39話 文化祭2日目~中編1~
「まずはどこに行こっか?」
俺は校内を歩きながら一緒にいる千華に話しかける。
「そうね……あんた行きたい場所あるの?」
「俺はお化け屋敷に行きたいかな。秋穂たちのクラスがやってるやつ。」
「あーあれね」と指さす千華。俺たちは偶然にも秋穂たちのクラスである1年D組の近くに来ていた。
「確かに興味あるし、ここにしましょう。」
千華はそう言うと、俺と手を繋いでここの教室に入る。
中は薄暗く、壁や床には血を表現した赤い塗料が塗られ、お化け屋敷という感じがでていた。
「あっどうも。先輩に千華先輩、遊びに来たんですか?」
受付で待っていたのは秋穂だった。今は世界観に合わせるためにゾンビ風の衣装を着て、顔には血のりが塗られていた。
「あぁ、そんなところだ。2人で頼めるか?」
「もちろんいいですよ。」
代金を払って奥へと進む。
「へぇーなかなか作り込まれてるのね。」
暗い道を少しずつ進む。千華は少しも怖そうな素振りをみせず、余裕そうだ。
「そういえば和人くん、ホラー系って得意なの?」
いきなり、思い出したかのように猫をかぶる千華に俺は一瞬困惑し、そして、
「うーんどうだろ?あんまりホラーを体験したことないからわからないや。今日だって生まれて初めてお化け屋敷に来たわけだし。」
かろうじてそう返す。今この場所は静かな場所+人がいる。なので、いつものように話していると相手に違和感をあたえてしまうため、千華は話し方を変えたようだ。
「へぇーそうなんだね。私も初めてなんだ……彼氏とお化け屋敷に来るの。だから初めてはお互い様だね。」
清純派ヒロインのように頬を赤らめて笑顔で話す千華。仕草もいつもより女の子らしくてドキドキすると同時に違和感も感じた。
(男ってこういうの好きでしょ?素直に喜びなさいよ。)
(いや……ドキドキはするけど違和感の方が勝ってるんだよな。)
(しょうがないでしょ、周りに人いるんだし。)
千華は表面上は楽しそうだが、裏ではため息をついていた。俺といる時はできるだけ素でいたいんだろうな。
俺は千華と手を繋いで暗闇を進む。道中で何回かお化け役の生徒が驚かしにきた。
「きゃあ!」
その時は千華が悲鳴をあげて俺に抱きついてくる。
傍から見れば驚いてる彼女が彼氏に抱きついている光景だが実際は、
(テレパシーでわかるし全く驚かないわね。)
全く驚いてなかった。ただくっつきたかっただけなのだろうか。
「あっごめんね、急に抱きついちゃって。嫌だった?」
「全然大丈夫。怖かったら近づいてもらっていいから。」
「そっか……ありがとう。」
俺がそう言うと、千華は嬉しそうに俺の腕に抱きつく。
「これなら怖くないや。(それならこれだけ近づくわ。別に怖くないけど。)」
「あはは……」
俺は苦笑しながらお化け屋敷を進んでいく。
「あー疲れた。あんたが隣にいるのに演技するのだるいわ。」
お化け屋敷を楽しんだ?俺たちはグラウンドに来ていた。
「まぁ、お疲れ。」
俺は労いの言葉をかける。
「でっ、グラウンドになにしに来たの?」
「いや、正午になる前に早めにお昼食べようと思ってな。」
「ここなら屋台がたくさんあるし、食べるものには困らないわね。それに混む前に食べられるからスムーズだし。」
ということで食べたいものを買っていく。焼きそばや飲み物、牛丼を買った。
「よしっ、それじゃあ席探そうか。」
「あっ、あそことかいいんじゃない?」
千華がそう言って指さす先には席がちょうど2席空いているところがあった。
「他の人と相席になっちゃうけど、それでも大丈夫?」
「えぇ問題ないわ。」
千華に確認をとり、その席まで移動する。席にはカップルらしき2人が向かい合って座っており、仲良く食事をしていた。
