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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
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57話 大浴場にて

午前中は平和に終わった。


千華と一緒にサメやクラゲを見たり、とても大きなジンベイザメをみんなで眺めて写真を撮ったりして、正直楽しかった。


ちなみに葉月はここでも記念撮影をして、PSY部の2年組としての思い出も遺していた。


お土産コーナーでは、ティタニアが大きなジンベイザメのぬいぐるみ(全長30センチ程)を買ってきたのにはびっくりしたが、それ以上に葉月がペンギンのぬいぐるみを買っていたことにびっくりした。


俺が誕生日の時に貰ったのと合わせて2体になったんだけど。葉月は一体そのペンギンをどうするつもりなんだろう。


楽しい時間というのは本当にあっという間で、体感的には1時間というところで午前が終わってしまった。



午後になり、名残惜しそうな千華の頭を軽く撫でてから別れると、俺たちはガラス工房に向かう。


その途中のバスの中、ティタニアがしつこいくらいに持っているジンベイザメを俺の頬に押し付けてくる。


「和人くんどうですか?これ可愛くないですか?」


「あんまり押し付けるな。ジンベイザメがよく見えないし。」


「よく見なくても可愛さはわかりますよ。このモフモフとした感じとか、ゆったりとした顔とかよくないですか?」


「うん、まぁ、そうだね。」


ティタニアは顔を綻ばせてジンベイザメで遊ぶ。よほど気に入っているようだ。


「ふへへ〜ジンベイさん可愛いです。そうだ、和人くんにはジンベイさんの可愛さで癒されてもらいましょう。」


「ちょっと待てジンベイザメで叩くな!」


ティタニアは手に持っているジンベイザメで俺をぼふぼふする。痛くはないけどやめてほしい。


「がおー」


「いやジンベイザメはそんな威嚇はしないだろ。」


「和人くんはわかってないですね。こういうのは想像力を働かせるんですよ。もしもジンベイザメががおーって威嚇したらを考えて見てください、ほらっ可愛いでしょ?」


「……今にも喰われそうな感じはするな。」


「可愛いって言ってくださいよー」


「わかったからぼふぼふすんな!」


ティタニアの攻撃を手で防御しながら、突如として感じた視線の方向をチラッと見ると、ティタニア派の連中がかなり凄んでいた。


これはそろそろ切り上げないとまずいことになりそうだ。


「とりあえず、遊びはもう終わりな。」


「えぇーもっと遊んでくださいよ〜」


「いやお前にはジンベイザメがいるだろ。」


「むぅ……和人くんともっと遊びたいのに。」


ティタニアは見るからに不満そうで、口を尖らせていた。


「遊んでくださいー!」


ティタニアはジンベイザメを俺の方にぐいっと押し付けて「遊べ」と主張する。


「ちょっ、押し付けるな!」


「いいじゃないですか。ジンベイさんと話すだけでいいので。楽しいですよ。」


「いや遠慮するよ。俺はいいから他の人と遊んでくれ。」


「嫌です!」


「なんで!?」


「だって和人くんに遊んでほしいんですもん。」


困惑する俺に拗ねた子犬のような顔をするティタニア。そういう顔されると断りにくい。


「わかったよ……それなら少しだけ遊ぶか。」


「わーいやりました〜」


笑顔になるティタニア。表情がコロコロ変わっているので見ていて飽きない。


「…………」


まぁとはいえ、あとで変な目にはあいそうだな。 面倒なことにならなければいいな……いや無理か。




ガラス工房に着くとそこで手作りのコップを作る。


みなそれぞれ違ったオリジナルの物を作っていく。


「〜♪」


ティタニアはシンプルながらとりあえず大きなコップを作っているようだ。


葉月はというと、こっちはこっちで側面にペンギンが見えるかわいいコップを作っていた。ここでもペンギンを使っているのには驚いたが。どれだけペンギン好きなんだ。


俺は家でも使えるように一般的なコップをイメージして作った。なかなかの出来だと思う。


そして、完成したコップは丁寧な包装で手渡され、持ち帰る。割れる可能性があるし慎重に持って帰らないとな。




それから帰りのバスではほとんどの人が寝ていた。いつも以上にはしゃいでしまっていたし、結構疲れてる人がほとんどだろうな。俺もちょっと眠いし。


「……うへへ〜ジンベイしゃん……」


でもだからといってもティタニアが俺にもたれかかって寝てることが不思議で仕方ないんだが。


今のティタニアはだらしない顔してジンベイザメを抱いて寝ていた。ちなみにヨダレも垂らしている。……今俺の服についてる。


葉月に助けを求めようとしたが、あいにく葉月も寝ていたため無理だった。


