、カウンターが、すさまじく激突する。


「戦い、すごくなってきましたね。」


「うん、そうだね。」


「あの、さっきのやり取りで気になったことがあるんですけど。どうして睦月は自分の近くでは小さな炎しか出せないんですか?」


私は天夜さんに対してそう問いかける。


「その答えは簡単だよ。彼が……炎の熱量に耐えられないからだよ。」


その答えを聞いてえっ……?となってしまう。


「彼の能力は強力だけどその反面、彼自身が能力に耐えられないんだ。もし自分の近くでかなりの熱量の炎を出したら全身を火傷するだろうね。」


「なんか……想像と違いますね。よく物語で出てくるキャラクターは平気でバンバン高火力の熱を出すのに……」


「確かに物語ではそうだけど、現実はそこまで都合よくいかない。成宮くん、彼は発火はできるけど耐熱皮膚は持っていないんだ。」


そこまで聞いて、ようやく睦月の欠点を真の意味で理解する。


「つまり、睦月の体は普通の人間と同じ耐熱性だから、近くで炎は使えないってことですよね。自分にまで被害がきちゃうから。」


「そういう事だね。和人くんはそれを早い段階で見切ったからこそ、成宮くんにとって嫌な位置、つまり彼の近くでずっと戦闘を行ってたんだよ。単純な喧嘩にするためにね。」


「和人がすごいってところもありますけど、多分アナライズも使ってると思いますよ。1、2回目の炎攻撃の時に使ってすぐさま見抜いたんじゃないかって私は思うんですけど。」


「あの能力、結構万能ですから」と葉月は語る。


「睦月のあの能力が、必ず手元から発火しないといけないってわかってる状態だったので、手元から和人自身のところにくるまでの温度変化を見てたんじゃないですかね。そしてある部分を超えた瞬間に急激に温度が上がったから、その範囲がわかったって感じだと思います。」


確かに1年8ヶ月前の時、睦月のあの能力が自身の手元からじゃないと発動できないことはわかっていた。いたけどいきなり正解の行動に導くって……


「あれが経験からくる無意識の行動なんだろうね。緋色さんの言葉が正しいのであれば、和人くんのそれは直感に化けてしまっているね。」


天夜さんの言葉と彼の戦う姿を見ていると、改めて自分が好きになった人のすごさがわかる。こんなに強くて、かっこよくて、それでいて私のそばにいてくれる……やっぱり好きだな……


「でも成宮くんも負けていないよ。あれを見てご覧。」


天夜さんの視線の先を追うと、睦月との距離を一気につめる彼の姿があった。炎を掻い潜り、射程に捉えた……と思いきや彼の動きが鈍くなり、逆に睦月の攻撃をくらってしまう。


彼は難しい顔をしながら思考を続けていた。


「さっきからずっとあの調子なんだよ。和人くんは成宮くんの重力操作を突破できないでいる。彼は和人くんが炎を避けたところを絶妙なタイミングで重力を操り、逆にカウンターをくらわせているんだ。」


「いつもなら詰められる距離が、重力を操作された影響でとどかなくなり、結果、睦月くんにとっては戦いやすくなってるんです。

……あれって神技に近いですよ。和人くんが踏み出した瞬間のコンマ1秒で操作して失速させるんですから。少しでも早いと感覚で対応されちゃいますし、少しでも遅いと、和人くんの事なので問題なく対応してしまうレンジに身を置かせてしまう事になりますから。」


「なっ、なんかすごいのね。」


ティタニアの説明をうけてなんとか理解する。こういうのはあんまりわからないんだけど、とにかくどっちも色々考えてあの攻防をしてるのね。


彼は真剣な横顔を見せていた。不覚にもときめく自分がいる。私はなに考えてんのよ……あいつは真剣勝負してるっていうのに。


「2つの能力組み合わせると厄介だな。やりにくい。」


「先輩がそう感じてくれたのならよかったです。勝ちにいかせてもらいますよ。」


睦月は余裕そうな笑みを浮かべて彼に話しかける。


「そう簡単には勝たせねぇよ。いくぞ!」


彼は息をと整え、構えなおすと再び睦月へと向かっていった。


それから彼にとって厳しい展開が続いたが、彼の拳が睦月の頬を掠めてからは戦況が変わった。


なぜか彼が押す展開になっていったのだ。炎を難なく(かわ)し懐にはいると、右拳の攻撃をフェイクにローキックをいれてから素早く左拳を振り抜く。


睦月は防御が間に合わずモロにくらって転がる。


「……もう慣れたんですか?」


「慣れたっていうか対抗策を見つけただけだ。それに慣れるのはとんでもない猛者ぐらいだし。」


「あっもしかしてバレちゃいました?」


「まぁな。お前のその能力は中心が1番影響を受けて、そこから離れるとどんどん効果が小さくなってくって事だろ?」


「当たってます、これもバレちゃいましたか。そうですね、1番重力操作の影響を受けてるのは俺です。さっきから先輩を重くした時以上の重力がかかってますから、結構重くて大変なんですよ。動きも遅くなるし。」


「アナライズでこの場にかかってる重力の変化を見てたんだけど、俺の場所と睦月の場所、あとその中間地点の重力が違うことがわかってな。その後、地点を変えて測ってをしてからこの結論に至ったわけなんだけどな。」