「すみません、隣いいですか?」
一応その席に座っている男性に確認をとる。
「いいですよ。」
その男性は顔をあげて快い返事をしてくれた。
そして、その男性と目が合った時数秒固まる。
「あっ……久しぶり、元気だったか?」
その男性は微笑してそう話す。
「はいっ、お久しぶりです晴哉さん。」
ここで会った人はまさかの晴哉さんだった。
「まさかここで会うとは思ってなかった。和人の教室とかで会うと思ってた。」
俺たちは晴哉さんたちと相席し、お昼を共にする。
新堂晴哉、彼は黒髪の優しい顔立ちの人で、千歳さんたちの幼なじみだ。晴哉さんはストッパーの様な役割で、いつも千歳さんの行動を抑制している。
「晴哉さんがここに来てることは聞いてたんですけど、こんなかたちで会うとは俺も思ってなかったです。」
「そういや千歳が迷惑かけてないか?何度かそっちに行ったって聞いてるんだけど。」
「色々騒がしいですけど、迷惑って程じゃないです。葉月も千歳さんが来て楽しそうですし。」
「それなら安心したんだけど……あいつ放っておくと変なことするから心配なんだよな。」
晴哉さんはそう言ってため息をつく。この人も千歳さん関係で苦労してそうだ。
「まぁ、千歳さんはあぁ見えてちゃんと線引きはできてる人ですし、問題ないんじゃないですか?……多分。」
「なんかあいつって自由すぎて怖いとこあるんだよな。」
俺と晴哉さんは千歳さんの話で苦い顔をする。
「2人とも大変そうだね。……それにしても、ここで千華ちゃんに会えるなんて思わなかったよ。」
晴哉さんの彼女らしき女性がそう話す。その人は村田仁美さんで、第一印象はとても優しそうな人だった。
「私もびっくりしました。仁美さんとまた会えることが嬉しいです。」
千華はそう言って微笑む。どうやら2人は知り合いのようだ。
「それで、晴哉さんと仁美さんは付き合ってるんですか?」
「うん、そうだよ。」
千華の質問に仁美さんは照れながら答える。2人からはカップルのような雰囲気が出てたため、驚きは少なかった。
「千華ちゃんと和人くんの方はどうなの?」
「えっと……付き合ってます、恥ずかしいですけど。」
「そうなんだね、2人ともお似合いだと思うよ。会ったばかりだけど2人とも楽しそうだし。」
「確かに楽しいですけど……そんなわかりやすいですか?」
「うん、千華ちゃんとても楽しそうなのがわかるよ。和人くんも幸せそうだし。」
「……そうなんですね。」
仁美さんにそう言われてはっとした顔になる千華。
「ふふっ、見てるだけでこっちも温かい気持ちになっちゃう。」
朗らかに笑う仁美さんはとても美人に思えた。
「痛って!!」
突如として足を蹴られる。千華を見ると軽蔑するような眼差しを向けられていた。
「彼女がいるのに他の女にデレデレしてんじゃないわよ。」
「してないよ……美人だとは思ったけど。」
「えっと……千華ちゃん落ち着いて?」
殺気だっている千華を仁美さんがたしなめる。
それから数分後、怒りの収まった千華とお昼を終え、俺たちは晴哉さんたちと同行することになった。
「よかったんですか、俺たちまで一緒に来ちゃって?」
今は1階の廊下を歩いていた。これから3階に向かうらしい。
「いいんだよ、午前中に仁美と色々楽しんだし。それに、これから千歳たちと合流しないといけないからな。」
「そうなんですね。……もしかして楓さんとeスポーツの大会に出るんですか?」
「よくわかったな。そうなんだよ、急にヒッキーから連絡がきてさ、なんか一緒に大会に出てほしいってきたから仕方なくだ。」
「それなら応援しますね。とはいえ、楓さんいるなら簡単に優勝しそうですけど。」
「今回は2人で協力しないといけないから、確実に優勝とはいかないだろうな。俺ヒッキー程ゲーム上手くないし。」
