53話 班行動
「やっほい、着いたぞー!」
タクシーに乗ること約1時間、ようやく目的の場所に着いた。
「ここからあっちに行くと今帰仁城跡みたいですね。あっちに行くと、」
「資料館?、みたいだな。」
ここにはどうやら資料館と城跡があるようで、結構貴重なものが見れそうだ。
「柊、あそこに券売所があるみたいだ。あそこで入場料を払わないと見学できないようだぞ。」
「あっまじか、それじゃあ先に入場料払いに行くか。」
俺たちは早速、入場料を払いに行き、そこでパンフレットも貰う。
「さて、先にどっち見る?」
「資料館からでいいんじゃない?城跡の方が面白そうだし。」
「私もそう思います。楽しみはあとにとっておきたいので資料館に行きましょう!」
「僕はどっちからでも構わないぞ。」
「そっか、じゃあ資料館から行くか。」
意見の多い方から行くことにする。
資料館の中では今帰仁城が存在していた当時の状況が事細かに記されている記録や、当時を再現した映像を見ることができた。
「おぉーすごいね。」
「なるほど、これは勉強になるな。」
「うわぁこれ漢字がいっぱいですね。なんて読むんですか?」
「……俺もわからない。でも特殊な読み方しそうだよな。」
「ねぇみんな、ここ地下があるみたいだよ。行ってみようよ!」
葉月は、見学途中で地下の存在に気づき興奮気味に話す。
「下の階なんてあったんだな。行ってみるか。」
「よーし私が一番乗りだー!」
「葉月ちゃん待ってください〜」
「お前ら走るんじゃねぇー!」
注意するが葉月とティタニアは止まらない。早いところ追いかけた方がよさそうだ。
「三宅、俺らも行くか。」
「だな、でも走ると危ないからゆっくり行こう。」
俺たちもすぐさま葉月たちを追いかける。
階段を降りた先に待っていたのは展示室だった。
ここには昔使われていた農具や舟、陶器だけでなく、沖縄に生息している虫の標本までもがあった。
ここは1階の展示よりも目玉なのでは?と思ってしまう。
ここの道具を見れば、昔の生活が容易に想像できるので、単純な好奇心が刺激される。
2人は部屋に入ったところで止まっていた。どうやら見とれているようだ。
「ここすごくない!?隅々まで見て回りたい!」
「そうですね!早速あっちから見ましょう!」
テンションがいつにも増して高めな2人を「そんなに走ると転ぶぞ」と思いながら眺める。
「俺たちも見て回るか、三宅。」
「あぁ、そうだな。」
そうして、俺たちはこの部屋の見学を開始した。
「やっぱり色々な種類の農具や陶器が並んでるな。少しずつ使っていくものを変えたのかな?」
「用途によって適したものを使ったんじゃないのか?これらの農具に目立った変化はないし。」
「かもしれないな。」
三宅と昔の生活に想像を膨らませていると、
「和人くん、助けてください!」
ティタニアが思いっきり俺に抱きついてきた。それにより、彼女の凶悪な胸が俺の体に押し付けられる。えっ、なにごと!?
「ちょっ、どうしたの!?てか急に抱きついてくるな、危ないから。」
「うぅ、すみません。でも怖かったのでつい。」
ティタニアは俺から離れると、涙目で腕をブンブン振る。
「怖いってなんのことだ?」
「それは……黒くて、すばしっこくて、気持ち悪い虫のことですよ!」
「あー……」
ティタニアはどうやらGに怖がっていたようだ。でもどこに?
「葉月ちゃんが今いるところにそれがいたんですけど、怖くて逃げてきました。」
ティタニアの説明を受けて葉月の元へ行くと、そこには虫の標本がズラリと並んでいた。
ここにはカブトムシやクワガタなどの他に、問題のGもいて、確かに気持ち悪いと思ってしまう。
「標本だし動かないから大丈夫じゃないか?」
「それでも怖いんですよ!」
そう話すティタニアは顔を青くしており、びびっているのが丸わかりだった。それに、俺の後ろに隠れているし。
「ティタニアってかなりこいつ苦手なのか?」
「もちろんです!私、これがいっちばん苦手なんです!もしでたら絶対守ってくださいね!!」
ティタニアはかなり真剣味のこもった声で訴えかける。
こいつ孤児院ではどうしてたんだろ。あっちでもでるよな?アンヘルが退治してたんだろうか。
「ティタニアすごい怯えようだよね。」
「あぁ、俺の肩をギューって掴んで離さないんだけど。これはここに長居しない方がよさそうだ。」
「だね、早く出よっか。おーい三宅くん、そろそろ出るよ〜」
三宅にも声をかけてすぐ外に出る。
ここから城跡を目指して歩く。
「ほらティタニア、もうあいついないから離れような。」
「すみません和人くん、迷惑かけちゃって。」
「いやいいよ。人の苦手なものなんてそれぞれだし、今回はたまたまティタニアの苦手なものがあっただけだから。」
「ありがとうございます。よーし今度こそ楽しみますよ〜」
いつものテンションに戻ったティタニアを見てホッとする。ようやく離れてくれた。
実は、ティタニアが俺の背中で隠れている間、彼女の胸が思いっきり押し当てられてて困っていたのだ。……あれは心臓に悪い。
そんなことを考えていると城跡にたどり着いた。といってもまだ入口だが。
「ここからが本番だよね。早速階段を上がる、前に……」
