58話 女子会+男1人
不毛な戦争から10分後、俺はどうにかあの男子から最小限の被害で逃げてきた。
逃げる途中で何人か足をはらって転ばせたけど。
で、今はなにをしているのかと言うと、財布とスマホだけを持って自販機の傍のベンチでひと息ついていた。
「疲れたー」
天井にむかってそう呟く。風呂の時間ってリラックスできるのだが今日はまったくできなかった。
「どっと疲れが出てきたな。」
俺はさっき買った缶ジュースの中身をあおる。
それからひと息つくと、一旦伸びをして立ち上がる。
戻るかな……そう思った時、
「あっ和人、ここにいたんだ。」
偶然にも葉月と会い声をかけられる。
「どうしたのこんな所で?」
「風呂の時に男子たちに追いかけられたからここで休んでた。そっちは?」
「私は喉かわいたからちょっと買いにね。あとついでにみんなの分も買いに来たんだ。」
「それはご苦労さまだな。」
「えっと私はコーラで。ティタニアと冬がオレンジだったかな。千華はいらないって言ってたからこれで全部だね。」
「みんなって冬とかの事だったのか。」
「そうだよ。今みんなで集まって女子会をしてるんだ。和人も来るでしょ?」
「いや俺はいいよ。女子部屋に入るのって見つかったら反省文だった気がするし。」
「そこら辺はだいじょーぶ。あらかじめ江川先生に確認とったから。面白そうだからオッケーだって。」
「あの人学年主任じゃないよね!?ほんとに大丈夫かな……」
「いいじゃん最悪見つからないようにすればいいんだし。ほら行くよ。」
俺は葉月に引っ張られる形で千華たちがいる部屋に連行される。
その部屋には寝巻き姿の千華と冬とティタニアがいた。
みな普段は見せないような姿でリラックスしていて、その光景は眼福ものだった。これを男子たちが見たら卒倒する者も出てきそうだ。
「あっ和人くんだ。いらっしゃいませー。」
「あんたも来たのね。どうせ葉月に連れてこられたんだろうけど。」
「和人いらっしゃい。千華の事たくさん可愛がってあげてね。」
「ちょっ冬、なに言ってるの!?」
ふわふわとしている冬にからかわれて困惑する千華、そんな千華を楽しそうに見つめるティタニアがそこにはいた。
「さっ和人も座って座って。お菓子もあるから。」
買ってきた飲み物を配り終えた葉月はお菓子の袋をいくつか開ける。
ポテチやスナック菓子、チョコなどが部屋の明かりを受けてキラキラ輝く。
今の状況ともあいまって、ここは夢のような空間だった。
「で、なんで俺は呼ばれたんだ?」
「えっそんなのこうして一緒にお菓子食べたいからだけど。」
「あと和人がいないと千華が寂しそうだから、も追加で。」
「別に私はそんなんじゃないし!冬変な事言わないでよ……」
「和人くんもチョコどうぞ。美味しいですよ。」
「ティタニア、お前口元汚れてるぞ。ちょっとじっとしてろ。今拭くから。」
俺は近くにあったウェットティッシュを使ってティタニアの口元を拭く。
その間ティタニアは「んー」と言いながら大人しく拭かれていた。
「ほら取れた。」
「ありがとうございます和人くん。」
「あんたは急いで食べ過ぎなのよ。お菓子は逃げないんだからもっとゆっくり食べればいいのに。」
「えへへ〜そうですね。あっ、そうだ!」
ティタニアは突然なにかを思いたようで、いきなり声を上げる。
「ここで集まったのもいい機会ですし、私の能力でみんなの前世を見てみませんか!?」
ティタニアはいきなりそんなことを口走る。俺を含めた全員の頭の上にハテナマークが浮かぶなか、ティタニアはやや興奮気味に話す。
「私の能力はその人の前世も見ることができるんです。どうです、楽しそうでしょう!?」
「確かに。私は賛成!自分の前世気になる〜」
「葉月は予想通りの食いつきするな。まぁ俺も賛成だけど。」
「あんたもなの?……それじゃあ私も。」
「私ももちろん賛成だよ。まずは誰から見ようか。」
全員乗り気だった。ティタニアはそんな俺らを見て嬉しそうにする。
「じゃあまずは葉月ちゃんから見ましょう!どれどれ〜……おぉ凄いですね!葉月ちゃんの前世は中世ヨーロッパの女貴族です。」
「そうなの?なんか照れるなぁ。」
「かなり裕福で何不自由ない生活してたみたいです。死因も当時の平均寿命での老衰死なので変な事もないですね。」
「えっこれ死因まで見えるの?和人とか変な死に方してそう。」
「なんでそうなんだよ。」
