6話 クラスマッチの準備 ~前編~
スクールカーストという言葉があるのをご存知だろうか?
スクールカーストとは簡単にいえば学校生活での人間の順位付けだ。
誰がどの程度クラスをまとめているか、目立っているか、魅力的かなど、様々な要素を用いて順位、すなわちクラスでの立ち位置などが決まるわけだ。
上位にいくほどクラスを支配でき、好き放題にやることができる可能性もあり、なんか怖い。
逆に下位にいくといじめの標的にされることもあるから嫌なもんだ。
ネット記事でスクールカーストについてあったから軽く読んでみたがそれを読んでの感想は「めんどくさっ!」だった。
元々はアメリカにあったカースト制度がもとらしいが、日本にもカースト制度を根づかせたのは誰だよと言いたくなる。
多分知らない間に根付いたんだろうな。そうなると学生全員かな。人間ってなんでも順位をつけたがるし。
まぁでも順位つけられるんだったら真ん中ぐらいがいいな。目立つの苦手だし。
俺はスマホから視線を移し、クラスを見回し、クラスメイトと楽しそうに談笑している赤髪の少女、葉月を見つける。
あいつやっぱりすごいんだな。思えば一年の4月後半からもう葉月が中心だった気がする。
対する俺はその時なれない学校生活をおくっていた。
そういや小、中と学校にほとんど行かなかったからな。
小3からはさらにひどくなって、半年いけばいい方になってたし。
高校最初はかなり苦労した。人と接する機会が全然なくて友達をつくるのにも一苦労した。
今では友達がどうにか出来て、後輩もできたからよかったんだけどね。
キーンコーンカーンコーン
授業を知らせるチャイムがなる。みんな席に素早く座る。
その数秒後にうちのクラスの担任が教室に入ってくる。
この時間はLHRだ。今日なにやんだろ?
「えー今日は7月最初にあるクラスマッチで誰がどの競技にでるかを決めるぞ。
みんな、葉月と体育委員を中心に話し合ってくれ。」
うちのクラスの担任である五十嵐先生がそう言うとクラスが動き出す。
葉月の所に行く人、友達の所にいってどの競技にでるかを話す人、そして俺のようにどこにいけばいいのか分からず手持無沙汰になる人……俺含め2名。
でも傍から見ると孤立しているようには見えないはず。
なんでかっていったらその人俺の隣だし。
「……なぁ、俺達はどの競技にでる?」
やることもないのでとりあえず隣に話しかけてみる。
隣の人は眼鏡をしていて七三分けをしているきっちりした感じの男子だ。
名前は三宅匠、見たまんまのガリ勉くんだ。成績は常に上位で、確か中間試験の順位は4位だったはず。
真面目で秀才なのだが、ずっと勉強をしているせいか今まで友達ができなかったようだ。
「別に。余った競技にでるだけだよ。僕にはこの行事は関係ないし。」
「あっあぁ……そうか。」
話しかけたはいいものの、すぐに会話が終了したな。てか三宅、お前協調性もっとどうにかならないのか?
そんなことを思い、ふと葉月達はどうなっているのか気になり葉月へと視線を送る。
葉月の方は話し合いがスムーズに進んでいるようだ。うーんすごいなあのコミュ力とリーダーシップ。
にしても俺はなにを話すべきか………。
なにを話せばいいのか分からず俺が困惑していると、
「ねぇねぇ和人に三宅くん、何に出たい?」
葉月がそれをみかねたのかは知らないが話しかけてくれる。正直言ってすごい助かる。
「僕はなんでもいいよ。」
三宅は即答し、勉強道具を取り出す。
すごいな、今から勉強やんだ……。
「うんっ分かったよ。和人は?」
三宅を物珍しく見ていた俺に葉月が問いかける。
「俺は余ったところでいいよって言いたいんだけど……できるだけ目立たない競技で頼む。」
「はいよ、なんとなく分かってたけど。和人はもうちょい目立っても問題ないと思うよ。」
「とは言ってもな……目立つの苦手だし。」
「苦手って言ってもね。和人は運動できるんだし、私は見たいけどな和人がすごいプレーするとこ。」
葉月は笑顔でそう言うと、「それじゃあ二人は野球ね」と告げて皆のところに戻った。
まぁ野球なら外野にいれば大丈夫か。
さて、暇になったわけだけどどうしよう。とりあえず時間潰しとして少し勉強でもしておくか。
俺は机に勉強道具を出して残りの暇な時間を勉強に費やした。
4時間目が終わるとクラスは慌ただしくなる。
おそらく購買に行く人たちだろう、急いだ様子で教室を出て行く人がいた。
俺もお昼を食べに部室にでも行くか。そう思い立ち上がると隣の三宅がなんとなく気になって横目で見る。
三宅は英単語を見ながら昼食を食べていた。
いやすごいな、食べるときまで勉強とは。
俺は感心しながらも視線を三宅から戻すと、お弁当を持って部室へと足を進める。
