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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
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38話 文化祭2日目~前編~

文化祭の2日目、俺たちは朝から家庭科室で軽食の準備をしていた。


今日カフェで出すメニューには、飲み物の他にホットプレートを使ったホットケーキや焼きそば、大学いもなどがある。それをできる限り作っておくのを2日目が始まる前にやっておかないといけなかった。


「大学いも大きなタッパ4つ分できたよ。あとどのぐらい作ればいい?」


「あと2つ分お願い。千華、そっちはどお?」


ボウルやまな板を洗う葉月が千華に問いかける。


「焼きそばに使う野菜全部切っといたわよ。私違うクラスだけど。」


そう答える千華は、どうして自分がここにいるのかわからない様子だった。


「千華、こっち頼む。焼きそばはこっちで作っちゃうから。」


大学いもを作る作業を千華にバトンタッチし、フライパン2つに油をひく。それぞれに麺と野菜、肉を入れてソースで混ぜ合わせる。


「あいつすごいわね。2つのフライパンを交互に扱って焼きそば作ってる。」


「ほんとだね、生き生きしてるよ和人。」


「それにしても美味しそうです。いもか焼きそばを一口食べても……駄目ですよね。」


大学いも作りをしているティタニアは目を輝かせていたが、千華がじっと無言の圧力をきかせているとしょぼんとして縮こまる。


「そういえばなんで私ここにいるわけ?違うクラスなんだけど。」


「そんなこと言われても……私が頼んだらしぶしぶ引き受けてくれたからとしか言えないんだけど。」


そうなのだ、一緒に登校した千華は葉月が「一緒に来たんだし手伝って」と言ったため、この作業を手伝うことになったのだ。


「まぁ、そうなんだけどね。だとしても朝から野菜を切らされるとは思ってなかったわ。」


「お肉よりマシじゃない?お肉の感触ちょっと気持ち悪かったし。」


葉月は洗い物をしながら千華に笑いかける。


「そういえば葉月ちゃん、ホットケーキは注文を受けてからホットプレートで作るんですよね?」


「そうだよ、出来立てを提供できるように教室で作るんだ。」


「うぅ、それだと私接客中にお腹が空いて倒れちゃうかもしれないんですけど。」


「お前な……なんとか頑張れよ。」


焼きそばのこうばしい香りを嗅ぎながら、最後の仕上げにはいっていく。


「今この場にいるだけでも匂いでお腹空いちゃうんですけど。」


「ティタニア、これが終わったらお菓子あげるから頑張って。」


「はい、頑張ります!」


「切り替え早いわね。」


ジト目でティタニアを見る千華。ティタニアのやつ相変わらず食べ物に釣られるな。



「よーし、終わったぞ。あとは注文が入ったらレンジで温めてだしてくれ。」


出来上がった焼きそばを小分けにする。けっこう疲れたな。


「こっちも終わったわ。あー疲れた。」


「お疲れみんな。」


「にしてもこの準備を4人でやるなんて馬鹿じゃないの?もうちょい人を集められなかったわけ?」


「あーそれね。みんなは他の準備をたくさんやってくれたし、この準備は朝早くやらなくてもいいものだしね。ということで私たち4人でやったわけ。千華ほんとにありがとう。」