葉月はポケットからスマホを取り出してこちらに掲げる。あっ、もしかして。
「写真撮ろ!」
「だろうな。」
「もちろん撮りましょう!」
「ほら三宅くんもこっち来て。」
「あっ、あぁ……」
テンションが高い2人に、朝言われていたため特になんの驚きもなくすんなり写真に写る俺、葉月に引っ張られるかたちで参加する三宅で記念写真を撮る。
パシャ、シャッター音と共に撮られた写真に写る俺たちはとても楽しそうで、いい旅の思い出の1枚となった。
あれから、俺たちは階段の先に進んで今帰仁城跡を見て回る。
途中、石碑や火之神の祠と呼ばれる場所で写真を撮ったり、まじまじと見たりした。
奥まで進むとそこは見晴らしのいい丘だった。
「すごいねーここからの景色結構綺麗だよ。海も見えるし。」
遠くに見える海や近くの自然をスマホでパシャパシャ撮っていく葉月。
「どうやらここがゴールみたいだな。」
「あぁ、せっかくだしここで少し休憩してから次に行こうか。」
「賛成です!わっほい!」
ティタニアは海が見えて嬉しいのか犬みたいにそこらをぴょんぴょん跳ねている。
「ティタニアすごい楽しそうだね。」
「そうだな、見てて和む。」
「なんか犬っぽくて可愛いよね。」
「和人くんも一緒に遊びましょうよ。ほらっ、」
俺は、近づいてきたティタニアに引っ張られる形で振り回される。
「ちょっ、離してくれ!腕とかぶわんぶわんしてるから。」
「いいじゃないですかそれぐらい。何も考えずに動くのも楽しいですよ。」
笑顔のティタニアに振り回されること数分、ようやく解放された俺は若干疲れた体でタクシーに戻る。
「次はどこに行くんですか?」
「次はご飯食べに行くぞ。もうすぐお昼だし。」
「!!」
ご飯の単語を聞いた途端、ティタニアは目を輝かせてずいっとこちらに顔を近づけてくる。
「どこに行くんですか!!?」
「沖縄そばのお店だよ。昨日の夜にちょこっと出たやつ。」
「そば!!魅惑の沖縄そば!!行きましょう、早く行きましょう!!!」
「わかったからそんなに近づくな。」
手をブンブン振って今日イチ嬉しそうな顔をするティタニア。やはりこの子はご飯がかなり大好きなようだ。
タクシーに乗って10数分、目的の沖縄そばの店に着く。
「着きました〜」
「あぁ、そうだな……ってあいつもう店に入りやがった!」
「さすがに早いねティタニア。食べ物のことになると目の色変わるだけのことはあるわ。」
「僕たちもすぐ行った方がいいんじゃないか?」
「そうだな、早く行こうか。」
ティタニアを追って店の中に入る。
内装は昔ながらの蕎麦屋という感じで、椅子やテーブルには味があった。
「和人くんこっちですよ〜」
先に入っていたティタニアは座敷に陣取っていた。
「この席にしたんだな。」
「はいっ、みんなでわいわい食べるにはここがいいと思いまして。」
ティタニアはえへへっと嬉しそうに話す。話しながらも目線はメニュー表に集中していた。
「どれも美味しそうです……どれにしようかな〜♪」
「幸せそうだね。」
「だな。」
「僕はもう頼む物決めたぞ。柊たちはどうだ?」
「そうだな……沖縄そばと豚キムチ丼のセットにしよ。」
「私は沖縄そば大盛りだよ。」
「そうか、僕は普通の沖縄そばだ。」
「あとはティタニアだけだな。どうだ、決まりそうか?」
「ちょっと待ってくださいね……ムムム……やっぱりここは……決めました!!」
真剣な表情で考えていたティタニアが突如なにかを閃いたような顔になる。決まったみたいだ。
俺は店員さんをよんで各々の注文をする。気になるティタニアの注文はというと、
「沖縄そばと豚キムチ丼のセットをお願いします。どっちも大盛りで。」
やっぱりというか、ものすごく食べるようだ。店員さんもちょっと驚いてたぞ。
「すごく美味しそうです。いただきま〜す!」
やがて料理が運ばれてくるとティタニアは真っ先に食べ始める。
「んぅ〜♪美味しいれす〜」
料理の美味しさによってティタニアの顔はほわほわしていた。
「和人くんの料理もとっても美味しいですけど、ここのも同じくらい美味しいです。」
「なんかわかるかも。」
「いや、さすがにここの方が美味しいだろ。店やってるんだし。」
「自分のことなのにわかってないですね。和人くんの料理の腕はプロにも負けないくらいなんですから、もっと自信を持ってくださいよ!」
「そういうもんか?」
「そういうものです!」
ふんすっ、と自分の事のように言い切るティタニアを見てそんなに好評だったんだと驚いてしまう。
「2人とも柊の料理を食べたことがあるんだな。」
「まぁ部活とかでよく食べてるよ。俺がよく作って持ってくからな。」
俺は、三宅に俺が2人と同居していることを悟られないようにする。
このことはいくら友達でも軽々しく暴露していいものじゃない。
年頃の男女がひとつ屋根の下で暮らしているなんて変な印象を持たれかねないからな。
「今度僕にも何か作って来てくれないか?柊の料理は興味あるからな。」
「あぁ、もちろんいいぞ。なんか勉強の合間につまめるものでも作ってくるな。」
「ありがとう、助かる。」
こうして、俺たちは柔らかく温かい雰囲気で昼食を食べ進めるのであった。




