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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
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51話 1日目の夜

楽しかった自由時間が終わると、近くの郷土料理を提供してくれる飲食店に移動する。


そこで、俺たちはゴーヤチャンプルや沖縄そばなどの郷土料理を味わった。


初めての味に驚きながらも美味しく食べることができた。あとでゴーヤチャンプル作ってみよう。



そして、今日泊まるホテルに移動する。ここから近いので移動は徒歩だ。


そこは割と普通なホテルで、最大階層は8階だ。


「男子は6、7、8階、女子は3、4、5階だ。それぞれの番号の部屋に入って荷物を置いて風呂に入れ。」


「女子は階段で行ってね〜。私も着いていくから。」


五十嵐先生と江川先生の指示に従って部屋に移動する。


その途中、先に送っておいたキャリーバッグを受け取る。


男子はエレベーターを使う。荷物の多さもあってかなりぎゅうぎゅうになりながらもなんとか目的の階である8階にたどり着く。


「えっと確か808だったな。」


メモ帳に記載されていた部屋番号を頼りに自分の部屋にたどり着く。


あらかじめ先生から貰っておいた鍵を使い、部屋に入る。


電気をつけると温かみのある光が部屋を照らす。


ここは2人部屋だ。なのでもう一人と一緒にここで過ごすのだ。


部屋には浴室もあるので風呂はここで済ませるようだ。立地的にも大浴場なんておけないだろうしな。


「風呂、どっちから入る?」


俺はもう一人のルームメイトに声をかける。


「どちらからでもかまわないぞ。」


もう一人のルームメイトである三宅は荷物整理をしながらそう話す。


三宅と同じ部屋なのはなんだか安心してしまう。結構話せる間柄だしな。


「それなら俺から入ってきちゃうな。」


「あぁ、わかった。」


俺はキャリーバッグから着替えと小さめのボディーソープやシャンプー、体を洗うネットなど、必要な用具を持っていく。


浴室は少し狭いがシャワーと浴槽があるタイプで、いつもと変わらずに体を洗えそうだ。


まぁ、とはいえ今からお湯をはると時間かかるし、なんかもったいないからシャワーで済まそう。


体を洗いながら今後の予定を思い起こす。


明日は1日、班ごとの自由行動で、明後日はクラスごとに行動だっけか。


そういえば先生、3日目の泊まるところは大浴場があるとか言ってたな。そこまで我慢ってことでいいか。


(沖縄ってかなり節水を心がけてるって聞いたことあるからシャワーしかないと思ってたんだよな。)


沖縄を調べていたら千歳さんから「沖縄の人って結構節水を心がけてるらしいよ。」って言われたから浴槽あるのか疑問だったんだよな。今考えたら偏見だったかもしれない。


沖縄の人、ごめんなさい。



頭と体を隅々まで洗い終わると、浴室を出て体を拭き、寝巻きに着替える。


「風呂あがったぞ。次入っちゃって。」


「あぁ、わかった。」


三宅はこんな時でも勉強していた。ほんとに勉強熱心で感心してしまう。簡単に真似できることじゃないし。


風呂に行った三宅、俺は一人になった。


ベッドに倒れ込む。


今日あったことを思い出す。葉月とティタニアのはしゃぎようや戦争の悲惨な状況、抱きしめた千華の感触……どれもいい思い出だ。


(千華のこと考えてたら無性に会いたくなってきた。一緒に暮らしてるせいか、こうやって長い時間顔を合わせないのは寂しいな。)


彼女も寂しそうにしていたし、なにかlineでも送るべきだろうか?でもなにを……?


「とりあえず、今何してる?とでも送ってみるか。」


俺は早速文字をうちこんで千華に送る。


すると数秒で既読がつき、返事が送られてくる。


『お風呂からあがったところだけど?』


あっ、そうだったんだ。それならタイミングとしてはいい方なのかな。


『変なこと考えないでよね』


『考えないよ!』


思わず反射的にそう返してしまう。千華と一緒に住んでるんだから風呂ぐらいで変なこと考えないよ。


『それならいいけどね。それで、なんの用?』


『いや、ほんとに何してるのかと思って連絡しただけなんだ』


『つまんないことで連絡してきたのね』


千華からの返信を見てちょっとヘコむ。ここは素直に『寂しいから連絡した』とうっておけばよかったのだろうか。


『そうだ、あんたこういうことしてるなら暇でしょ?今私も暇だからちょっと話し相手になりなさい』


『もちろんいいよ』


千華からの誘いについつい嬉しくなってしまう。lineしてよかった〜


『あんたの班明日どこ行くの?』


『俺の班は今帰仁城跡とパイナップルパーク、あとちょっと公園に行くよ。』


『そうなのね。私の班は自然公園や中城城跡とかに行くわ。』


『自然公園行くんだ?いいな』


『あとで写真見せてあげるわ。どうせ撮ってくるし。』


『ありがとう』


『それよりそっちはお昼なに食べるの?私たちは沖縄そばよ』


『こっちも同じだよ。』


『まぁ、やっぱり沖縄に来たらそこは被っちゃうか。お互い美味しいの食べましょうか』


『あぁ、そうだな。』


『あっ、そろそろ冬がお風呂あがるからここら辺でやめるわね。おやすみなさい』


『あぁ、おやすみ。いい夢を』


こうして千華とのlineは終わる。なんだろう……すっごい楽しかった。


「柊、顔が緩んでるぞ。どうした?」


「んっ?そうか?どのぐらい緩んでた?」


「ひと目でわかるぐらいには緩んでたぞ。」


ちょうど風呂からあがってきた三宅に指摘されて気づく。俺そんなに顔緩んでたんだな。確かに千華とlineできて楽しかったけども。


「いや、ちょっと嬉しいことがあってな。そのせいで緩んでた。」


「そうか、まぁ深くは聞かないでおこう。」


「それより、」と三宅は続ける。


「今の時間暇ならチェスでもしないか?」


三宅はキャリーバッグから小型のチャスセットを取り出す。


「三宅もそういうの持ってきてたんだな。」


「あぁ、柊とやろうと思ってな。勉強の合間の休憩時間に興じる分にはいいなと思って持ってきた。」


いつもより柔らかな表情を見て、三宅もこの修学旅行を楽しみにしてきたことが一発でわかった。


俺も嬉しくなってしまう。三宅でさえも楽しみにしていた修学旅行に参加できたことがよかったと思えたから。


「いいよ、やろう!」


俺はその誘いに元気よく応じる。


「柊はチェスの腕前はどのくらいなんだ?」


「うーん、チェス自体最後にやったのがかなり前だからなんともいえないけど、負けるつもりはないぞ。」


「ふっ、面白い。僕だって負けるつもりはないぞ。」



俺と三宅はこの静かな空間で、かなりの時間チェスに興じるのであった。

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