「まぁ、いいけどね。」


「よーしこれで早めに引き上げられるぞ。おもいっきり遊ぼ!」


「元気ね葉月。」


「そうだな。」


「お腹空きました……」


「ティタニア、グミあるけど食べる?」


「食べます!」


ティタニアは葉月からグミをかっさらうとすぐさま食べ尽くす。


「モグモグ……美味しいです、生き返りました。」


グミをものの数秒で平らげたティタニアは満面の笑みを浮かべていた。



それから、教室に向かい、ホームルームを行ってから文化祭の2日目が始まる。


俺たちのカフェはなかなか人気で、内装の落ち着きとメニューの美味しさが評判のようだ。


「ホットケーキ1つと大学いも1つ入ったよ。あとドリンク、コーラだって。」


「はいよ、」


俺は注文を受けてからホットプレートでホットケーキを作り、他の調理担当の生徒に大学いもとドリンクの準備を任せる。


現在時刻はまだ10時だというのに結構な盛況ぶりだった。これは交代の時間までせわしなく働きそうだ。


「わあっ、すみません!」


「えっちょっ、ティタニアなにしてるの!?」


調理していると、不意にティタニアのすっとんきょうな声が聞こえる。ここからでは見えないが、おそらくなにかやらかしたのだろう。葉月や他の生徒の慌てた声が聞こえる。



「うぅ……和人くんのサポートにまわってって言われました。」


騒動から数分がたち、しょんぼりしたティタニアがこちらに来る。


「あーなんかお疲れ、なにがあった?」


「えっと、つまづいた拍子に2人のお客さんの顔にそれぞれ大学いもとサイダーぶちまけちゃいました。」


「すごいな……それは。」


ティタニアの事だからなにかやらかしそうな雰囲気はあったのだが、まさかほんとにやらかすとは……本人はいたって真面目なだけにショックだろうな。


「まぁ、それならしょうがないよ。わざとじゃないんだし。それよりティタニアはドリンクを頼む。注文を受けたら紙コップに注いで、お盆に乗せるだけでいいから。」


「はっはい、わかりました。」


指示を受けたティタニアは切り替えて作業をする。


「これなら大丈夫そうです。……アンヘルに駄目なお姉ちゃんを見せなくてすみそうです。」


「そっか、そういやアンヘルも遊びに来るんだっけな。」


「ちょうど交代時間の前なので、11時前ぐらいですね。」


「昨日アンヘルかなり心配してたよな。ティタニアがみんなに迷惑かけないかって。」


「はい、なので学校では駄目じゃないお姉ちゃんを見せたかったんですよね。」


「まぁ、でもアンヘルが来る前でよかったな。それに裏方なら俺もちゃんとフォローできるから安心して。」


「和人くん……でも私が裏方にいるってことはヘマしたってことなのでアンヘルにも知られちゃう気がするんですけど。」


「それは……そうだな。」


「……とりあえず頑張ります。」


少し気まずくなってしまった空気の中、作業を続ける。


「コーラ注ぎましたのでここに置いておきますね。」


「はいよ、3番テーブルの注文の品できたぞ、運んでくれ!」


ティタニアはさっきのやらかしを生かしてか、足元と周りを確認してからドリンクの作業をこなしていた。


そのあとは何事もなく平和に時間が進む。


そして、交代時間の間際、知り合いがカフェに入ってくる。


「葉月さん、お疲れ様です。遊びに来ました。」


「いらっしゃいアンヘル。ティタニアは急遽裏方の仕事やってるから接客じゃないけど、ゆっくりしてってね。」


アンヘルと葉月の会話を聞いて、アンヘルが来たことを知る。ティタニアはアワアワしていた。


「アンヘルが来ましたね。私がヘマしたこと気づかれないでしょうか。」


「その事について葉月は言わないと思うし、大丈夫じゃないか?」


「和人、アンヘルがオレンジジュース注文したからお願い。」


俺たちが話していると葉月が来て注文を伝える。


「わかった。どうする、ティタニアがやるか?」


「はいっ、私がやります。妹の飲み物すら用意できないお姉ちゃんは駄目なお姉ちゃんなので。」


ティタニアはかなり意気込んだ様子で話す。意気込みすぎて変なことにならなきゃいいんだが。


ティタニアはオレンジジュースをペットボトルから紙コップに移す。そのあとは氷を入れて出来上がったものをお盆に乗せる。