なぜか葉月に「変な死に方してそう」と言われたのにはツッコんでおいた。「馬に蹴られて死んだかもね」と千華にボソッと言われたことについてはスルーしておこう。
「次は冬ちゃんですね。……冬ちゃんの前世はどうやらかなり偉いところの側近の人みたいですね。能力としてはかなり高くて雇い主の方からも気に入られていた様です。ちなみに死因は流行り病です。」
「死因まで教える必要あるか?」
「それにしても冬って前世も凄かったのね。」
「そんなことないと思うけど。流行り病で死ぬなんてなんかやだな。」
「さぁ最後は2人ですよ。2人はカップルなのでいっぺんに見ちゃいます。ふむふむなるほど……凄いことがわかりました!」
頬をやや蒸気させたティタニアが腕をブンブンと縦に振って話す。
「なんと和人くんと千華ちゃんの2人は、前世でも夫婦でした!!」
「「なっ!?」」
俺と千華はお互いに顔を見合わせたまま固まってしまう。
「おぉ、おめでとう。今世も夫婦だしよかったね。」
「まだ夫婦じゃないわよ!」
「まだって事は将来的にはなるんだ。」
「あっえっとそれは……」
千華は顔を赤くしてそんなことを言うが、自分の放った言葉に気づいてさらに顔を赤くする。もう目はぐるぐると回っている様で、まともに思考できる状態ではないようだ。
「葉月その辺にしとけ。ほらっ千華もう大丈夫だぞ。」
俺が千華を落ち着けようとすると、彼女はいきなり抱きついてきた。
顔を見せたくないのか俺の胸にうずめている。でも耳まで真っ赤なので、どのくらい恥ずかしいのかはものすごく伝わってくる。
千華は「んぅ〜」や「〜//」などと唸っているので、頭を撫でて落ち着ける。……話は続けるか。
「それにしてもティタニア、本当なのか?俺と千華が前世で夫婦だったって。」
「……そうよ、にわかには信じられないわ。」
落ち着いたのか、俺から離れていつもの冷静な顔つきに戻る。
「えーほんとですよ。だって私確かに見ましたもん。和人くんと千華ちゃんの前世が仲良く子供たちと過ごすところ。」
「てことは子供いたんだ。ラブラブだね。」
「そうですね。私から見ても妬いちゃうくらい仲睦まじかったですよ。」
「もっと詳しく教えて。和人と千華はどうしてたの?」
「なっなんで冬が食いつくの……?」
冬の異様な食いつきに千華は若干戸惑っていた。
「それでですね、まず和人くんと千華ちゃんの前世は明治時代の人なんですけど、和人くんの家はかなりの名家で、成人前にはすでに許嫁も決まっていた状態だったんです。
でもそれは千華ちゃんじゃなかったんですけどね。」
「そうだったんだな。」
「そりゃあだって千華ちゃんの前世は貧乏な農家でしたし。当時だと親が結婚相手を決めていましたし、それ相応の身分の女性がくることはわかりきっていましたからね。」
「それじゃあなんで私は和人と結婚できたの?」
「それはもちろん和人くんが頑張ったからです。
ある時和人くんと千華ちゃんは出会うんですけど、その時千華ちゃんの美しさに一目惚れしてしまうんです。
そこから和人くんは時間の折をみては何度も何度も千華ちゃんと会ったんです。
そして千華ちゃんもこんな自分に何度も会いに来てくれる和人くんにどんどん惹かれていって……なんと親に内緒で付き合っちゃうんです!!」
「和人やるぅ〜」
「いや、前世の話だろ。てか千華の前世もやっぱり綺麗だったんだな。」
「はい、そうですよ。でも性格も今と似ていて、周りにツンツンした態度とっていたので最初は和人くんの事も邪険に扱ってましたよ。」
「へぇーそうなんだ。」
「千華の性格あんまり変わらないんだね。」
「ちょっ、2人ともなんで私の方をじっと見るのよ。」
俺と冬がこんな感じの千華が前世か〜と千華を見ながら想像していると、千華が口を開く。
「てか和人の方はどうなのよ。こいつの前世の容姿とか性格!そこが気になるわ。」
「和人くんの前世は結構かっこいいですよ。それでいて優しくて思いやりのある人です。仕事もちゃんとできるので街の女性からかなりの人気があったみたいです。」
「ふーん、そうなんだ。」
なにかを想像する千華。少しするとふふっと口元を緩ませる。
「さぁここからが本題ですよ!ここからは長くなるのでくつろいで聞いてくださいね!」
ティタニアの言葉で俺たちはお菓子を食べたり膝を崩したりしてリラックスする。
3日目の夜はまだまだこれからだ。