「その能力なんなんですか?すっごいやりにくいんですけど。」


「ただの情報解析能力だよ。別に攻撃能力もなにもない、ちゃんと制御しないとすぐさま頭パンクしちゃう厄介能力。」


「それにしてはやりにいくんですけど。先輩が相手だからですかね?」


「さぁな。」


そう言う彼は少しだけ柔らかな表情になる。


「先輩、そろそろ終わらせましょうか。」


睦月が優しげな声色でそう話した瞬間、2人の間に強い緊張感が漂った。


「そうだな、もう決めよう。」


彼が構え、睦月が炎を準備する。もう終わるのね……がんばれ。


2人が放たれた矢のように動き出す。睦月は炎をふるいながらもそれを避けられることを見越して行動する。彼は今までと特に違いもなく睦月に突っ込んでいく。


ある地点まで差し掛かると睦月が重力操作を発動して、自分を中心とした辺り一体を重くする。


「っ!!」


その瞬間彼は、小さなステップをはさみ、タイミングをずらしてから力いっぱい踏み込んだ。


「これならとどく!」


振りかぶった拳から守るように睦月が腕をクロスさせるが、彼はその外側から拳をとどかせる。殴ったあとから回るようにして繰り出される肘打ちからの掌打のコンボで睦月を撃沈させる。


彼の……勝ちだ。


「あー辛かった。」


彼はそうぼやくと、転がってる睦月のところに手を差し伸べる。


「流石睦月だよ。ほんとに手強くて負けるかもって思った。」


「……なんか悔しいですね。先輩を負かす自信あったんですけど。」


「いや、一歩間違えれば俺負けてたからな。それに、石化とか使われてたら負けてたし。偶然勝ったようなもんだよ。」


「先輩は自分の事過小評価し過ぎですよ。まぁ、なんであれ目標ができたのでよかったですが。」


睦月は穏やかな表情で彼の手をとる。


それを見届けてから私たちは2人の元に駆け寄る。


「和人やったね!大勝利じゃん!!」


「先輩と睦月の戦いすごかったっす。私とも勝負してください!」


「それは嫌だよ!?」


「睦月は惜しかったね。でも、これで楽しくなるんじゃない?」


「そうですね、冬先輩の言う通りこれから先輩って目標ができたので楽しくなりそうです。」


「もしかして後でまたやるの?出来れば勘弁してほしいんだが……」


「いいじゃないですか先輩、同じ男なんですし。後輩と仲良くしなきゃですよ。」


「あっその時はまた私が結界張りますね。」


「勝手に決められてた!?」


「ご愁傷さまね。」


こうして、能力測定は終わりを告げたのであった。





帰り道、なぜか俺はティタニアと2人で帰っていた。


本当は千華と一緒に帰るはずだったのだが、ティタニアにせがまれたので仕方なくといったところだ。


「で、なんか話あるんだろ?」


「んー、まぁそうですね。ちょっと2人で話したいことがあるんです。」


ティタニアは、いつもの柔らかい表情は崩さずに告げる。


「あの、和人くんは昔どういう家庭環境だったんですか?」


でもこの時ばかりは苦しそうな表情になっていた。


「その話、今年になってから結構聞かれるんだけど。」


「あっそうなんですか!?……すみません。」


「別に問題ないよ。聞くのは自由だし。でもそんなにバッサリだとは思わなかったけど。」


「あはは……私こういうの苦手で。」


確かにこういうしんみりした話を聞くのってこの子苦手そうではあるな。


「さっきの勝負を見て感じたんです、あんな動き、普通の家庭環境では出来ないって。かなり本格的に、それこそあらゆる時間を犠牲にしないと到達できないと思ったんです。」


「……」


「私は知っておきたいんです。そして、なにかあったら和人くんを助けてあげたい!……そう思ったんです。」


「……」


「……ごめんなさい、迷惑ですよね。私なんかがこんな。忘れてください。」


「どうして助けたいって思ったんだ?」


「ふぇ?」


「だから理由、俺を助けたいって思った理由を聞いてんの。」


「えっと、それはその……」


ティタニアは少しの間言葉を詰まらせる。と同時に困った顔をする。


やがてなにかを決心したのか、俺の目をじっと見て話し始める。


「和人くんが昔、とても辛かった経験を何度もしたのは想像できます。それで、私もそういうのと似たような経験をしたことがあるので……似てる経験をしてるから、ちゃんと助けてあげたいって思ったんです。」


そう語る彼女の表情は少し固く、辛そうだった。


「……そっか。それだったら問題ないよ。もう大体解決してるし。頼ることないし。」


「えっ!?」


「まぁでも教えるんだったら代わりにティタニア、お前の過去も話してもらう。それが条件。」


「えっと……それはその……」


「別に今話さなくていいよ。話したくなったらでいいし。それに、ティタニアにそんなこと言われなくてもやばくなったら頼る気満々だしな。」


「和人くん……」


「だからお前の好きなタイミングで話せ。お前が困った時はいつでも助けてやるよ。」


「はい、わかりました!その代わり、いつかちゃんと教えてくださいね。」


その言葉に安堵したのかティタニアは嬉しそうだった。


「はいはい。」


「それにしても……ちょっとかっこよかったですよ和人くん。」


「あーそう。」


「私に対しては塩対応ですね!!千華ちゃんでは結構嬉しそうなのに!!」


「別にいいだろ、そこは。」


「むぅー……ところで、今日の晩ご飯はなんですか?」


「サバの味噌煮。」


「やったー!」


「なんでも喜ぶなお前……」


寒い夜空の下、ティタニアの元気な声と様変わりする表情が隣にあった。

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