「あのっ、持ってくのも私がやっていいですか?絶対転ばないので。」


「あぁ、いいぞ。安心させてやりな。」


俺がそう言うと、ティタニアは足元に注意しながらアンヘルのもとに歩く。


「お待たせ~オレンジジュースだよ。」


「姉さん、ありがとうございます。」


ティタニアからオレンジジュースを受け取ったアンヘルは、笑顔でそうかえす。


「姉さん、ちゃんとやれてる?みなさんに迷惑とかかけてない?」


「大丈夫だよ、私はちゃんとやれてるよ。」


そう自信満々にかえすティタニア。


「そうなんだ……よかった……」


アンヘルが安心したようにそう呟く。葉月も尊いものを見るような目で2人を見ていた。


「やっほー来たよ葉月!」


優しい空気をぶち壊すように現れたのは個性の強い先輩だった。


「来てくれたんだねお姉ちゃん、ありがとう。」


楽しそうに話す2人は本当の姉妹のように仲がよかった。


「楓さんも来たんですね。」


「千歳に無理やりね。私は家で寝たかったのに。」


「まぁまぁいいじゃん、ここにはeスポーツ大会があるんだし。ヒッキー、ゲーム好きでしょ?」


「そうだけど、パンフレットを見ると2人での参加なんだけど。私は誰と組めばいいわけ?」


「えっ、私。」


「プレイ中にセクハラされそうだからやだ。」


「ひどー、私そんなに信用ない?」


「いやあんたの事は信用してるけど、それはほんとに真剣な時だけだから。それ以外はふざけるでしょあんた。」


「えー、ひどー」


「まぁ、晴にでも頼むわ。」


楓さんがしょうがないといった様子で話す。俺は楓さんの発言にいち早く反応する。


「あのっ、もしかして今日、ここに晴哉さん来てるんですか?」


「えぇ、来てるわよ。それも彼女同伴でね。」


「えっ、お兄ちゃん彼女できたの!?」


とても驚いた様子で叫ぶ葉月。


余談だが、葉月は晴哉さんの事をお兄ちゃんと呼んでいる。理由としては単純で、「世話焼きな所が兄っぽいから」らしい。


「そうそう、2年前にできたんだよ。それもすっごく可愛い子。まぁ、ヒッキーには敵わないけど。」


「あんたの謎の私推しはなんなの?」


「そりゃもうヒッキーの事大好きだからね。しょうがないよね。」


「あーはいはい、わかったわかった。」


千歳さんの発言のかえしが棒読みの楓さん。こういうことを言われすぎて対応が適当になってるのかな?


「とりあえず、交代の時間までいさせてもらうね。大学いも1つお願い。」


「はい、少し待ってくださいね。」


俺は急いで裏に戻り、大学いもの用意をする。


「お待たせお姉ちゃん。」


「ありがと葉月。……美味しい、これ和人が作ったの?」


「和人と千華とティタニアが作ったんだよ。上手くできてるでしょ?」


「確かにすごく上手だわ。ヒッキーも美味しそうに食べてるし。」


葉月は千歳さんと話しながら接客を続けていた。あと少し頑張ろ。



そして、時刻は11時となり、俺たちは交代の時間になる。


「終わったね~ようやくお姉ちゃんたちとまわれる。」


「お疲れ葉月、これからどこまわろっか?」


葉月は千歳さんたちと一緒にパンフレットを見ながら話している。


「姉さん、私行きたいところがあるんですけどいいですか?」


「もちろんいいよ。一緒にまわろ。」


ティタニアはアンヘルと一緒に校舎内を歩き始めた。みんなそれぞれに行動している。


俺も行かないとな。


そう思って集合場所の図書室に足を運ぶ。図書室には休憩スペースがあり、そこでは何人かの人が休憩していた。


「あっ、いたいた。」


俺は休憩している人の中から目的の人物を見つけると隣まで行って声をかける。


「お待たせ千華、待たせちゃったか?」


「別に、そんな待ってないわよ。」


千華はいつも通りの声色で返答する。よかった……待たせてはなかったか。


「それじゃ行こうか。」


「えぇ、そうね。」


俺は千華に手を差し出して立つように促す。千華は、笑顔で俺の手をとり立ち上がる。


これから千華との自由時間が始まる。正直とっても楽しみだ。

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