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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
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56話 修学旅行3日目

修学旅行3日目、今日はクラスごとに行動する。


まずはどのクラスも共通で美ら海水族館に行き、そこで集合写真や自由行動を午前中いっぱい行う。


午後は、あらかじめとってあったアンケートを元に、クラスごとに行く場所を決めてある。俺たちA組はガラス工房に行くことになった。


そこでは自分たちのコップを作ることができ、なかなか貴重な体験ができそうな所だ。


今現在、俺たちは美ら海水族館に来ていた。


どうやら、入口前の広場で集合写真を撮ってから中に入るようだ。


特に何事もなく写真を撮ってもらった俺たちは、先生からチケットを貰って水族館の中に入る。


「なぁ葉月。ちょっといいか?」


「いいよ。どうしたの?」


その道中、俺は葉月にちょっとした相談事をしていた。


「なんか朝から千華に睨まれてるんだけど、俺なにかしたかな?」


「あーその事ね。」


葉月は訳知り顔でこちらを見る。そしてニヤッとして笑う。


「結論から言うと、あの子ヤキモチ妬いてるんだよ。昨日和人は冬ちゃんと一緒に砂浜歩いてたでしょ?」


「あぁ、そうだな。」


「それで、千華はその事知って自分を誘ってくれなかった事と、他の女の子と2人っきりになった事に怒ったってわけ。」


「……なるほど、そうだったのか。」


通りで朝から睨まれてると思った。朝ホテルで会ってもなにも言わずにただ睨みつけてたのはそのせいか。


言われてみるとあの睨み方はなにか不服そうな感じだったし、これで原因はわかった。


あとはちゃんと謝ろう。この時間一緒に行動する約束してるし。


「ちゃんと千華に謝るんだよ。じゃないと嫌われちゃうかもだし。」


「もちろんだよ。嫌われるのは……やだし。」


「和人くん、今すっごく辛そうな顔でしたね。」


「多分想像して辛くなったんだよ。和人千華のこと大好きだし。」


「葉月は余計なこと言わなくていいから。」


俺たちは入ってすぐの場所で千華と冬を待った。


それからすぐ、千華と冬の2人が急いだ様子でこちらに合流してきた。


「昨日はごめんな千華。夜に誘わなかったばかりか冬と2人っきりになっちゃって。不安にさせちゃったよな。」


「……別に不安になってないし。私はただ怒ってるだけだから、あんまり思い上がらないことね。」


「うっ……ごめんなさい。」


「素直じゃないな〜」


「……なによ?」


「私ら昨日女子会したんだけどさ、そこで千華が冬がいないって不思議そうに言ってて、とりあえずlineしてみたら『今和人と散歩してるよ。あと少ししたら帰るね』って送られてきたんだ。

そしたら千華がさ、顔を青くして不安そうな顔になっちゃったんだよ。」


「ちょっと葉月、変なこと言わないでよ!」


「私もあれを見たんですけど、あの時は素直に和人くんのバカヤローって思っちゃいました。あの千華ちゃんはとても気の毒で……」


「ティタニアまでなに言ってるのよ!?」


「えっ!?そうだったの!?」


「そうだよ。千華ってこう見えて結構独占欲強めなんだ。自分の好きな人が他の女の人と一緒にいるとものすごく不安になっちゃうくらいには。」


「冬まで変なこと言わないでよ……私そんなんじゃないから。」


「ごめんな千華。寂しい思いさせちゃったな。」


「あんたも真に受けるな!そして撫でるなー!!」


千華は恥ずかしいのか怒っているのかわからないくらいに顔を赤くし、こちらを威嚇する。


「えーでも本当のことじゃん。和人に知ってもらえた方がよくない?」


「……その事については別に私は和人に知られなくてもいいし。」


少し間を開けてから話す千華に、素直じゃないな〜という感想をいだいてしまう。


「……もしかして、冬はこのためにわざと和人と2人っきりになったの?」


「んーまぁそうだね。千華の内に秘めた強い想いを和人にも知ってもらいたかったし。いい機会だと思ってやったのが本音かな。」


「そんなことしなくていいって言ってるのに。」


「だっていつも私に和人の事相談してくるし、私も力になりたかったんだ。」


「そうなのか、知らなかった。」


「うん、それで最近の相談内容は、和人にもっと素直になるにはどうしたらいいかっていうものだったんだ。」


「ちょっと、それ言わない約束じゃ!?」


「ふふっ、ごめんね♪」


冬にしては珍しく、悪戯っぽく笑う。


「……なんか、最近冬が私に対してちょっと意地悪になってるんだけど。」


「一応千華のこと考えてくれてるみたいだけどな。」


「それはありがたいんだけど……ねぇ?」


千華の言いたい事はなんとなくわかる。自分のことを考えてくれるのは嬉しいけど、俺に知ってほしくないところまで教えちゃうのはやめてほしい……そういう事だろう。


「大丈夫。俺は千華のそういう所が知れて嬉しかったから。」


「だから、」と言って千華を抱き寄せる。


「今まで以上に大事にしたくなった。」


「ちょっと、離しなさいよ。」


「ごめんそれは無理。絶対離さないから。」


「うぅ……でっでも、他の生徒に見られるのは恥ずかしいから……せめて手を繋ぐだけで許して。」


「でも今は見られてないからいいだろ?」


「……うん……//」


千華は押しに負けたのか、大人しく俺に抱き寄せられた。


その顔はかなり赤く、見ていてとても可愛かった。


「千華って好きな人からグイグイこられるとコロッといっちゃうタイプなんだね。」


「そうみたいだね。まぁでも今までの千華を見てたら予想はできちゃうよね。」


「千華ちゃんがあんなに顔赤くしてるところ初めて見ました。なんか可愛いですね。」


「あんたら茶々いれないでよ!」


「ほら千華、怒んないの。千華は笑ってる方が可愛いんだから。」


「うっ……あんた今日変よ?」


「和人今日はグイグイいくね〜」


「確かにそうですね。今日の和人くんなんか女たらしって感じがします。」


「おい言い方、なんか悪意を感じるぞ。」


「そう思われても仕方ないんじゃない?あんたがこんなに積極的になるのなんて初めてだし。」


「ガツガツくるから対応に困る……」明らかに戸惑った様子の千華を見て「あっ、結構積極的だったんだな」と改めて思える。


「困らせちゃったならごめん。さっきの千華の話と昨日のある事をうけてさ、『失いたくないものはちゃんと大事にしよう』って思えたんだ。」


「ふーん……まぁいい心がけなんじゃない?」


顔を赤くして腕を組み、俺から視線を僅かばかり逸らした千華がそう発言する。


「あれすっごい嬉しいやつだよきっと。」


「照れ隠しってやつですか。」


「まったく、千華は素直じゃないなー」


「外野は黙ってなさいよ!」


葉月たちを威嚇するように睨む千華。その姿はどことなく猫っぽかった。




『なにかを失ってしまうような窮地に立たされてしまう』、そんな占いが昨日でたばかりだ。


当たるのかもわからないし、そもそも当たったとして、なにを失うのかもわからない。


でも、なにを失うにしても、多分その直前で嫌だ!って思うのだろう。


だったら今のうちからしっかりと大事にできるものはしておきたい。想いを……強くしておきたい。


もしこの先、そんな場面が訪れた時に、その窮地を脱出できるように。


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