教室を出ると昼休みということもありすごい人だ。
俺はぶつからないようにしながら部室を目指す。
やがて特別棟にやって来ると、2階へ行き、PSY部の前へと到着する。
ドアを開け、中に入ると先客がいた。
綺麗な銀髪の小柄な少女、冬が先にお昼を食べていた。
「隣いいか?」
俺は一応冬に確認をとり、隣に座る。
そして弁当を開け、昼ご飯を食べ始める。
俺は1年生の夏からここでずっとお昼を食べていた。冬もここで俺と一緒にずっとお昼を食べていた。
なんというか、いつの間にか二人でお昼を食べることが習慣になってしまい、お昼になると何も言わなくてもここに集合していた。
昼休みの冬と一緒の部室は静かだ。変な気を使って会話をしなくてもなぜだか心地よい。
ゆっくり弁当を食べていると、ふと視線を感じる。視線を横に流すと冬が俺の方をじっと見ていた。いや、正確に言うと俺の弁当のおかずを見ていた。
「……食べるか?」
「!!」コクコク
俺は自分のおかずの唐揚げを1つ、冬のお弁当に入れる。
冬は唐揚げを一口食べると少し表情が和んでいる気がした。
あっ美味しかったんだな。なんか微笑ましい。
冬と約1年半接して、少しずつ彼女の表情の変化がわかってきた。
よく見てみると表情はわりと変わるし、元々美少女だし、すごい可愛いんだよな。
うーん、となるとますます謎だ。なんで冬は俺に対しての好感度が100なんだろう?
こんな可愛い子が一体どうやったら俺なんかを好きになるんだろう?
そんなことを考えながらもう一度冬をアナライズで見てみる。……やっぱ変わらねー。
俺が考え事をしていると冬に肩を叩かれる。
どうしたんだろう?と冬を見ると、彼女は自分のお弁当に入っていたコロッケを差し出してきた。
あっお礼ってことか。
「ありがとう。」
貰おうと弁当箱を出すが冬はお箸でコロッケを掴んだまま話さない。
「えっと………これって……?」
困惑する俺をよそに冬はそのお箸を俺の口の近くに移動させる。
まさかこれって………食べさせてくれるってことか……!?
「冬、もしかして食べさせてくれるの?」
「…」コクッ
どうやらそうらしい。
ヤバイどうしよう、こういうこと初めてでどうしていいのか分からない。
とりあえず食べていいんだよな?
「…あーん……」
コロッケを口の中に入れて噛むと中からクリームが出てくる。
すごい美味しい。
なめらかな舌触りのクリームはスッと溶けていく感じですんなり食べられ、案外クリームが濃厚で満足感がある。
「すごく美味しいよ!冬、よかったらこのクリームコロッケの作り方教えてくれないか?」
「!!」
冬はちょっと嬉しそうにスマホをいじり始める。
『いいよ。作り方教えてあげる。』
「ありがとう。」
『まずね__』
俺は冬からクリームコロッケの作り方をメッセージアプリを使って教わった。
冬は丁寧に教えてくれ、とても分かりやすかった。
「ありがとう、とっても参考になったよ。」
『うん!』
俺が笑顔でお礼を言うと、冬は照れているのか少し頬が赤かった。
やがてお昼を食べ終わり、昼休みがあと10分程度の時、俺と冬は部室を出て教室に戻る。
その道中、
「あ~夢宮さんだ~。」
「ちっちゃくて可愛い~。」
「ていうか隣の人誰?」
「えっと…確か柊くんじゃなかった?」
「なんで一緒にいるんだろうね?」
「さぁ?…もしかして付き合ってるとか!?」
「「キャー!」」
女子達の隣を通りすぎた時にそんな会話が聞こえてくる。
やっぱりそういう誤解ってうけるよな。
冬はどんな顔して聞いてたんだろう?と思い見ると、全くの無表情で気にしていないようだった。
いつも通りでなんか安心するな。俺も聞き流すくらいでいいよな。
俺は冬を見習って決意?を固めていると2年B組の教室についてそこで冬とわかれる。
「それじゃまた後でな。」
教室に入っていく冬にそう言って見送ると、自分の教室である2年A組に帰る。
帰ってきて自分の席に着く。
そのあとスマホを開くと着信がきていることに気づいた。
そこには、
『今日はありがとう(*´∀`)♪和人の唐揚げとっても美味しかったよ。』
なんてことが書いてあり、見た瞬間嬉しくなる。
午後の授業も頑張ろう。不思議とそんな気持ちになる。
クラスマッチは……まぁ少しは頑張るか……。せっかくの行事だし。
今の俺にはクラスマッチのことや自分のことでの悩みがたくさんある。大きいことから小さいことまで様々。
でも、悩みがたくさんあるというのはある意味恵まれていると思う。
なぜなら、それだけ自分に成長の余地があるように思えるからだ。
今は少し大変だが、一つ一つのことをしっかりやろうと思えた。
そして、梅雨明けに向かっていく。