これじゃあ寝たくても二つの意味で寝られない。


「それにしても、こいつどんな夢見てるんだ。」


間抜け面のティタニアを見る。見るからに幸せそうな顔なので、いい夢であることには変わりないのだろう。


「ふえへへ〜お餅が空飛んでます〜」


「どういうことなの……」


ティタニアの発する寝言がよくわからない。話を聞く限りだとだいぶファンタジーだな。


「まぁ……こいつの寝言を聞くのも面白いし、起こすのも悪いからそっとしておくか。」


それからしばらくの間ティタニアの発する寝言に耳を傾けるのであった。




そして、今日泊まるホテルに着くと、昨日、一昨日と同じように部屋に荷物を置く。


さらにそこから美味しい夕食を食べて、風呂の時間になる。


今回は大浴場を使うため、クラスごとに時間を決めて素早く入る。俺たちA組は最初なのですぐさま移動する。


「いやー大浴場なんてすごいよな。アニメとかで出てくる和風なやつじゃないけど。」


「いやそれでもこうしてみんなで入れるのはありがたいよな。」


「うんうん」とほかの男子が頷く。


俺と三宅はそんな男子たちを1歩引いた場所から眺めていた。


大浴場はアニメでよく見る露天風呂系ではなく、タイルの床の銭湯の様な場所だ。


俺たちはそうそうに体を洗ってお湯に使っていた。


「沖縄で風呂に入れるとは正直思ってなかったな。なかなかいいお湯だ。」


「だな。こうしてると疲れもとれるよな。」


俺は三宅と話しながらゆったりとくつろぐ。


明日で修学旅行も終わりだし、ちゃんと楽しんでおかないとな。この後千華と会えればいいんだが。


「柊、ちょっといいかな。」


「ん?」


千華の事を考えていると不意に男子たちに取り囲まれていた。なんか嫌な予感がする。


「お前にちょっと聞きたいことがある。こういう場でしか聞けない重要なことだ。」


「いやなんだよ?」


「お前はずばり、千華ちゃんとどこまで言ったんだよ!」


千華派の人間である菊池が俺に向かって叫ぶ。


これにはやはりというべきか……嫌な予感が当たった。


「いやどこまでって言われてもな。なんで言わなきゃいけないんだよ。」


「それは気になるからに決まってるだろ!」


「そうだ、我らがアイドル千華ちゃんにどれだけ汚いことをしたのかをとっとと吐け!!」


同じく千華派の坂田が興奮した様子でこちらに詰め寄ってくる。


「汚いって酷くね?」


「当然だろ!我らの天使に手繋ぎやキスなど断じて許されぬ行為だ!さぁどこまでいったんだ!?手繋ぎか?キスか?触りっこか?まさかそれ以上か!!?」


「ちょっと落ち着けお前ら。」


俺はこいつらを落ち着けようとしたが、さらにヒートアップするばかりで止まらない。


「それと柊ー!お前ティタニアちゃんとも親密だよな!?それについても教えてもらおうか!!?」


「いやそれよりも冬ちゃんの告白を断った事についてしっかり聞かないと駄目だろう!!ただでさえ告白されるという重罪を犯しているのに、あまつさえそれを断るなど死刑だ!!」


「いやいやここは葉月との関係を今一度確認するべきだ!仲が良すぎる!」


俺の目の前で起こっていることになんと言っていいのかわからなかった。どう収拾つければいいのこれ?


「葉月とは幼なじみだから仲が良いだけだよ。それ以上の感情はもってないし。

冬の告白を断ったのは千華が好きだからだし。

ティタニアに関しては俺も知らないよ。あいつがいつの間にかこっち来るだけだし。


……千華に関してはキスまですすんだ。」


「なにー!!?キスまでだと!!?」


「俺たちの天使が唇を奪われたなんて……」


「「とてもじゃないが信じられない!!!」」


「柊〜お前はどこのギャルゲーの主人公だ。どうして美少女4人とここまで仲良くできる!」


「「そうだそうだ!!」」


目の前のカオスな状況にただただ呆然としてしまう。どうやって逃げよう。


「とにかくだ柊。そこまでモテるのなら少しぐらい力をわけてくれ!」


「いやなんだよその意味わからない要求は。」


「お前をどうにかすれば俺たちもモテるはずなんだ。」


「そうだ!こいつをぼこぼこにすればいいんだ!」


「それだ!!」


「それだじゃないだろ!?それ普通に問題だからな!?」


「問題だろうと関係ない!俺たちはモテるために戦う!」


「今こそモテない男の意地を見せる時だ!」


「「おぉー!!!」」


ものすごい気迫でこちらに迫ってくる三宅を除く男子一同。この場合は1人、2人は転ばせるのはしょうがないか。とりあえず人命が優先だ。


「ちょっ、君たち馬鹿だろ!こんな所で騒ぐなよ!」


「行くぞー!」


「「おぉー!!!」」


三宅の静止も虚しく突撃してくる。しょうがないのでこちらも構えて迎え撃つ。



今ここに、誰も得しないただただはた迷惑な戦争が幕を上げたのであった。

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