晴哉さんは苦笑し、頬をかきながらそう話す。
「でも晴哉くんだってゲーム上手いと思うよ。やってるところ何回も見てるけど、すごいなーっていつも思う。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ仁美。」
晴哉さんは仁美さんの頭を撫でる。撫でられている仁美さんの表情はとろけていた。
「……あぁいうのがお似合いっていうのね。レベル高いわ。」
「すごい幸せそうだよな。俺には真似できないかも。」
「いや、あんただって無意識にやってたでしょ、忘れたとは言わせないわよ?しかも付き合っていない時に無遠慮に……あれセクハラだから。」
「あのことまだ根にもってたのかよ。」
「あっ、いたー!」
俺が千華とそんなやり取りをしていると、後ろから聞き覚えのある元気な声がする。
振り返ると、やっぱりと言えるメンツがいた。千歳さんたちだ。
「晴とひとみんこんな所でイチャつかないの。あと和人たちもいたんだね、ダブルデートしてたの?」
「いや、ご飯食べてたらたまたま会った。だからここまで一緒に来たんだよ。てかイチャついてない。」
「いや、イチャついてるでしょどう見ても。」
千歳さんたちと合流して一気に賑やかになる。周りの人たちは皆、見惚れていた。まぁ……この場にいる女性陣ってみんな美人や美少女だしな、注目は集めちゃうか。
「とりあえず目的の教室まで行きましょ?ここだと通行人の邪魔になるし。」
楓さんの提案で、すぐさま目的の教室である視聴覚室まで一直線に進む。
中に入ると部屋は薄暗く、スクリーンからのゲーム画面の明かりがその雰囲気を醸し出していた。
「おぉーすごいね。なんかそれっぽい。」
「いや、ちゃんと大会なんだからぽいではないでしょ。」
今はまだ準備の段階で、司会の先生がリラックスした様子でいた。その他には生徒が数名ゲームの練習をしていた。
「私たちも練習しておきましょうか。」
「だな。」
楓さんと晴哉さんはすぐに、空いてるコントローラーとスクリーンを使って練習を始める。
今回の大会のゲームはサッカーゲームで、2人で1チームを操作して対決するといったものだ。このサッカーゲームはシンプルながらに奥が深く、細かい操作も多々ある、公式の大会も開かれるほどの人気作品だ。
俺たちは観戦席で2人のプレーを見ながら、世間話をする。
「そういえば仁美さんってお兄ちゃんといつ付き合ったんですか?」
「えっと、2年生の修学旅行の時だよ。あの時は色々トラブルがあって大変だったんだ。」
「あー、確か晴が反省文書いたやつだっけ?あの時は大変だったらしいね、晴から聞いたよ。」
「うん、晴哉くんモテるから大変だったんだ。詳しくは言いずらいんだけど。」
「へぇーそうなんですね。確かにお兄ちゃん優しいからモテそうだもんな……」
「晴って女難の相があるのかってぐらい変なことになってたからね。上手く立ち回ればハーレム作れるぐらいにはね。」
「えっ、そうなの!?」
「そうなの、でもこの話は当事者がいないとできないかな~。まっ、その人たちは今日用事があって来れないんだけどね。」
「えぇーすっごく気になるなー。」
千歳さんの言葉に葉月が気になって仕方ない顔をする。俺も正直気になる。
「さっ、そんなこと言っている間に始まりそうだよ。」
千歳さんの言う通りいつの間にか人が集まり始めていた。そろそろか。
今までリラックスしていた先生も準備のために動き出しており、画面やコントローラーの準備をしていた。
晴哉さんたちもそれとほぼ同時に戻っており、始まるまで好きに話しながら待つ。
そして、
「それではこれより、柏崎学園主催、ゲーム大会を始めます!!」
司会の先生の言葉によって大会が始まった……




